第十部 第十章 愚痴だらけ
俺は基本的に勝てるかどうかのやばい戦いはしないようにしている。
だが、今回はセシリアちゃんの命がかかっている。
時間稼ぎして逃げるつもりだったが、どうも相手が悪い。
隠密のスキルで俺が姿を消すたびにフランツ儀式枢機卿の破眼の紋章で俺の姿が露わになる。
そこを巨大なナマケモノのようなキメラが長い剣のような爪を振るって攻撃してきた。
それを幾度と無く繰り返した。
『どうしょう。謝っちゃおうかな』
『土下座したら許してくれるかもしれないけど、キメラを止めるのが遅れて、一撃食らったら嫌だな』
『困ったな。まさか、本当に全員逃げると思わなかった。普通、一人くらい残って、お前を一人にはさせないとか言うだろうに』
『本当にこのままだと、グルナディエ帝国の首都も破壊されるし。アルバートにしたってうらみがあるとはいえ親父のバートランド伯が亡くなっても屁とも思わないんだな。浮気して無理矢理自分を廃嫡したとはいえ親父だろうに。男親って悲しいな』
「あああああああああああああ! 五月蠅いわぁああ! 何なんだお前っ! 」
フランツ儀式枢機卿が叫んだ。
俺が愚痴りながら戦ってたのがイライラするらしい。
「いや、現状の現実を見て、心が素直になって喋ってるだけですが」
俺がキリリと話した。
「愚痴が多すぎるだろうがぁぁぁ! 」
「いやいや、親父がやったとはいえ、別に俺のやりたかったことって小銭を貯めてアーリーリタイヤですよ。それを何でこんな銭にもならんことをしないといけないのか」
「ならば主は我らの同志になればいい」
ハリーがそう笑った。
「いやいや、今回の件は俺のせいってバレてんだから、すでに現状でどれだけ恨みを買ってることやら」
俺が悲しそうに呟いた。
『あの坂本龍馬を討った京都見回り組の今井信郎なんか、生涯報復を受けるかもとビクビクして過ごしたのに、俺なんか世界の破壊とかとんでもないし。何でこんなババ引いたんだか……』
「いや、だから、その愚痴を止めろっ! 」
さらに俺が喋ってたせいで、フランツ儀式枢機卿がイライラしていた。
「主はこう考えたら良い。世界を破壊して滅ぼしつくしたらいいのだ。そうすれば、誰も主に復讐するものなどいなくなるだろう」
ハリーがにっこり笑った。
『そうか、こいつはこういう笑いをする時は相手を騙すときだったんだな。今頃、気が付いたわ』
俺が舌打ちした。
「どのみち、もはや事は起こってしまったのだ! 愚痴など言わずに祖師の命に従うべきだ! 」
フランツ儀式枢機卿が俺に怒りつけた。
その時に俺の胸の光り輝く紋章がさらに強く強く輝いた。
「待ちなっ! 」
その時、山から崩れてきた巨大な岩の上から声がかけられた。
俺達がそこを見たら、頭のあたりの針をモヒカンカットにしたハリネズミが立っていた。
サイズはハリーと同じなんだが、何故モヒカン?
「変な奴キター! 」
俺は知らずに叫んでしまった。




