第十部 第六章 最悪の物語
「魔法少女ハッピネスって、あんな強かったのか? 」
俺がイエスに聞いた。
「それが叩かれた原因の一つだ。内気で優しい少女が魔法少女ハッピネスになって皆を幸せにって話だったのに、突然、魔法少女を警戒しだした世界に家族と仲間を殺されて、腐った世界を浄化するとかで家族の報復で人類を滅ぼし始めたんだ。さらに魔法少女ハッピネスとともに人類を滅ぼす側のエンシャントドラゴン達が強すぎるので、魔法少女ハッピネスに狙いをつけて特殊部隊が派遣されるんだが全部一人で撃退するんだ。いきなり伏線も脈略も無く身体に封印されて埋め込まれた強化魔法とやらでどんどん強くなるとか言う設定が無理矢理披露されてだな……」
「強化魔法? 」
「ああ、そのせいで魔法少女ハッピネスはドンドン人間の心や優しさを無くしていく恐怖と家族や仲間を殺した連中に対する憎悪の中で壊れて発狂して行くんだが、そんなの日曜日朝の子供達の番組でするような話じゃ無いだろ」
「え? そんな話なの? 」
「家族や仲間も唐突に魔法少女を恐れる人達に殺されて、あっさり死んでいくしな。人はこんなに簡単に死んでいくんだって言われたって、前半のほんわか日常系はどこ行ったよみたいな」
「え? 本当は、ほんわか日常系なの? 」
「そうだよ。監督が人生とは突然変わるものだとか言うんだけど、変わりすぎだろ。しかも、何故、ほんわかしてた魔法少女がどうして危険だから排除されるのかって理由も意味不明な匂わせだけでな。あれはああいう意味なんだとか、こういう意味なんだとか、深読みする奴にはカルト的な人気が出たが、そんなの日曜日朝の子供枠でやられてもな……」
「そんな話だったのか? 」
「え? マジで? 」
俺もドン引きだったが、セシリアちゃんの師匠のヘンリー契約枢機卿もドン引きしてた。
「最後は発狂した魔法少女ハッピネスが、全てを殺し尽くした後、相手が持ってた刀で自分の首を自ら首チョンパだ。日曜日朝の子供枠で、ほんわかしてた内気で優しかった魔法少女ハッピネスが目を血走らせて絶叫して首チョンパで頭が落ちて、血が吹き出して終わりだぞ。子供のトラウマとか最悪でな」
「酷えな」
「貴様ら祖師を馬鹿にするなっ! 」
ハリーが叫ぶ。
「そこに深遠な哲学があるのだ、知能が低いものは、それが分からんのだよ」
フランツ儀式枢機卿が小馬鹿にしたように俺とイエスを笑った。
「な、ああいう深読みする奴が嵌るんだわ。深い意味なんか無いと思うんだがな。単に厨二の言葉を散りばめただけだと思うし」
イエスが苦笑した。
「いるよな。枢機卿だのテンプル騎士団だの思わせぶりな話を並べられたら、勝手に深読みする奴」
「それだよ、テンプル騎士団も出てくるからな」
「マジか? 」
俺とイエスが笑いあった。
「貴様ら絶対に許さん」
ハリーが目を血走らせて俺達を見た。
「貴様らは忌むべきものだ」
フランツ儀式枢機卿も忌々しげに俺達を見た。




