第十部 第四章 さらに裏切り
「待ってくれっ! 一体、誰がそんな話を吹き込んだ? 」
セシリアちゃんの師匠が叫んだ。
「私だよ。ヘンリー契約枢機卿」
騎士団の隊長の背後から黒い聖衣服を着た男が前に出てきた。
高貴な雰囲気の老人だが、目に頑迷さがある。
小柄だが、他人を威圧する気配を持っていた。
「お前は、フランツ儀式枢機卿」
「久しぶりだ。まさに世界の終わりの始まりだな。五人の特任枢機卿のうち三人が集まるとはな」
フランツ儀式枢機卿が笑った。
「一体、貴様、どうやって……。貴様はケルト王国と敵対するグルナディア帝国の人間ではないか」
「ふふふふ、国だの貴族だの言っても、根本は神聖帝国なのだ。話をするのは簡単だよ」
「ば、馬鹿な」
「ほら、そこだ。我が破眼の紋章により、エドウィンの隠密を破ってやったぞ」
フランツ儀式枢機卿の紋章が光ると、俺の隠密が破られて、姿が露わになった。
「げ? 」
俺が焦った。
「よし、今だっ! 」
騎士団の隊長が手をあげるとともに一斉に矢が射られる。
それをセシリアちゃんが持ち上げた岩で全部潰した。
「き、貴様は祖師の絶対崇拝者じゃなかったのか? この世界を滅ぼすために生きていたのではないのか? 」
セシリアちゃんの師匠……ヘンリー契約枢機卿が驚愕していた。
「その通りだ。だから、これで良いのだよ」
フランツ儀式枢機卿が会心の笑みを浮かべた。
「え? 」
「は? 」
「い? 」
俺だけでなく、ジェシー達から果ては相手の騎士団の騎士達まで唖然とした顔をした。
その時だ。
狂暴すぎる。
あまりに強大な力の顕現を目の前で感じた。
「これがあるから、ハリーの奴、追っかけてこなかったのかっ! 」
俺が絶叫した。
そう、その巨大な力こそ、地の龍のエンシャントドラゴンのテレポートだった。
「そ、そうかっ。地下風水木の龍のエンシャントドラゴンは福音枢機卿の守護義務があるからかっ! 」
セシリアちゃんの師匠……ヘンリー契約枢機卿が絶叫した。
俺の福音枢機卿の紋章が激しく光った。
テレポートして来た地の龍のエンシャントドラゴンが光の輪を目の前に放射した。
ノーサンバーランド伯の配下の騎士団の大半は一瞬にして重力に潰されるように圧殺された。
それと、うなりをあげて地震が起こる。
「ふははははははは、良くやった。流石はフランツ儀式枢機卿だ」
地の龍のエンシャントドラゴンの肩にいるハリーが哄笑した。
「はは、ありがたき幸せ」
フランツ儀式枢機卿が丁寧にハリーに跪いて礼をした。




