第九部 第十九章 聖なる物語
「貴方達はあの聖なる物語を知っていたのですね。素晴らしい。貴方は主たりえる人だ。祖師はその世界をここに実現させようとした偉大なる御方なのです」
ハリーが狂ったような目で笑った。
「ああ、そういえば、あの魔法少女ハッピネスのまわりにいるマスコットみたいなのがハリネズミだったな」
「いやいや、早く気づけよ! 」
「いや、あんなもん実現させようとする馬鹿がいると思わなかったし」
俺の叫びにイエスが反論した。
「しかし、何でそんな馬鹿なことを……」
「馬鹿なことはありません。私は常に祖師に従ってきたものです。祖師は転生者で前世では物語を作っていたと……。そして、その命を懸けた物語を他者に否定されたと。あんな終わり方はおかしい、あの設定で魔法少女ハッピネスが世界を滅ぼせる訳が無い、話が変だと……。それが悔しくて酒を飲み過ぎた時に酔いすぎて事故にあって亡くなってしまった。そして、この世界に転生して凄まじい創造の神のごとき力を授かったそうなのです。その力を持って魔法少女に世界が滅ぼせるかどうかを作品を否定した奴らに見せてやると……」
ハリーが祖師を思い出したか、涙を流しながらそう呟いた。
「待って、待って、祖師の前世の名前って聞いてる? 」
「勿論ですとも」
イエスが酔ったように話を続けるハリーに聞いた。
「武田充人? 」
イエスが恐る恐る聞いた。
「な、何で祖師の前世の御尊名をご存じなのですか? 」
ハリーが驚愕していた。
「ま、まさか……」
俺が愕然としてイエスに聞いた。
「魔法少女ハッピネスの監督だ」
イエスの顔が歪み切った。
「あああああああああぁぁああああ? 」
俺が叫んだ。
「そういや、最終回が世界が滅ぶラストだったんで主人公のキャラと違うし安易すぎるってネットで叩かれたんだったな」
「嘘ぉぉぉぉ! でも、時代がおかしくないか? 俺達とそんなに転生前の時期は変わんないはずだろう? 」
「いや、俺とお前も10年近い差があるし、こないだ聞いたらエドワードが生活した時代は俺達の50年以上前だった。どうも、てんでバラバラに転生してるみたい」
「マジかぁぁぁぁ! 」
『オタクにそんな信じがたい力を授けるなよぉぉぉ! 碌な事しないんだからぁぁぁ! 』
「言えてるよな。普通、考えないわな」
俺が叫んでたらしくてイエスが途方にくれた声で呟いた。
「そ、そうか! 貴様らは祖師が言っていた祖師の物語を否定した者どもだな! あのれぇぇぇぇ! 祖師に対する嫌味の為に、貴様はこの者を主になるように紋章を移したというのかっ! 」
ハリーが憎悪に満ちた目で俺とセシリアちゃんの師匠を睨みつけた。
「いやいや、わしは知らん。性別が変わればいいかと思っただけだ」
セシリアちゃんの師匠が必死に抗弁した。
「黙れっ! こんな祖師を馬鹿にしてるものが主になるなどありえんわっ! 」
ハリーが叫んだ。
「いやいや、有名だから」
「カルト的に人気もあったしな。武田監督は」
俺とイエスが淡々と答える。
「えーい! 言い訳などいらんっ! 祖師の物語が現実になるのをそこで見ているがいいっ! 」
ハリーが忌々し気に叫んだ。
うわぁ、こんな奴だったんだ。
話になんない。




