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第二部 第三章 現れた転生者

 酒場の扉がばっと開く。


 髭を蓄えた美形の中年の男が立っている。


 恐らく、この世界の人間はこの男を見て、何だ? このむさい男は? と思うだろう。


 だが、転生している俺にとっては違う。


 あまりにも有名な人にそっくりなのだ。


「ま、まさか……」


「ふふふふ、私の姿が分かるとは噂通りだな。転生者よ」


 その男がそう笑う。


「転生者だと? 」


 エイドリアン様が訝し気な顔をした。


「また、変な人が来た」


 セシリアちゃんがドン引きしている。


「最近、流行ってんのか? 」


 エイドリアン様が俺に聞いた。


「え? 私が転生者だとエイドリアン様はご存じだったのですか? 」


 俺が凄く驚いた。


「いやいや、お前、いつも自分で言ってるぞ? 」


 エイドリアン様が苦笑した。


「言ってる言ってる」


「口癖だよ」


 アルバートとダリアまでそう話す。


『何という事だ! こんな極秘の話が拡がってしまっているとわぁぁぁ! 』


「いやいや、そうやって喋るからでしょ」


 セシリアちゃんが突っ込んだ。


「我が名は羊使いのイエス」


 彼はそう厳かに話した。


 そう、彼の姿はイエスキリストそっくりだったのだ。


「いやいや、しかも、それで羊飼いを名乗るとはやり過ぎだろ! 」


 俺が突っ込んだ。


「いや、羊使いだから」


 彼……イエスはそう言った。


「羊使い? 訳の分からんことを……と言うか、何しにここに来たのだ! 」


 俺がびしりと聞いた。


「ふふふ、俺と同じような転生者がここに居ると聞いて、訪ねて来たのだ」


 イエスはにやりと笑った。


「俺達みたいな転生者がそんなにいるのか? 」


「ふふふふ、七人の転生者がこの国に現れる事によって、世界はこれから向かう滅びから救われ新たな秩序を持つ世界が作られる……」


 イエスが厳かに話す。


「なっ! そんな話があるのか? 」

 

 俺が驚いた。


 流石にこの話を聞いて仲間も衝撃を受けていたし、あのエイドリアン様も目が鋭いものになっていた。


「いや、そんな話とか無いの? 」


 イエスがそう聞いて来た。


「ちょっ! 」


 セシリアちゃんとかずっこけている。


「無いよ! ある訳が無いだろうが! 」


 俺が叫んだ。


「そうかぁ。やっぱりなぁ」


 イエスが凄くがっかりしていた。


「何をしに来たんだ? 」


「いや、俺みたいな転生者がいるって聞いたから、何か意味でもあるのかと思って訪ねて来たんだ。何も無いのかぁ……。確かに、この世界って魔王もいなしなぁ。何の為に転生したのか知りたかったんだが……」


 イエスが悲しい顔をした。


「そ、そんな理由かよ」


「いや、何で転生したのか不安に思うだろ。俺なんか羊飼いに産まれたのだからな。普通は領主様とか下位の貴族とか、そういうのに転生しないか? 」


「いや、それは俺も思うがな。俺もしがない平民だし」


「いやいや、お前はまだいずれS級チームに間違いないA級チームの冒険者になってるじゃ無いか。いずれ、首になってスローライフするなり、別のグループ作って無双するなりちゃんと転生者のなろう伝説をやってるだろうに」


「いやいや、今のチームにしがみついてるぞ。絶対辞めないし。辞める気など無い」


 俺がその言葉に断言した。


「いやいや、転生者のなろう伝説はそう言う作法では無いか? 」


「前世で俺は希望退職をさせられただけでなく、結果としてその後に派遣を転々として心不全で死んだからな。良い会社や職場は辞めたら駄目だと骨身にしみているんだ」


 俺が悲し気に首を振った。


「なるほどな」


 イエスの目に同情とともに同病相憐れむような表情が現れた。


『こいつも、ひょっとして……』


 俺がそう思って黙った。



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