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女神のブレスを  作者: マイペ
8/10

大きな変化

 あれから5日。

テンガは自宅でゴロゴロしていた。


孤児だったテンガにとって豆と干し肉ははじめての保存食だった。


今迄はその日に食べる分をその日に稼がなくてはならなかったのだ。


「これが資産とか貯金って言う物か、働かなくても食べられるなんて便利だなー。」


そして晩御飯を食べようとしてテンガは驚愕する。


豆だけスープが不味いのだ。

お昼に干し肉を食べ終えたテンガは夜は豆だけスープを食べれば良いと考えていた。

実際に少し前のテンガにとっては豆だけスープはご馳走だった。

しかし、豆だけスープが何故か不味いのだ。


「これが贅沢病か!なんて怖い病気なんだ。」


 次の日テンガは一人ジャングルに立っていた。

もう一度美味しいご飯を食べる為に。

贅沢をする為に。


テンガは意識を集中する。


獣の足跡や糞。

風の匂いに混ざる獣や血の匂い。

遠くで獣とハンターが争う音。


テンガは五感を研ぎ澄まし辺りを探った。


しかし、いつもの様にジャングル全体の様子がわからなかった。


ここにある自然はいつもと同じはずなのに、濁ったガラスの様になんとなくとしかジャングルが捕らえられなかった。


これが贅沢病なのか、怠け癖の果てなのか、テンガにはわからなかった。


大自然は生まれてからずっと泥水を啜る様な生活をしてきたテンガにたった5日サボっただけで牙を向いた。


テンガは両手にナイフと聖光の腕輪を装備した。

「俺はもう一度肉が食べたい。貯金がしたい。」


それだけで十分だった。

テンガはジャングルを駆け回り、薬草、キノコ、果物、山菜を採取していった。


「袋のスキルのおかげでいつもより多く運べそうだな。」


ドドドドドドッ!


その時だった。

テンガの腕輪が光り輝いてテンガを包むと同時に、テンガは空に舞い上がっていた。


たった太もも程度の高さの獣の体当たりだった。


テンガは意識を失いそうになりながらもなんとか体勢を立て直して着地する。


「聖光の腕輪に感謝だな。」


聖光の腕輪の防御力上昇がなければ実際死んでいたのは間違いない。


テンガはナイフを構えて落ち着いて獣の周りをゆっくりと回る。


現場は緩やかな傾斜のある乾いた土の比較的走りやすい地面。


少しでも攻撃を有利にする為に傾斜の上をとるか否か。


テンガの感が告げていた。

今日の俺は調子に乗っている。


テンガは傾斜の下をとると一目散に逃げ出した。


四つ足の獣は傾斜を降る方が苦手なのだ。


獣が恐ろしい雄叫びをあげてテンガを追いかけ回す。

「ぐおおおおーー!」


テンガは何度も何度も転びながら獣の体当たりを時にかわし、時に受け流して走る。

体当たりを受け流す度に四肢が吹っ飛んだ様な痛みが走る。

心臓がまるで爆破するんじゃないかと思うくらい激しく震える。

呼吸が苦しい。

苦しくて苦しくて仕方なかった。


以前の何のスキルもないテンガならもう諦めて居たかもしれない。


しかし、今のテンガは昔のテンガではなかった。


生きたい。


テンガはスキルを得たり、干し肉を食べた事により欲望を知ってしまった。


過ぎた欲望は身を滅すかもしれないが、適度な欲望は力となる。


「俺は毎日干し肉が食える様な生活を送るんだー!」


テンガにはもう体当たりをかわす様な力は残されていなかった。

後ろを振り向きもせずただひたすらに傾斜を降った。


テンガが力尽きて倒れた時、既に獣の姿はなかった。


「どうやら逃げ切った様だな。」


テンガはそう呟くと、今日の採取はここまでにして何とか立ち上がり集会所へ向かい歩き出した。


 集会所にたどり着いたテンガを迎えたのはいつもの筋肉バカどものだった。

「おいテンガが来たぞ!」

「マジかあの野郎久しぶりだな。」

「久しぶりに可愛がってやらないとな。」


テンガはいつも通り筋肉バカをスルーして通り抜けようとしたが、集会所の入り口周辺に見知った顔を見つけて立ち止まった。


「冷酷の女剣士ローリンさんですよね?

あの時はありがとうございました。」

テンガは大沼虫討伐の時に助けてくれたお礼を言った。


「れいか。」

実は冷酷の女剣士ローリン改め人見知りの覇者ローリンは次にテンガに話しかけられた時に討伐依頼に一緒に行こうと誘おうと企んでいた。

心の中で何回も会話のシミュレーションした筈だったのだが、テンガから冷酷の女剣士と言われた事に驚き噛んでしまったのだ。


ローリンは恥ずかしくなってそっと集会所から歩き去った。


集会所にいた人々は語る。

冷酷の女剣士は雑魚ハンターを助けはしてもお礼は聞かず「礼か?」とだけ告げて去って行ったと。

それは

「雑魚には私に礼すら言う権利はない!

強くなれ。」という意味だと。


 冷酷の女剣士の振る舞いに騒つく集会所。

そんな中ある人物がテンガに近づいてきていた。


「5日ぶりとは良い身分だな。」

(スキル読心術が発動しました。

前回の大沼虫討伐の時にどこか大怪我してたのかと心配してたんだからね、ちゃんと毎日顔見せてよねバカ!)


「えっ!」

モテモテのスキル発動。

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