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そうだ、警備員やろう 改めBG。

作者: さきら天悟

『そうだ、警備員やろう。・・・』


耳から入ってくる。

視線はテレビに向いているが、視覚から入ってこない。

ぼっとして何も。

もう何日かこの状態だ。


夢をあきらめて数日。

まあ、諦めされられたと言った方がいい。

大学を卒業して、1年、頑張った。

よく頑張った。

血のにじむような努力もした。

痛み止めの麻酔もして試合にのぞんだこともあった。

そして、ついにメジャーな大会で4位になった。

これからという時、突然、終了・・・

うちのチームのエースが引き抜かれたのだ。


彼はポイントゲッター。

その大会で最多得点をあげていた。

そして彼は夢をかなえた。

プロになる夢を。

彼はe―スポーツの有力チームにスカウトされたのだ。


僕は彼を止められなかった。

それは彼の夢でもあった。

内心、複雑な思いで彼を祝福した。

そして、終わった。

僕のチームは解散することとなった。

3人のチーム。

もう一人は家業を継ぐことが決まっていた。

プロのなれなかったら、家業を継ぐことで親から支援を受けていた。

その彼はやりきった感で満足していた。

だから、もうチームの存続は無理だった。

チームがなくなった時、子供ころからの夢を諦めるしかなかった。


小学校の頃からゲーマーだった。

他の子より断然上手かった。

強いというより上手い。

化け物のように強いヤツがまれにいる。

驚異的な反射神経と野生の感を持つ。

うちのエースのように。

でも、僕は上手いという部類。

子供ながら戦術・戦略にたけていた。

勝ち方というものを研究していた。

だからプログラミングもかじってみた。

仕組みが分かれば、違う攻略方法が見つかるかもしれないと思って。

高校生の時、ゲームにプロがあることを知った。

それも稼げることを。

ゆくゆくはe―スポーツのプロになることを目標とした。

大学進学はそのためだった。

e―スポーツ部がある大学。

この4年間でプロになる足がかり作るつもりで。

そこで彼らと出会った。

彼らも同じ思いだった。

大学2年の秋、エース、サブアタッカー、後方支援の役割分担を確立し、

僕らの快進撃は始まった。

僕の役目は戦術・戦略の研究、後方からのサポート、そしてエースのガード。

最後の大会の準々決勝でエースの盾となった死んだ。

その後、エースは獅子奮迅の活躍で勝ち進んだのはその大会のベストシーンに入ったほどだった。


でも、僕にはプロチームから声がかからなかった。

数値に現れにくい貢献・・・

だから、僕は諦めた。

プロになることを。

エースの彼がいなくなったら、僕の力はいかせない。

もうこの年で彼のような逸材と出会う機会はないだろう。


・・・



『そうだ、警備員やろう。・・・』

また同じCM。

何か仕事をしなくちゃ。

大学はe―スポーツざんまい。

資格はない。

英語?

外国のゲーマーと片言で話せる程度。

人との交わりも得意ではない。

まあ、だからゲーマーになったということもある。


警備員、交通整理・・・

無理無理無理。

完全インドア派。

日差しが強い所で1時間も立っていられる自信がない。


ボディーガード・・・

僕は格好よくVIPをガードするイメージに浸る。

実際には無理だが、ゲームの中では・・・

最強のボディーガードだろう。

それには自信がある。


盾となって死んだシーンを思い出すと今も身震いする。

あの瞬間が、僕の最高・・・


・・・


そうだボディーガードをやろう。

僕は閃いた。

ゲームの中で。

チームで行う対戦ゲーム、プロのボディーガードに需要は・・・

ある。

お金を持っていそうな芸能人でもゲーム愛好会は多い。

元嵐の二宮和也さん、最近結婚した有吉弘行さん・・・

ゲーム好きの若い社長もいるだろう。

相手の望む時間、そして相手を守り、ゲームを勝たせる。

数万円でも。

ガチャで課金するよりいいだろう。

僕はプロのボディーガードになろうと決心した。




20年が経った。


まだボディーガードしてるかッて?


いや今はしていない。



そんな需要はなかったのって?


いや、引っ張りだこだった。

睡眠時間3時間ってことも続いた。

でも、3年で引退した。



体力的にきつかったのかって?


そんなことはない。



なあ、なぜ辞めたのって?


やらなくても良くなった。

十分お金は稼いだ。



そんなにって?


ああ、そんなに。

だから、大きな声では言えないが億万長者ってヤツ。

株式を上場したからね。


???


ただボディーガードになったわけじゃない。

『そうだボディーガードやろう』というサイトを立ち上げたんだ。

ゲームする人とゲーム内のプロのボディーガードを引き合わせるサイト。

サイトを通してお金のやり取りするで、完全明朗会計。

ボディーガードの評価も公表され、ランキングされるから分かりやすい。

それにボディーガードだけじゃなく、ゲームの始め方を指南する人もいる。

対戦型オンラインゲームにはなくてはならないサイトさ。



ふ~ん、じゃあ今は何やってるのって?


もちろんプロ。

e―スポーツの。

かつての仲間とチームを組んでる。

で、40歳以上のシニアの大会に出ている。

まあ、自分の会社が協賛してる大会が多いけどね。

『そうだ、警備員やろう。』

名古屋のセキュリティスタッフのCMです。

東海地方しか流れてないかな~

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