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96話 Myos6tis

 

 日本の高野山、燃えるような紅葉を眺めながら数人の集団が物騒な武器を担ぎながら話をしている。


「明日作戦を決行するが、みんな大丈夫か?」


 真っ赤な目と、赤い髪、大きな大剣を背負った大柄の青年が周りの人物に話しかける。この青年は三号。改造人間達のリーダーである。


「ああ、関東の奴らは別件でこちらには手が回らない。早めに決行した方が吉だ」


 目つきの悪い金髪の少年はナイフを弄りながら答える。その少年の右腕は焼け爛れたような模様が浮かび上がっている。少年の名は雷神こと四号である。三号までは試作なのでコードネームがついていない。


「雷神くんと三号くんは京都の4軍基地の襲撃をするんだよね!頑張ってね!おれ達は大阪の第3部隊を必ず落としてくる、安心してよ!」


 灰色の髪の小さな少年が青髪の青年に話しかける。


「ああ、僕達がいれば大丈夫だ!任せてくれたまえ!」


 青髪の青年は自信満々に答える。灰色の髪の少年は二号、青髪が一号である。そして残った2人の少女が六号と七号である。黒髪の少女の名前はモクレン、最後に完成した改造人間である。


「ミュオ!あたし達は第7部隊ね!」

「そうだね、モクレン!」


 三号は思い思いに話している、改造人間達を眺め、そして大剣を鞘から抜き、空に掲げる。


「それでは総員散開せよ!我らの自由のために勝利を掴み取るぞ!」


 他の改造人間達も自らの武器を掲げて叫ぶ。


「人間に復讐を!」


 改造人間達は2人組になって、能力者達の基地へと向かい始める。ミュオはモクレンの手を引いて、目的の場所、第7軍能力者部隊のいる、南部へと向かい始めた。


「居ないねー。わざわざこんなド田舎の基地まで来たのに…」


 モクレンは港でパンを食べながらぼやく。ミュオは角を弄りながら眼前に広がる太平洋を眺める。本来であれば、第7軍所属能力者部隊はこの港で停泊する軍艦に乗っているはずであった。

 しかし、その戦艦紀伊は影も形も見当たらなかった。


「多分大阪に行ったんだろうね。私達も見つけられないなら、早く大阪の部隊と合流しなきゃ」


 モクレンは立ち上がって、その場を離れようとするが、ミュオは海を眺めたまま固まっている。モクレンが首を傾げながら、ミュオが見ている方向を目を細めて見る。


「ん…?武蔵…あれって東京の第2軍の戦艦じゃないの!」

「そうだよ…まさかこんなタイミングで…」


 ミュオは立ち上がって、モクレンの手を引く。


「早く大阪へ行かないと…一号達が危ない!」


 ミュオとモクレンは空を飛んで大阪の基地へと向かい始めた。



「三号と雷神は死んだらしいぞ。しかし、4軍の奴らもこちらに援軍を送れるほど余裕はないだろう。僕達も、生きては帰れないかもしれないな」


 一号と二号は第2部隊との戦闘の後に、第7部隊の介入を受けて撤退したらしい。4人で集まって、最後の戦いの作戦を練る。

 もう既に色んな部署の能力者達が集まりつつある今、改造人間達は追い詰められていると言ってもいい。


「関西本部の機密情報を全世界にばら撒く…これが最終手段だよ。おれ達だけで能力者を全員殺すなんて無理だし…」

「そうね、能力者組織の情報を流したら、戦争が起きるだろうし。…あの組織は闇が深いものね」


 ミュオはため息をついて、遠くに見える建物を見る。そこには鉄筋コンクリートの大きな建物が聳え立つ。

 建物はまるで刑務所のような雰囲気を醸し出し、入れば帰って来れない…そう感じさせる何かがあった。


「ミュオ、私達は第3の能力者を排除しようか。私達が囮をして、その隙に一号達に地下に行って貰おう!」


 ミュオは頷いて剣を握りしめる。西洋の騎士が持つような長剣。現代においてこんな代物を使っているのは一部の能力者達だけだ。


「絶対に…生きて帰る…」


 ミュオは横で小さな声でモクレンが呟くのを聞いた。一号達には聞こえてはいないだろうが、自分にははっきりと聞こえた。

 ミュオは心に凝りを残したまま戦地へ赴く事になった。



「かはっ!」


 第3部隊の能力者達は殆ど全員モクレンとミュオが始末した。おそらく一号と二号も目的の場所にまもなく到着する。

 ミュオの目の前には2人の能力者だけが残っていた。しかし、その2人は既に手負いで血を吐いている。


「もう終わりね…」


 モクレンがそう呟いたが、いきなり第3部隊の後方から長い茶髪の少女が現れる。その少女は美しい剣を構えたままこちらを見ている。しかし、傷ついた能力者達にあまり興味がないように見える。


「隊長、第3の子達が接敵中です。どうしますか?」


 後ろから第7部隊の隊長が現れる。第7部隊の隊長である大鳳は周りに小さな航空機を飛ばしながら冷たい目で、ミュオ達を見ていた。


「レーヴァテイン。今、ブローニングがメンイルームの敵と1人で戦っているんだぞ。そいつらも暫くは持つだろう。取捨選択は大事だ」


 ミュオは大鳳の顔に焦りの色が見えているのがわかる。一号と二号は相当強い。その2人に単体で挑むなど自殺行為だ。


「第7部隊の隊長!助けてくれ!」


 第3部隊の能力者は大鳳に助けを求める。しかし、大鳳はそっぽを向いて、一言残してその場から立ち去った。


「知らん。俺は弱い。他の奴らまで手は回らん」


 レーヴァテインは大鳳の後についていき、直ぐに姿が見えなくなった。ミュオはいきなりこめかみが痛くなって、手で押さえる。心が傷んでいる。

 この心の痛みは別に目の前の震えている能力者に向けられた物では無い。


「あの人…私達と同じ匂いがする…」


 モクレンは大鳳が歩いていった方向を何となく見つめながら、呟いた。ミュオはその言葉で何故心が傷んだのかが分かった。

 ミュオ、そして他の改造人間が人間に反乱を起こした、直接の理由。


「彩香博士に似てた。大切な人を守れなかった目」


 改造人間達が研究所で酷い実験に参加させられた時、必死に怪我の手当をしたり、心のメンタルをしてくれた彩香博士。その人は能力者の妹を実験によって亡くしていた。

 改造人間達は彩香博士にだけ、心を許していた。その博士は改造人間達の解放に尽力してくれていた。そのせいで上層部に目をつけられて、事故に見せかけて殺された。

 ただ、博士は一つだけ残した物があった。研究所の全ての電源を一時的に落とすソースコード。それをミュオに渡した。改造人間達はそれを使って研究所を脱出したのだ。


「あの人は冷たい人だったけど…私達には優しくしてくれたな…」


 ミュオは剣を握り締めて、目の前の2人に向ける。


「残念だけと、私達には心が無いよ。あんた達皆殺して…私達は生きる」


 剣を振り下ろそうとしたその瞬間に壁を突破って、何人かの能力者が飛び込んできた。


「2人とも!無事か!」


 東京からの援軍、第2軍能力者部隊、通称宝石部隊。その部隊は東京では下位の部隊として扱われているが、特殊な能力を持つ、まるで物語の主人公かのような青年がいる。

 その青年のコードネームはダイヤモンド、目の前で今にも倒れ込みそうな2人を支えている。

 もう1人やる気がないような顔をしているのが部隊No.2のルビー。それだけでも相当なプレッシャーになっている。


 しかし、モクレンと自分はもう1人能力者がいる事に気付いた。


「夢子じゃない…そっちについたのね」


 ミュオは目の前の少女を見てため息をつく。その少女は改造人間の五号として仲間でいるはずだった少女だ。


「やばいかも…」


 モクレンは呟く。

 戦闘は直ぐに始まって、モクレンはその圧倒的な戦闘力によって最初はダイヤモンド達を圧倒していたが、途中で新たな能力に目覚めたダイヤモンドに、押し返され、負ける寸前まで追い込まれた。

 もう最後の攻撃を繰り出そうと、ダイヤモンド達は力を貯めていた。


「ミュオ…貴女だけでも…」


 ミュオはモクレンの言葉に目を剥いて、怒ろうとした。ミュオは1人で生き延びる気など全くなかった。しかし、モクレンはミュオを空に向けて空いた穴に向かって、無理やり吹き飛ばした。

 ミュオは飛ばされながら、モクレンが夢子の攻撃で死ぬのが見えた。


「モク…レン!」


 叫びは届かなかっただろう。



 ミュオは空中で気絶して、遙か遠くの山の中で気絶していた。数日間そこで目を覚まさずに眠っていた。


「ん、こいつは…改造人間か?ボロボロだけど…生きてんのか?」


 死にかけのミュオを見つけたのは大鳳であった。


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