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84話 mission complete?

 

「エージェント・サンクチュアリ!私が断罪する!」


 ルトラはサンクチュアリに向かって叫ぶ。サンクチュアリは、笑いながら頭を搔く。


「そうか、神父の私が裁かれるか!」


 ルトラはサンクチュアリに手を向ける。そして息を吸い込んで、能力を発動する。


「お前は黒だ!」


 叫んだ瞬間にサンクチュアリの周りに鎖のような物がうっすらと見える。サンクチュアリは感心したように、拍手をする。


「これは相当な能力低下だ!ん、しかも味方に強化までできるのか」


 そう言われて自分に強化がかかっていることに気付く。だが、ルトラは満足していなさそうだ。


「さすが聖職者、レベル2までしか効かなかったか。レベル3までいけば確実だったのにな」

「レベルがあるの?最高いくつ?」

「レベル5!」


 サンクチュアリはそれを聞いて、苦笑いを浮かべる。この男をレベル3で確実に倒せる程にデバフをかけられるのは、相当強力な能力だ。


「まあ、ロストマインドでも多く見積ってレベル4だから、そうそう最高レベルまでいないけどな」


 そう言ってルトラは剣を構える。自分も飛びながら、砲と剣を向ける。


「今度は一方的にボコボコにはされない!」


 飛んでいってサンクチュアリに斬りかかる。先程とは打って変わって、サンクチュアリは慌てて躱す。カウンターを喰らわせようとしてくる、自分は軽く後ろに下がって、回避する。レベル2でここまでの戦力差が出来るとは、効果範囲によってはとてつもないチート能力だ。


「うむ、これは私の負けだな」


 急にサンクチュアリは動きを止める。自分はあまりにも急な行動に驚いてしまった。


「いや、もうちょっと粘れよ!」


 サンクチュアリは首を振って、後ろを指さす。そこにはエージェント・ロストマインドが何人か引き連れて、こちらに歩いてきていた。


「正直ロストマインド君が来る前に倒せない時点で、私のリーダーとしての威厳は損なわれている。ロストマインド君、その子は誰かね?」


 ロストマインドの後ろを見ると、グレイプニルと2人の少女が見える。どうやら残りのエージェント達が集合したようだ。


「それに、君達も全員集合…いや、一人欠けているな」


 後ろを見ると、いつの間にかパーミャチ達が立っていた。しかし、カコだけがそこに居ない。嫌な予感がするが、それよりも目の前の情報量が多すぎる。

 宿敵ロストマインドはいるわ、目的のグレイプニルに合流できたわ、グルグル巻のエージェントを引きずったパーミャチが何故か死んだ顔でぼボーッとしているわ、色々な起こるにしても、時間帯くらいずらして欲しい。


「まあ、ロスト君、戦闘態勢はとるなよ。とりあえず話し合おう」


 先程まで戦っていた者同士が、向かい合って話し出す。異様だが、異常な事だらけのこの世界では、気にする程の事でもなかった。



「全く、俺も殺し合いをしたかったのにナ。リーダーが言うなら仕方がないカ」


 ロストマインドはつまらなそうに、椅子に座って足をブラブラさせている。自分は低く唸りながら睨みつけるが、ロストマインドは笑ってこちらを煽るように、包丁をカチカチ言わせていた。暫く睨み合っていると、ロストマインドは横にいたサンクチュアリにげんこつを食らわされて大人しくなった。


「とりあえず和平合意という事でいいな。こちらも時止めの少女に半壊させられている状態だ。パンデモニウムも帰ってきていない…ここでの活動は辞めよう」

「ああ、そうしてくれ。そう言えば、最重要目的はどうしたんだ?それもほっとくのか?」


「あいつはやべーけド、こちらに攻め込んでこなきゃ、わざわざ喧嘩売る必要もねーしナ。そろそろ休暇が欲しいから帰るワ」


 ルトラ達は荷が降りたらしく、椅子に座って仲間同士で話し合っている。グレイプニルはどこにも怪我はなく、グレイプニルが助けたエージェント達も、悪い子では無かったようだ。


 その時、紅茶を飲んでいたコンプライアンスの足元に何かが転がってきた。全員の目がその物体に向けられる。

 コンプライアンスはその物体の正体を認めた瞬間に、ティーカップを落として、椅子から転げ落ちる。


「パ、パンデモニウム!」


 それは逃げ出したはずのパンデモニウムの頭であった。転がってきた方向から歩いてきたのは、いつぞやの狼の女の子であった。


「オイラがパンデモニウムのクソ野郎は殺した。こいつには散々虐められてきたから」


 サンクチュアリは胸の前で十字架を切って、少女を見つめる。


「マヤ君、この子が私達の追っていた子だ。収容施設のcladeランクのコンカラー3人を脱走させて、甚大な被害を発生させたんだ」


 少女は真っ直ぐにこちらに歩いてくる。自分は唾を飲み込んで、少女の様子を伺う。少女は自分の目の前に来ると、いきなり自分の膝の上に座る。


「で、機関のバカ共?オイラを捕まえるか?」


 自分の膝の上に座ったまま、サンクチュアリに叫ぶ。どうやら立ち位置的に味方側なのだろうが、エージェントの首引きちぎってこちら側にこられたら、せっかくの和解が無くなってしまいそうだ。


「いや、これ以上被害は増やせない。パンデモニウムは確か君の収容に携わっていたな。あいつはロストマインド君並の問題児だったからね、よく今まで生きていた方だ」


 驚くほどサバサバしている。復讐に燃える奴は一人もいない。相当ブラックな職場なのだろう。死ぬのは当たり前、一々同僚の死に感化されることも無い。と、思っていたが、セレブルムはブルブル震えていた。


「じゃあ、お前らは攻撃しない」


 少女はそう言ってから、自分の方を向く。敵意は無さそうなので微笑みかけると、嬉しそうに笑い返してきた。


「そういや、名前はなんて言うの?」


 少女は首を振る。


「オイラに名前なんて無いよ。好きに呼んで」


 自分は少女の顔を見つめていたが、少女の右目の瞳孔に何かが書かれているのを見つける。上向きの矢印だ。

 何かの能力の影響かもしれないが、気にしない事にした。突っ込んでも、どうせろくな事ない。


「で、なんで俺の膝の上に乗ってるの?」


 少女は自分の服を握りしめて、キラキラした目で答える。


「初めてオイラに優しくしてくれたから!好きになっちゃったかも!」


 少女は顔を赤らめて見つめてくる。

 いかん、やばいパターン入ってる。これは対処法を間違えると、何かしらのバッドエンド突入するぞ。

 強く断ると、逆上してまとめて殺されるかもしれないし、受け入れるとヨミとの抗争が始まってバッドエンド。やんわり断るしかないか。


「ふふ、街に出ればもっと優しい人がいるぞ!もっとドキドキするような恋も味わえるんだ。連れてってあげよう」


 少女は笑いながら首を横に振る。


「逃がさないよ♡」


 誰か助けて。


「いや、俺彼女いるから!」


 このセリフ使うとヨミに都合のいい時だけ彼女扱いしてない?とか言われるが、今はそんな事言ってる場合じゃない。


「別にいいよ?お前を仲良く半分こしてもいいね!」


 笑いながら少女は怖い事言ってきた。

 おお、神よ!お前なんかしたんか!なんかいらん事したやろ!肉あげただけでこんな事なるのか!


(いや、知らん)


 オタク神にテレパシーで突っ込みを入れられた。

 少女は自分に体を擦りつけている。とりあえず帰ってからどうにかしないとな。時間が解決してくれるかもしれないし。


「カコはどこへ行ったんだ?」


 サンクチュアリに聞いたが、膝上の少女が答える。


「魔法少女の子でしょ?あの子狂いながら森を出てったよ」


 自分は頭を抱える。また面倒事が増えた。帰ってから捜索隊出さないといけない。ルトラ達は自分の横に来て、声をかけてきてくれた。


「大丈夫だ。私達が探し出す。とりあえずマヤ達は帰った方がいいんじゃないか?」

「そうよ、仲間の子達が心配してるでしょ?」

「あの子はあたい達の仲間、任せて!」


 自分も探してあげたいのだが、今は戦争中だ。司令官が敵の陣地侵入して人探しをする訳にはいかない。


「分かった、一旦帰還する。後で連絡するからその時にまた話し合おう」


 ルトラは頷いて何かの本を手渡す。


「これがあれば森の通信妨害も関係ないから、落ち着いたらこれを使って連絡してくれ」


 自分はそれを受け取って頷く。

 自分はグレイプニルとパーミャチを連れて、森の外へと歩き出す。どうにか今回の作戦は一応は成功のようだ。

 しかし、この事件は終わっていない、そう自分の直感が叫んでいた。


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