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83話 聖域

 

「お前は精神の耐性はあったようだが、魔法の火力も低い。さっさと始末してやる」


 機械人形達は整列してパンデモニウムの前に並ぶ。パーミャチは杖を構えて、魔法の準備をする。戦力差は大きい。それでもパーミャチは諦めない。


「私は弱くない!お前なんか私だけでも倒してやれるんだから!」


 パーミャチはロケット弾を絶え間なく発射しながら、パンデモニウムを倒す為の策を考える。しかし、ロケット弾の火力は弱く、2、3発撃ち込まないと機械人形1人すら倒せない上に、機械人形は30人を維持したまま、楽器をかき鳴らして、音楽記号の形をした魔弾を撃ち込む。

 段々パーミャチの息も乱れてきて、魔弾にも被弾するようになった。


「くっ!」


 勝ち目が見えない。どうやっても数を減らすことは出来ない。どんどんパーミャチの体はボロボロになっていく。だが、パーミャチはそれでも戦い続ける。


「このままやられる訳にはいかない!私は革命を起こすの!」


 パーミャチの杖が光り輝く。パンデモニウムは眉をひそめて、機械人形に総攻撃の命令を出す。しかし、攻撃が届く前に、パーミャチから衝撃波が発生して機械人形達は吹き飛ばされる。


「舐めていたが、中々に厄介だな。さあ、どういう能力だ?」


 砂埃が晴れると、そこには勲章をつけた分厚い赤いコートを着て、堂々と立っているパーミャチがいた。カコから受け取った魔法少女の能力で変身したのだ。


「粛清を!革命を!」


 パーミャチは手を広げて、周りに無数のロケット発射機を展開する。その数およそ200。

 パンデモニウムは驚いて、目を見開く。あまりにも急に進化しすぎだ。パンデモニウムは身の危険を感じて、最後の能力を発動する。


「フィナーレ!」


 機械人形達が先程よりも大きな音を出し始める。最後の能力、フィナーレ。この能力は範囲内の生物を強制的に眠らせる事が出来る。1度使うと30時間ほど使えない大技だが、眠らせてしまえば、勝利だ。


「さあ、眠る時間だだ!」


 楽団は美しい音楽を奏でる。その音を聞いたパーミャチは眠そうにふらつく。勝利を確信したパンデモニウムは笑っていたが、急に大きな声が聞こえる。


「戦場で居眠りをする兵士がいるものか!軍歌を歌え、進み続けろ、同志たちよ!」


 パンデモニウムは後ずさる。どんな化け物でもフィナーレに抗えた事は無かった。


「まさか、上書きされた?」


 パーミャチはロケット弾を発射する。あまりの数に機械人形達だけでは耐えきれずに何発かすり抜けた弾がパンデモニウムに直撃する。

 パンデモニウムはそのまま吹き飛ばされて、遥か遠くの木にぶつかって爆発する。パンデモニウムはすぐに立ち上がって逃げ出す。勝てないと分かったら逃げるのは賢い事ではある。


 パーミャチはその場に立ち竦んでいるだけであった。


「倒せた…けど、カコちゃんは何処へ行ったの?」


 パーミャチはは情けない顔で歩き出す。パーミャチはカコを探し始めた。勝者とは思えない雰囲気を醸し出しながら。



「エージェント・サンクチュアリ!やっと見つけた!」


 サンクチュアリはキャンプの近くで椅子に座って本を読んでいた。サンクチュアリは本をしまって立ち上がる。


「すまないが、ここでは懺悔はできないぞ」


 自分は鋏を構える。サンクチュアリは神父のようだが、体は鍛えているようで、ガチガチの近接戦闘タイプだと見ただけでわかる。


「俺は神は信じないからな。懺悔などはしない」


 サンクチュアリは静かに笑う。


「ああ、日本人はそのような人が多いと聞く」


 自分は隙をつかれないように、気配をめぐらせながら、サンクチュアリの様子を伺う。


「どうやらコンプライアンス君達も戦っているようだ。あの子達は血の気が多いからな」

「別に俺はおしゃべりしに来た訳じゃないぞ。戦う気がないのか?」


 ルトラも長剣を撫でながら、サンクチュアリをジロジロと見つめる。サンクチュアリは首にかけている十字架のネックレスを触りながら、話し始める。


「もちろん戦いたくはない。私としても、ここに住むコンカラーの収容は反対だからな。私はただのお目付け役だ」

「じゃあ、さっさと帰ってくれ」


 ルトラは不機嫌そうに言い放つ。しかし、サンクチュアリは落ち着いた表情で、話し続ける。


「まあ、君達とは和解したい。そもそもこの数を私達だけで捌くのは不可能だ。調査だけして帰るつもりだが、厄介な奴がいてねえ」


 サンクチュアリは頭を搔く。


「まあ、とりあえず他のエージェントが帰ってくるまで何もしないのもあれだろう?私が相手をしよう。もし君達が勝ったらここには機関が立ち入れないように、上に言っておこう」

「まあ、皆が戦ってるのに、戦わないのは嫌だしな。やるか、ルトラちゃん?」


 ルトラは剣を構えて頷く。


「ここまで来て戦わずに帰るのは嫌だからな。私も戦おう!」


 自分達が剣を構えて、戦闘態勢に移ると、サンクチュアリはいきなり空中から十字架を召喚して、地面に突き立てる。


「かかってきたまえ!」


 自分は地面を蹴ってサンクチュアリに向かって飛ぶ。翼のおかげで何時もより速い。しかし、突き出したワンドを躱されて投げ飛ばされる。

 すぐに体勢を立て直す。ワンドをしまってから、鋏を構え、もう一度飛びかかる。ルトラも剣で斬り掛かる。


「甘い!」


 サンクチュアリはルトラの剣を腕で受け止めて、自分の鋏の刃から逃れるために真上に飛ぶ。自分の鋏は空を切ってじゃぎんと大きな音をたてる。サンクチュアリはルトラの剣を蹴って後ろに下がる。


「やはりpupaクラスは気を抜くと死ぬな。こちらも攻撃しなくては、耐えきれん」


 サンクチュアリは拳を構えて、一気にこちらに詰め寄る。自分は鋏を斜めに構えて、反撃の体勢を取るが、自分の守りをすり抜けて後ろのルトラに拳を叩き込む。

 ルトラは歯を食いしばって耐える。コンカラーは相当耐久力があるとルトラ本人が言っていたが、今のサンクチュアリの一撃は相当な威力だったのだろう。異世界ではない生身の人間とは思えない。


「速いし威力もあるのか」


 自分は鋏で斬り付けるが、サンクチュアリはまるで後ろに目があるかのように、こちらを見ずに躱す。

 そして自分の懐に潜り込むと、ほとんど予備動作のない動きで自分の腹に拳を叩き込む。とてつもない威力だ。


「うぐぁ!」


 そんな一撃を何度も繰り返し受ける。どうにか途中で腕で防御体勢を取ったものの、最後にサンクチュアリは腕を振りかぶり、思いっきり自分の腕に拳を叩き込む。

 自分は吹き飛び、木を二三本へし折ってから地面に叩きつけられる。


「馬鹿力すぎるだろ…」


 自分がフェンリルの能力を使った時並の火力だ。こんな奴に普通に立ち向かっては勝てる訳がない。どうにかして、動きを止めるかなにかをしないと。

 自分は走ってルトラの所に走っていく。

 その時にサンクチュアリの立てた十字架が目に入る。自分はそれを見つめたまま少し呆けた。


「原因絶対これやろ…」


 自分はサンクチュアリがルトラと睨みあっているのを確認すると鋏を振りかぶって十字架に叩きつける。しかし、十字架には傷一つ付かない。

 サンクチュアリは自分が戻ってきた事を認めて、大声で笑う。


「凄いな、さっきの一撃を受けてピンピンしているとはな!あと、目のつけ所は良かったが、それは概念だから壊せない!」


 指摘されて少し恥ずかしくなるが、それでもこれがサンクチュアリにバフをかけている事は判明した。ルトラは自分の後ろに立つ。


「ふむ、加護を受けてのその力ならば、制約で打ち消すのみだ!」


 ルトラは急に剣を捨てて本を取り出す。分厚いそれはどうやら法令集のようだ。


「審判の時だ!」


 ルトラの能力が発動する。反撃の時が来たようだ。

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