80話 魔改造
「あっ、コーヒー飲んでる!」
パーミャチが達が部屋に戻ってきた。あっちのチームはだいぶ仲良くなったらしく、遠くで楽しそうな笑い声が聞こえてきていた。2人は椅子に座ると嬉しそうに、笑っている。
「私達仲良くなっちゃった!気が合うんだよね!」
「こっちに来てから、パーミャチちゃんみたいな子に会ったこと無かったから、とても楽しかったよ!」
自分はそんな2人の様子を微笑ましく思いながら、マリーの横に立って、マリーの肩に手を回す。
「俺達も仲良くなったぞ〜!な!?マリーちゃん?」
「なってねえよぉ!はーなーれーろー!うがーーー!」
マリーは銃口を自分の顎にグリグリ押し付けて暴れる。自分は笑いながらもっとべったりと近付いてやった。生意気な子を弄るのは楽しい。
「あ〜、マヤの嗜虐心に火をつけちゃったのね!ドンマイ!」
パーミャチが親指を立てて、マリーにほほ笑みかける。マリーは余計に暴れて自分に噛み付いてきた。
「ははは、可愛いなあ!」
噛まれながらマリーの頭を撫で回す。そこにルトラがリビングに入ってくる。そして自分達を見ながら笑う。マリーは助けを求めるような目をしているが、ルトラは助ける気は無さそうだ。
「遊び相手がいると助かるな。マリーと楽しく遊んでやってくれよ!」
そして横の椅子に座って本を読み始める。
「むー!!!」
マリーは文句を言いたそうにルトラを睨むが、ガン無視されている。自分は死なないからもっとガンガン殺しにかかってきても構わないのに、マリーはあまり強くは抵抗してこない。
多分優しい子では有るのだろう。
「ビワ!このバカ好きにしていいから、ビワの部屋に連れ帰って!」
「はは、何故ほぼ初対面の人を部屋に連れ帰ったりするんだい?…ちょっと待って、ビワちゃんなんで後ろに立ってるの?」
ビワは後ろからガバッと抱き締めてきた。やばい、このまま連れてかれて、何かをされる。この子の行動パターンが読めないからこそ、余計怖い。
「させるか!道連れだ!」
自分はルトラをがっちり掴んで、逃げられないようにした。
「ふふ、私が連れてかれたら本末転倒じゃない!ビワ、この手を離させて…あれ?私ごと連れていこうとしてない?」
ビワは別に自分が好きでイタズラをしようと言うわけでは無さそうだ。
「「あ”あ”あ”あ”〜」」
2人で引き摺られて部屋に連れていかれた。その様子を見ながらルトラは笑いながら呟く。
「久しぶりに、あんな元気なマリーを見たな」
その独り言に答えるように、カコは話す。
「あいつらを倒して、ずっと元気な顔を見たいね!」
ルトラは静かに頷く。
次の日になって、全員がリビングに集められる。
「ふっかふかだったな…」
「当たり前でしょ…ビワにもふられたら終わりよ…抜け出せないわ」
昨日はビワに2人まとめて抱き締められながら寝る事になった。逃げ出そうとしても、力強く引き戻されて、マリーはそうそうに腕の中でぐっすりだ。
ついでにマリーもモフってやったが、無音で抗議されるだけで、何もされなかった。
「今日は喧嘩しないでよ。今から今後の活動を決めるから」
そう言ってルトラはどこからともなくホワイトボードを引っ張ってくる。そしてそこにつらつらと名前を書き始める。
「今回、確認できている敵はこの4人だね。まずはマヤ達が戦った、エージェント・ロストマインド。噂によると、敵の組織の最強クラスらしいね」
そう言って黒髪の男性の写真を貼る。手馴れた雰囲気だったが、まさかそんなヤバそうな奴だったとは。
「まあ、コイツの情報はほぼ無いから、後回しだね。全員でかからないと無理だろうし」
そう言ってその下に書いてある名前を指差す。
「次がエージェント・サンクチュアリ。神父らしいけど、コイツは普通に戦えそうな感じがするな。特殊能力は強化能力付きの能力場の展開」
写真には白髪をきっちりとまとめた初老の男性が写っている。中々かっこいいおじさんだが、顔に傷がついている。それが余計に歴戦の雰囲気を出している
「次が、エージェント・コンプライアンス。ほんとに戦えるのかも分からない」
次は眼鏡をかけて、目の下に隈がある不機嫌そうな女の人だ。綺麗な金髪だが、あまり手入れされていないのか、ボサボサだ。
「まあ、能力は分からないが、戦闘員であるだろう。気は抜けないな」
そして最後の写真を指さす。
「これがエージェント・パンデモニウム。精神汚染系統の能力らしい。対策必須だ」
今度は気難しそうな顔をした青年だ。この組織は全員何かしら闇を抱えてそうな顔をしている。その中でも何かしら濃そうな感じの印象を受ける。
「それじゃあ、対策会議の方に移ろうか!」
自分は真剣に考えようとしたが、何だか周りはホンワカしている。
「ぐぅー…」
ビワのせいだ。数分も話してないのに、もううたた寝している。この子ほんとに戦えるのか?
「もう…とりあえず会議はやめにしようか!だけどひとつ重要な事がある」
皆がルトラの方を向く。ルトラは自分とパーミャチを指差して話し始める。
「流石にこの2人をこのまま異常能力者同士の戦いに巻き込めない。2人を私達で強化しよう!」
正面から弱いと言われてしまった。自分はフェンリルの能力が使えないからと言う、言い訳ができるが、パーミャチはしょぼくれている。
「別に弱いと言ってる訳ではないぞ。ここで戦うのに今は向いてないだけだ。ここでは異常な事が良く起こるからな」
そう言ってルトラはパーミャチとカコを指差す。
「カコはパーミャチちゃんを頼む。私らはマヤをどうにかするから」
自分は驚いてルトラを見上げる。3人がかりじゃないと強化しきれないほど弱いってことなのか?
「私らは能力を与えた事なんてないからな。一人一人が微々たる強化しか出来ないから、3人でどうにか戦えるレベルまで漕ぎ着ける」
なるほど、そういう事か。でも弱いのは否定は出来ないから、弱すぎてってのも仕方ないがな。
自分は3人に連れられて、外に出る。窓の外の暗い空間ではなく、森の中ではあるものの、生き物の気配は感じられず、寒々しい感じがする。
「ここなら奴らも探せないだろう」
そう言ってルトラは何も無い空間から、長剣を取り出す。それを地面に突き刺した。なにかの魔術なのかもしれない。
「とりあえず、マヤの能力や武器は把握しているが、それを強化する方針で行こう」
そう言って手を差し出してくる。自分は首を傾げて、見つめるとルトラは自分の腰につけている剣を指さす。
「私はその剣を魔改造してやろう」
少し不安だが、自分は剣を外してルトラに渡す。それを持ってルトラはどこかへ歩いて行った。ビワはどうしようかと悩んでいる。
「ん〜あたいも何かあげれるものあるかな〜」
その横では不機嫌そうに、マリーが腕を組んでいる。自分はマリーに近付いて話しかける。
「別に嫌なら構わないよ。自分は死なないからゾンビ特攻すればいいし」
そう言うが、マリーはぶっきらぼうに自分の後ろに回り込み、ワンドを取り上げる。自分は慌てて取り返そうとしたが、そのまま逃げていってしまった。自分はヴァルに取り返してもらおうかとも考えたが、どうせ壊れる事も無いだろうと、放っておく事にした。多分何も出来ずに帰ってくるだろう。
「ね〜マヤ!」
ビワが何かを持って後ろに立っていた。その手を見ると、大きな黒い翼を持っていた。
「どうしたんだい?それは何?」
ビワは自分に向かって微笑む。
「コレあげる!私の翼からちょっともいで作ったの」
ビワはグイグイと自分に翼を、押し付けてくる。自分は苦笑いしながら後ずさりする。
「は?もいだ?いや、気持ちは嬉しいんだけどね。それはちょっとね…」
黒い翼というのは、相当なイケメンキャラがつけないと、厨二病にしか見えなくなる。いや、イケメンでもちょっときつい。別に嫌いじゃないんだけどね。
「あたいとお揃い!」
ああ、これは逃げられない奴だ。仕方ない、大人しくしておくか…
「じっとしていてねー!」
自分はどうなってしまうのだろうか…そんな不安を抱きながらも、なされるがままにするしか無かった。




