69話 宣戦布告
3069年12月6日、フェンリル反王都異種族共同戦線軍事連盟(以下フェンリル連盟)、最高司令部より神歌王国への最後通牒を行う。
そもそも、109年前の戦争により、人間族と一部種族以外は分断山脈沿いの地域に追いやられる事となった。それにより、資源の不足や立地による経済活動の難化により我らは苦しめられてきた。
それでも我々は平和を誓い、独自の経済発展を遂げ、この国全体にも良い影響を与える、重要な立場になった。
しかし、神歌王国都市政府は我々の独立を良しとせず、その悪辣な精神により、我らを圧政により、支配下に置こうとしている。
ならば、我々は我が同志達の独立のために、砲門を開かなくてはならない。
よって、フェンリル連盟はここに自由のための進撃を開始することを宣言する。
フェンリル軍最高司令官、レーベレヒト・ケーニヒ
「号外!!号外!!」
王都ではフェンリル連盟からの宣戦布告により、騒然としている。平和な期間が長かったために、戦争を実際に見てきた人もほとんど居なくなっていた。
「まさか戦争が起きるだなんて…」
「私達も戦争に駆り出されるのかしら…」
騒がしくなっている王都の中央に聳え立つ、王城の中の教会。その中央に立つ1人の可憐な少女、その名は守護歌神ローダンセ。王都を中心として国教扱いを受けている、王権守護教の主神である。
「神よ、我らにお力をお貸しください」
その前に跪くのは長女フレイヤ。その長い金色の髪は、地面につくほど長く、服の至る所に宝石や金の装飾が散りばめられている。ローダンセは静かに話し始める。
「分かりました。大きく人間界に関与する事はできませんが、出来る限りの事は致します」
フレイヤは立ち上がり、深くお辞儀をして、その部屋を立ち去る。ローダンセはフレイヤが部屋を出るのを見届けてから、大きく溜息をつく。
「なんて酷い…私はこんな事望んでいないのに」
ローダンセは天界へ戻ろうとするが、そこに1人部屋に入ってくる男がローダンセを引き止める。
「別に望んでも望んでなくても変わんねーよ。大人しく可愛い可愛い信徒のために、働いてればいいんだよ!」
ガサツそうな少年は欠伸をしながら話しかける。ローダンセは心底面倒臭そうに、少年の方を向く。
「サンダーボルト、何をしに来たのですか?ここは暇潰しに来るところではありませんよ」
サンダーボルトはニヤリと笑う。
「ちょっとくらい付き合ってくれよ、天界の奴らの相手よりは楽だぜ!」
ローダンセは仕方なく、サンダーボルトの話に付き合う事にした。
「それで、本題なんだけどさ。今回の戦争の勝敗を分ける要素ってなんだと思う?」
「よく分かりませんが、能力者の人数ですか?」
サンダーボルトは笑って首を横に振る。
「違うぜ、戦術だ。今回、敵には装甲を貼った動力車が大量に居るらしい、おそらく数で押し切るのは不可能だ」
ローダンセは首を傾げる。今回の戦争では、王都とフェンリル側では30倍以上の人数差があると言われている。装甲を貼ったくらいで圧倒的な人数不利を覆すことが出来るというのか?
「ああ、あと練度もあちらの方が高い。だから舐め腐ってたら、雷のように攻め込んでくるぜ」
「まあ、貴方が言うのなら、正しいのでしょう。姫に言っておきます」
それを聞くとサンダーボルトはその場から一瞬で居なくなる。ローダンセは椅子に座り、考え込み始めた。
「それじゃあ、明日からしばらく会えなくだろうから、皆で今日は思う存分騒いでくれ!」
ルルイエの城の中では宴会が始まろうとしている。
「ずっと同じ屋根の下で暮らせると思ってたんだけどなー」
カヤは酒庫から取ってきた高い酒をちびちび飲み始める。今までルルイエで一緒に生活してきたメンバーは色々な部署に別れて、戦争に参加する。そのせいで、直接は顔を合わせることが出来なくなるメンバーもいる。
「マヤー、私本当に大丈夫かなー」
雪風が話しかけてくる。雪風は海軍で戦艦の艦長になるらしい。フェンリル型戦艦二番艦スコル、サイズ的には長門位ある大型艦だ。
どういう風の吹き回しか、直接海軍のお偉いさんからスカウトが来たのだ。
「大丈夫だって、勉強はしてきたんだろ?海軍は敵の船が弱っちいから、そんなに心配する事ないさ」
メンバーの殆どは陸軍に所属しているが、何人かは海軍と空軍に引き抜かれている。
「フィアットー、毎日連絡してよねー!」
「ああ、お前は寂しさで死んでしまいそうだからな。毎日でも毎食でも連絡してやるよ!」
フィアットは海軍の能力者部隊の隊長に抜擢された。海上で飛び回りながら、敵の能力者を倒す役回りらしい。
リズは空軍に所属している。戦闘機の操縦に向いていたらしい。
ちなみに、伊智代はもちろん空軍で、ルルイエ防衛戦の時の活躍から、既にエースパイロット扱いである。
「ふふふ、マヤくん!僕達はずっと一緒だよ〜」
ヨミはニヤニヤしながら耳元で囁いてくる。陸軍内でも軍が違ったりして分かれているメンバーもいるが、ヨミは自分の直下の能力者部隊の一員である。サヤとアクケルテも同じ部隊所属だ。
カヤ、グランは自分が指揮を執る、第7軍の戦車隊所属、ラザフォードは第7軍研究部研究員兼臨時戦闘員である。
「マヤ、ヨミ、君達戦場でイチャコラするのだけは辞めたまえよ。あの、死亡フラグとやらが立つぞ」
「分かってますよ、自分の仕事は真面目にやりますよ!まあ、自分達は死なないから、死亡フラグ意味ないんですけどね」
トレントは第2軍司令官で、そこにエウスとパーミャチ、コメットも所属している。厄介な嫁も一応第2軍所属である。
「主人様!ラザフォードちゃんが絡んできます!助けてください!」
「いいじゃないですか〜、柔らかふわふわ〜」
「何よ!ほんとにこの乳は!乳の大きさが魔法火力の大きさなの?私に分けなさいよ!」
「パーミャチちゃん〜私は連射がきかないから、許してよ〜!おっぱい叩かないでー!」
「アクケルテさん、尊敬できる人ってどんな人ですか?」
「双葉さん、どうしたんすか急に?ん〜そうっすねー。自分を引っ張ってくれる人っすかねー自分は弱っちいっすから」
「なるほど…いいですね…」
「え?」
自分の仲間も随分と大所帯になったものだ。全員信頼出来る仲間だ。集まると相当うるさいが、それも個性なのだろう。
「マヤ、ヨミ様を泣かしたら私がぶん殴りに行きますからね!」
コメットはステーキにかぶりつきながら、話しかけてくる。
「分かってるよ。俺がヨミの事を守るから、コメットちゃんは自分の事しっかり守ってくれよ」
コメットはいつも喧嘩腰だが、今日はよく話しかけてくる。まあ、もうすぐ戦争が始まって会えなくなるんだから、寂しがってくれてるのかな?
「グラン姫や、何かあったらすぐ呼ぶのじゃぞ!儂が空を飛んで駆けつける」
「安心してよ、伊智代。私だってもう子供じゃないんだから!」
グランは無い胸を張って、ドヤっているが、どうみたって大人とは言えない。
「いや、子供だろ。まだ成人する年齢でもないんだし」
「うっさい!マヤだって年齢としてはまだガキンチョでしょ!」
自分は笑って全員を眺める。どうにか全員無事で、戦争が終わって欲しいものだ。またこうやって皆で食卓を囲みたいからな。
自分は甘えてくるヨミを撫でながら、料理を口に放り込む。この味も暫くはお預けだな。




