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67話 ギリギリの状況

 

 ムキムキなシスターに、2方向から襲いかかる。しかし、シスターは自分の拳を腕で受け止め、ヨミの剣はもう片方の手で掴んで、ヨミごと投げ飛ばす。

 簡単に片がつくと思っていたのだが、相当苦戦している。


「コイツ相当硬いよ!」


 ヨミは掴まれないように、距離をとりながら、剣を構えている。完全に物理に振り切っている、まるでフェンリルの能力を使った自分の、ドッペルゲンガーみたいだ。


「時間が無い!無理矢理にでもぶっ倒す!」


 自分は思いっきり殴り掛かる。しかし、あまり効いていない。自分はアルと戦った時を思い出す。あの時は地面を掘り抜くほどのパワーを見せていたらしい。今、その力を使えるなら、こいつくらい…

 自分は1歩引いて、拳を構える。


「ふう、集中しろ。街を消し飛ばされてたまるか!」


 シスターは自分に向かって蹴りを繰り出す。自分はそれを受け止めて、シスターの足を払おうと体勢を低くして、回し蹴りをする。

 しかし、シスターはそれを避ける所か、立ったまま足で受けて、逆に自分にカカト落としを食らわしてきた。


「くそっ!いってえなあ!」


 自分は跳ね起きの格好で、顎に蹴りを入れて、その反動で立ち上がる。

 シスターは少しふらついたが、すぐに体勢を立て直す。とてつもないタフネスだ。シスターはこちらに笑いかけてくる。


「その程度では私の筋肉には少し傷も付きません。私の筋肉は、昂っています!」


 シスターは上腕二頭筋をピクピクさせながら、ポージングをする。隙をついてヨミが後ろから斬り掛かるものの、直ぐに振り返って腕の一振で吹き飛ばす。


「ここはボディビルダーの大会はやってねぇんだ」


 自分は走って殴り掛かる、受け止められるが、構わずに何度も殴る。どんどん速度をあげて何度も何度も殴って殴って殴る。


「いいですよ!ここまでの連打は受けた事がありません!もっとです!私の筋肉はまだまだ耐えきれますよぉ!」


 変態みたいな事を言いながら、シスターは拳を受け続ける。ヨミも後ろに回り込んで、黒い霧でハンマーを作り出して殴り始める。

 ここまでやってもシスターは倒れない。


「うるぁああああ!」


 自分はだんだん焦りと苛立ちのせいでで、力が入っていく。1発1発が1mのコンクリート壁を粉砕するほどの、威力のパンチを何十発も食らわせる。


「だんだん威力が上がってきています!わざわざ死地に赴いた価値はありました!」


 シスターは殴られ続けるのに飽きたらしく、隙を見てこちらを殴ってきた。自分も殴られるのを気にせず、シスターを殴り続ける。

 だんだんと、どちらも血だらけになりながら、殴り合う、地獄絵図になっていく。このままでは間に合わない、自分は途中で地面を蹴って離脱する。


「はあ…はあ…もう終わりですか?まだ私は戦えます!」


 シスターはこちらを煽るように、クイックイッと手招きをする。これ以上戦闘狂に付き合ってられない。早くここを突破しないと、街が終わってしまう。


「ヨミ、一撃に賭けるぞ。力を貸してくれ」

「うん、僕に出来ることなら、全力で協力する!」


 自分は、ヴァルを呼び出す。


「ヴァル、加速させるのを手伝ってくれ、あいつは砲弾でもぶつけなきゃ、倒せんぞ」


 ヴァルは頷いて、自分の後ろに立つ。ヨミは自分に霧を纏わせてくる。足に黒い霧がまとわりつき、硬化する。今から自分自身を砲弾にする。


「さあ、必殺の一撃を私にください!もう、決着をつけましょう!」


 シスターは受け止める構えだ。ならば遠慮なくぶつけさしてもらおうじゃないか!


「加速するにぇ!」


 ヴァルは自分から魔力を補給して、発射準備をする。ヴァルは飛ぶ時には継続的に噴射し続けて、浮いているが、今回は爆発的な噴射で、弾丸のように飛ぶ作戦だ。


「上手くいくか分からないけど、やるしかない!」


 十分に溜まったのを確認して、自分はシスターに狙いを付ける。距離は10メートル程。加速するにはあまりにも近すぎる。


「行くぞぉ!」


 自分は空に向かって飛び蹴りをする。その瞬間にヴァルも飛び上がり、自分の足の向きと逆方向に、高密度の魔力を噴射する。

 目にも止まらぬ速さで、自分は飛んでいき、シスターに蹴りが当たる。シスターは歯を食いしばりながら、そのままの体勢で壁に叩きつけられる。


「素晴らしいですぅ!これは流石にぃ!うぐはぁ!」


 壁に大きなヒビが入って地面が揺れる。魔力を使い切ったヴァルと共に、床に着地する。

 シスターは流石に耐えきれなかったらしく、気絶している。これで死ななかった方が凄いと思うが、どうにか倒せたようだ。


「マヤくん、倒した喜びを噛み締めている暇はないよ!早く奥の部屋へ行かなきゃ!」


 自分は能力を解除して、ヨミと一緒に、扉の前に走っていく。どうやら鍵はかかっていないようで、扉を開けて中に入る。その部屋はモニターが並んでいて、何かを監視していたようだ。

 しかし、殆どのモニターは電源が落ちていて、一つだけ映っているモニターにはこの建物の玄関が映し出されていた。

 ヨミとヴァルと手分けして部屋の物を漁る。


「どうやら、ここは重要な部屋らしいな。多分、俺らがこんなに早く来るとは、思っていなかったんだろう。ほら、爆弾が設置する前の状態で、箱に入ってる」


 処分する前に、戦闘が始まったのだろう、整理もされずにぐちゃぐちゃの書類が放り出されている。


「どうやら相当前から監視されていたみたいだね。僕達の城には、手は入ってなかったみたいだけど、ヨルムンガンド様の爆弾はバレてたみたい」


 モニターの前の机を見ると、見知った顔が見える。こいつは確か、ラーマだったけな。ニルヴァーナのリーダーのくせに、逃げ出した奴だ。


「こいつが実行犯みたいだにぇー。探したけど、ここにはリモコンは無かったにぇ」


 とりあえず、大事そうな書類をまとめて、ヴァルに持たせる。ヨルムンガンドは終わったのだろうか?

 待つべきか、向かうべきか。そう思っていると、後ろからヨルムンガンドの声が聞こえてきた。


「やあ、マヤ!こっちは終わったんやね!私の方に起爆装置はあったで!」


 ヨルムンガンドが四角い箱をこちらに見せてくる。ほっとして、口から変な息が漏れる。危ない所だった。

 運び出されても、ここで起爆されても、大変な事になっていた。どうやら、敵の計画は阻止できたようだ。


「ヨルムン!ここに、いっぱい証拠が残ってる!これで王都側に圧力かけれるわ」


 ヨルムンガンドは自分とヨミの頭を撫でてきた。ヨルムンガンドに撫でられると、なんだかむず痒い。

 最近は友達として付き合っていたから、あまり最強の悪魔として見ていなかった。


「ありがとうな!みんなのおかげで、私のせいで街が消し飛ばずに済んだわ。ほんまにありがとう!」


 自分といる時にしか、関西弁を使わないヨルムンガンドが感極まって、素になっている。

 しかし、そんな喜びも長くは続かなかった。急にモニターの前にあった、スピーカーから声が聞こえてくる。


「封印は解けたぞ。これでいつでも起爆できるはずだよな。連絡がなければ、手筈通りに執り行う」


 4人で固まってしまった。そうだ、別にこの遠隔起爆装置を使わなくても、やろうと思えば、別の爆弾で誘爆させる事も出来る。喜んでいる場合じゃない。早く、爆弾の所に向かわなくてはいけない!

 全員で走って、外に出る。ここは街より土地が、高くなっていて、街全体が見渡せる。


「計画書によると、ど真ん中の建物に爆弾は隠しているらしい。早くそこまで行こう」


 4人で街を見て、目的地を探す。全員が緊迫した表情で、街を見下ろしていた。


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