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64話 巨人対人間

 

 二足歩行兵器の思い脚部は今、自分達を踏み潰さんと振り下ろされている。自分は死んでも構わないが、ラザフォードが逃げる暇が有るだろうか

 …必死に手を広げて受け止める体勢をとる。


「うぉらあ!」


 手に冷たく重い感触がする。終わった…これは止めれない。そう思っていたが、足は地面につかずに浮いている。

 自分の力でこれを止められるはずがない。横を見ると、市長がいつの間にか一緒になって脚部を支えている。


「危ない所だったな、テレポートが使えなかったらラザは死んでいた」

「市長…やっぱりラザフォードの事、大事だったんだ…ですね」


 市長は自分を見て、目をそらす。


「すまない、君達の事を誤解していたのかもしれない。まさか、うちの子を助けるために身を呈してくれるだなんて…」


 ラザフォードは立ち上がり、足の下から逃げ出した。それを見て無理矢理足を退かして、足の下から脱出する。


「すまないが、私は魔力を使い切ってしまった。もう戦えない…」

「構わないですよ。自分達が仕留めてみせます」


 そう言ってヴェストヴィントの前に立つが、立ちはだかるその巨体を止められるのか、不安になる。


「グラン!あいつの装甲抜けるか?」


 グランは首を振る。確か伊智代も対人特化のために厚い鉄板を貫通できるほどの貫通力はない。

 考えている間も、ヴェストヴィントは砲を撃ち込んできたり、こちらを踏み潰そうと近付いてくる。


「攻撃は当たらないが、こちらも反撃しょうがない…」


 悩んでいると、ラザフォードが自分に声をかける。


「私、ヴェストヴィントの装甲、貫通出来ます!でも、コックピットまで飛べないんです…」


 自分も貫通だけならワンド放り込めば、出来るのだが、そこまでたどり着く方法が…

 グランも人を担いで、上に上昇するほどの力はない。

 すると、突然ヴァルの声が聞こえる。


「マヤ、飛ぶ方法あるにぇ」


 驚いてヴァルの方を見る。1人で暇な時の喋り相手でしか無かった、ヴァルが戦闘時に出てくるとは珍しい。


「どんな方法だ?」

「普通!魔力は他の人に分け与えられないけどにぇー。でも私は他人じゃないにぇ!」


 自分は無駄に魔力を生み出し続けることが出来るが、それを活用することが出来ない。活用してくれるなら大歓迎だ。


「私は魔力を放出する能力を手に入れたにぇ!それでジェット噴射みたいにして飛ぶにぇー!」


 うわぁ、しょっぼ…流石、自分の背後霊。飛ぶくらいしか出来ないぞ。こいつ物理攻撃ろくに出来ないから、本当に飛ぶだけだ。


「まあ、仕方ない。どれくらい飛べるかわからんが、頼むぞ!」


 ラザフォードをおぶって、ヴァルに掴まる。…ヴァル本体が千切れないか心配になる。

 そんな心配を他所に、ヴァルは自分からの魔力供給を受けて、飛び立つ準備をする。


「ラザフォード、しっかり掴まってろよ!」


 大分不安定な格好になっているが、ヴァルは足から圧縮された魔力波を噴射しながら、ゆっくりと離陸した。手を使ってどうにかバランスを取りながら、一気にコックピットまでたどり着く。


「うぐぐ、早く攻撃するにぇ!もうバランスがー!」


 自分はヴァルから飛んで、ラザフォードと共にコックピットの上に着地する。


「ほら、ここなら行けるか?」


 ラザフォードは頷いて、腰に着けていた何かを取り出す。それはどうやらごちゃごちゃ何かをつけた、棒のようなものであった。


「行きます!」


 ラザフォードは棒を振り上げて、突き立てようとするが、そこにヴェストヴィントの腕の大砲がラザフォードを狙っていた。

 しかし、ラザフォードは構わずに攻撃を続けようとしている。


「俺の出番だな、大砲だろうが1回は弾いてみせる!」


 自分は砲の前に立ち、ワンドを縦に構える。発射された砲弾はワンドによって、数度だけ角度を変える、更に自分に当たって更に軌道を変える。

 どうにかラザフォードに当たらずにどこかに飛んでいく。


「クリティカルポイント!」


 ラザフォードは棒を叩きつける。その瞬間に、棒の先端で爆発が起きる。1箇所に留められているものの、その熱波はこちらまで届いた。

 その火力は装甲を捻じ曲げて、中を焼き尽くすのには十分であった。


「凄い火力だな…どう言う能力なんだよ」


 巨人は操縦主を失い、活動を停止した。どうにか倒せたようだ。まさかこんな化け物を相手にするとは思わなかった。

 ん、ヴァル?砲弾が直撃したのに大丈夫かって?

 大丈夫な訳ないだろ。即死だよ。


「マ、マ、マヤさん!大丈夫ですか!透けてますよ!」


 自分は笑ってサムズアップをする。ああ、久しぶりに死んだな。久しぶりに自爆以外で死んだな。



「相当な被害が出たが、おかげで全滅は防げた。本当に感謝する。俺達はフェンリルに全面的に協力する」

「別に自分達は恩を売るために、助けた訳ではありません。将来のある技術者達を助けられて、こちらも鼻が高いです」


 どうにか仕事はこなせたようだ。ここまで手のひらを返してくるとは思わなかったが、こちらとしては助かる。

 ラザフォードは父親に許しを得て、こちらに仕事をしに来るようだ。能力の火力や、勉強熱心な所に惹かれて、自分の直属部隊でもある、第7兵器研究部に入ってもらうことにした。


「マヤさん、一生懸命頑張ります!」


 一応のハッピーエンドだな。

 でも、ラザフォード、凄くベトベト触ってくる。今も抱きついてきているし、今更ハーレム展開っすか。

 でもちょっと肌寒くなってきた、この季節には相当ありがたい。竜人族って体温高いんだな。


「まあ、一件落着って事で。自分達はとりあえず、街に帰ります」


 そう言って迎えの連絡をするが、滞空できる飛行船と、近くの飛行場の貸し切りに1日かかるらしい。

 グランは期待の目でこちらを見てくる。自分は微笑み、頭を撫でる。


「じゃあ、今から1日遊ぶか!グランの好きなとこ行っていいぞ!伊智代さんも、ちょっとはしゃいでもいいよ!」


 と、言う事で街の美味しそうな物を手当り次第買っては歩きながら、食ったり、お土産を買い込んだり、遊び倒した。

 ラザフォードはその最中にも手を繋いできたり、グランも腕を組んだりしてきた。

 自分はこの状況に戸惑いつつも、サヤの好きそうな物を買い込む。

 ヨミの為に龍人族の独特なデザインだが、可愛らしい、冬服も買ったりもした。旅先での買い物は、久しくしていなかったので、とても楽しめたものだ。



「マヤよ、お前は可愛いのう!儂の1番の息子じゃ!」


 伊智代は静かにしていると思っていたが、一旦途中で別れて、夜に宿屋でゆっくりとお茶をしながら、伊智代が酔っ払って帰ってきた。

 この人絡むタイプの酔い方する人だったか。グラン見慣れていたらしく、すっとそこから離れてしまった。


「ふう、もふもふじゃのう。いくらでも触ってられるぞ」


 うっわ、酒臭い!このお婆ちゃん、めちゃくちゃ酒呑みだ。まさかいつもは抑えていたのか。いや、いつも飲む時は酒瓶三本も開けるぞ!

 結局その夜は、酔っ払いの抱き枕として過ごすことになってしまった。


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