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63話 龍の街の昼下がり

 

「成程、知識の偏りね…そりゃあ外界と遮断されてるからなー、この街」


 ラザフォードから話を聞くと、突発的な思いつきで、言ってきた訳ではない事が分かった。


「はい、この街の技術力は確かなんですが、私の夢を叶えるにはもっと色んな知識が必要なんです!」


 この子は生まれつき飛べないらしく、夢は空を1人で飛ぶことらしい。しかし、この街の人は全員自力で飛べるために飛ぶ機械など作る人が居ないのだ。


「まあ、来たいなら別に構わない。今ここに詳しい人も探していたしな」



 ラザフォードに案内してもらいながら、色んな技術者の作品を見て回る。ここは魔法を動力として駆動する機械を、主に作っている。

 魔法の動力方式が違うので、今のフェンリルの魔術技術や、王都側の魔法技術では再現不可能なのだ。

 なので今回技術の共有を目的に、ここまで来ている。


「マヤさん達は今回どんな技術が欲しいんですか?」

「んー、そもそもの基礎技術が足りてないのもあるけど、どんな技術もどこに役立つか分からないから、出来るだけ色々な部門で集めたいな」


 そう言ってブラブラしていると、さっき会ったばかりの市長が前から歩いてくるのが見えた。そこまで大きくない街だから、仕方が無いな。

 しかし、こちらを認めた途端に早歩きになって近付いてきた。その顔には明らかな怒気が見える。


「貴様!追い返されたからと言って、子供に取り入ろうだなんて、気持ち悪いことしやがって!」


 子供?何を言ってるのかと思ったが、まさか、ラザフォードが娘だったのか。確かに全体的な色味は似ていた。

 自分が反論しようと、詰め寄ろうとすると、ラザフォードが叫ぶ!


「うるさい!この糞頑固親父!」


 さっきまでの、ふわっとした感じの雰囲気が消え去った。ラザフォードは市長の胸倉を掴む。


「どうせ、ロクに話も聞かずに追い払ったんでしょ!私の事を思ってるフリして、自分の事しか考えてないの知ってるから!」


「今だって、自分が気に入らなかった、フェンリルの人達を追い出すために、私を言い訳に使ったんでしょ!」


 その気迫に押されて市長は下を向いて、ボソボソと呟く事しか出来なかった。

 ラザフォードは市長を突き飛ばして、吐き捨てる。


「もういい、私出てくから!どうせ大した事も出来ないガキなんか、大切じゃないんでしょ!頭の固い老いぼれと共に、王都に潰されて死んじゃえ!」


 市長は悲しそうな顔でラザフォードを見つめている。


「ラザフォード…俺はお前の事が大切だから…」


 しかし、ラザフォードは無視して、自分の所に戻ってきた。


「マヤさん、街の外で働きたいって言っている人がいるから、その人達連れて早くこの街を出たいの!お願い出来る?」


 ちょっとビビりながらも自分は頷いて、ラザフォードと共にその場を離れる。



「お父さんとは仲悪いのか?」


 街の外の丘で4人で座って話をしている。ラザフォードは体育座りをして、膝に顔を埋めている。


「ううん…仲は良かったよ。でも、私の事全く分かってくれないの。ずっと自分の元に置こうとしてるだけ、理想の父を演じているだけなの」


 ラザフォードはボソボソと喋る。


「私が武器職人になりたいって思ってるのに、危ないから辞めろと言うし、街から離れて色んな事勉強しに行きたいって言っても、絶対許してくれないし。私をペットかなんかだと思ってるの」


 自分はポンポンとラザフォードの背中を叩く。伊智代は反対側からラザフォードにそっと、声をかける。


「そうじゃないぞ。親は子供の事が大事過ぎて、行き過ぎた事をしてしまうのじゃ」


 ラザフォードは少し顔を上げる。おお、流石メンバー全員のおばあちゃん!貫禄が違うな(未婚)。


「親と言うものは完璧ではない。子供を育てるという事はとても難しいのじゃ。儂は300年以上生きてきて、色んな家族を見てきた」


 伊智代は何か、昔の事を思い出したらしく、遠い目をする。


「その内の誰一人として完璧な子育てを出来た親はおらんかった。じゃが、子供は立派に巣立っていったぞ」


 ラザフォードは伊智代の方をじっと見つめている。


「じゃあ、お父さんは私の事を本当に愛してるの?」


 伊智代は微笑みかける。


「そうじゃ、お前の事を1番愛しておる。勿論、ぶつかり合う事もあるぞ。じゃが、親子の絆は多少捻っても切れんものじゃ!」


 ラザフォードは目に涙を浮かべている。


「私、お父さんに酷い事言っちゃった。勝手に決めつけて、悪者扱いしたのは私の方だった。謝らないと…」


 自分も少し感化されて、ちょっとウルっとなりそうになっているが、ふと横を見るとグランがしょんぼりしている。

 そういえば、母親も父親もいないも同然だった。自分はそっと頭を撫でる。


「血の繋がりだけが、親子じゃないさ。メンバー皆グランを家族だと思ってるぞ。他の親子愛見て寂しがるなよ!」


 グランは自分の顔を見つめて、直ぐにイタズラな顔して、自分の横腹を肘でつつく。


「自分もいい話して好感度あげようとしないの!私はメンタル強いから、心配しなくても大丈夫よ!」


 大分日が暮れてきた。皆で立ち上がり、一旦飯を食べるために街に向かうことにした。


「食べ終わったら、お父さんに謝りに行くわ!その時に私からも、フェンリルとの協力を仰いでみる!」

「別にそれは構わないよ。俺らに気なんて使わなくていいから。まっすぐに気持ちを伝えてきな!」


 和気あいあいとしながら、飯屋に向かう。しかし、ゆったりとした時間は長くは続かない。


 いきなり轟音と共に1キロメートルほど離れた所から何かが上空に飛び上がる。そして家を壊しながら、大きな音と共に着地する。何事かと、3人で慌てていると、ラザフォードがぼそりと呟く。


「え、なんであれが動いているの?」


 自分はとりあえず戦闘態勢を取るが、砂煙が晴れて現れたそいつは、いわゆるロボット的な何かだった。

 12メートルぐらいの高さの二足歩行で、腕はなく、代わりにそこには大砲がついている。ゲームとかで巨大ボスとして出てくる奴だ。


「あいつ何!?なんで核搭載二足歩行兵器みたいなのが出てくんだよ!」


 ラザフォードはロボットを見つめながら答える。


「あれは試作型の歩兵殲滅兵器…ヴェストヴィント!なんで動いてるの、誰が!」


 すると、誰かがこちらに走ってくる。


「ラザフォードちゃん!大変だ、ヴェストヴィントに余所者が乗り込んで、この街を破壊しようと!」


 ラザフォードは顔面蒼白で、固まっている。


「まさか、あの時追い払った王都の人間!」


 ああ、何となく察した。敵対関係がはっきりしたな。


「ラザフォード、中にいる奴殺せば止まるのか?」


 ラザフォードは頷く。自分は笑って、構えを取る。


「グラン!今からフェンリル状態で突っ込む!支援を頼む」


 自分はフェンリルの力を解放する…解放する?


「何してんのよ、早くフェンリルの能力を…」


 自分はゆっくりと振り返る。おそらく自分の引き攣った表情を見て察したのだろう。


「まさか、使えないの?」


 自分は頷き、3人で肩を落とす。おそらく異常な魔力による阻害によって、使えなくなっているのだ。


「あいつの装甲って硬いよな」

「うん、すっごく硬い。しかもコックピットは地上からじゃあ狙えないし、破壊できる兵器を持って飛び上がるのは不可能なの」


「じゃあ、あれを止めれる能力者は?」

「居ない…」


 自分達が止めるしかないようだな。


「とりあえず近寄るぞ!」


 4人でヴェストヴィントの所に走っていく。

 現場は凄まじい事になっていた。ほとんどの家はぺしゃんこになって、更地になっていた。

 そっと近付いてコックピットを撃ち抜こうと考えていたが、気付かれてしまった。


「おい、退避!退避」


 全員で逃げ出すが、逃げている途中でラザフォードがすっ転ぶ。


「えぇぇ!ホラー映画の逃げる時じゃないんだからあぁ!」


 自分はグランと伊智代に先に行くように促して、ラザフォードの所に駆け寄る。

 しかし、ヴェストヴィントの足は既に自分たちの真上に、踏み潰そうと上げられていた。


「やばい!」


 自分は咄嗟に受け止めようと、手を掲げるが、自分一人では受け止めるなど不可能だ。ま

 だ立ち上がれずに、倒れているラザフォードを置いて、逃げることも出来ずに、怪物の足は既に自分達の真上に迫っていた。


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