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16話 танк!

 

 久しぶりに自分の好きな事ができる時間ができた。さっきまでは、サヤと一緒に料理の勉強をしていた。まあ、できたのは形の崩れたオムライスもどきだったが。

 今は、カヤの車両の改装設計をしている。制限としては重量40トン未満、最低でも4人がゆっくりと座れるスペースなどである。とても緩い制限なのでロマンを詰め込めると、ウキウキしている。

 あっちではグラン姫が改装するらしい。パーミャチとかに任せなくて良かったと思う。多分あの子は陸上戦艦を創ろうとするだろう。

 さあ、傾斜はどれくらいつけようか、装甲配置はどうすればいいだろうか。色々と妄想していると、噂をすればなんとやら、パーミャチが駆け寄ってきた。


「ねー、マヤ!大砲はいくつ載せるの?いっぱい載せたいよねー!」

「いや、一門しか載せないよ。そんないっぱい載せたって誰が撃つんだよ。てかどこにそんなスペースがあるの?」


 やっぱりこの子はそういうタイプだったか。流石にこの車両を

 〔 ぼくのかんがえたさいきょうのそうこうしゃ〕にはできない。

 地面にめり込まれても困るし。


「縦に何段も積めばいいんだよ!それを魔法で一気にドーン!」


 なんだね、君はデパートでも建設しようと言うのかね。生憎、デパートの経営者になる予定はないので、無視して設計図を引き始める。


「えー、無視しないでよー」


 パーミャチはブーブー言ってる。パーミャチは手持ち無沙汰に辺りを見渡すと自分のワンドに目を止めた。


「ねー、マヤ」

「ん?」


「魔法って興味無い?」


 そういえば、これワンドだったな。ずっと槍扱いしてたけど。


「ああ、確かに遠距離攻撃は欲しいな」


 パーミャチは嬉しそうに


「じゃあ、この私が教えてあげるわ!」


 魔法の杖を振り回す。


「じゃあ、そのワンドの名前は何?」

「そういや名前知らないな、ヴァル?」


 ヴァルがふよふよと浮き出て、


「名前なんてないから好きにつければいいにぇ」


 そう言ってまた消えた。昼はほんとに元気ない。


「じゃあ私が名前を…」

「いらない、ただワンドって呼ぶから」


 パーミャチは不満げだ。厨二ネームを呼ぶのは嫌ですしね。


「じゃあなんの呪文教えてあげようかなー」

「何があるの?」

「爆裂弾と熱線、身体強化に簡易ヒール、あと周りを巻き込む極太レーザー」


 全部攻撃に振ってると思っていたが意外とまともだった。最後以外。


「じゃあ、爆裂弾教えて欲しいな」


 得意技だったらしくパーミャチは


「いいわよ!まあ、教えても個人によって形態が変わるから一緒の魔法とはいかないけどね!」


 それから数時間パーミャチとともに魔法の練習をした。意外なことに適性があったらしく、爆裂弾を撃てるようになった。


「よーし!カチューシャ!」


 パーミャチの杖から火弾が発射され地面に当たり、飛び散る。続けて自分も魔力を貯めて、


「おりゃあ!ヘッシュ!」


 高速の鉄弾が飛んで行き、地面に当たってその形を歪めながら爆発する。ちなみに名前をヘッシュと付けたが、HESH(粘着榴弾:弾頭が潰れながら装甲にへばりついて爆破する戦車砲弾)のことである。なんか格好良い気がするし。


「やったね!火力は低いけど、最初にしては十分だと思うわよ!」

「結構嬉しいな、やっぱり!魔法って楽しいな!」


 パーミャチは杖をぶんぶん振り回して、


「そうよ!魔法は正義なの!火力イコール正義でもあるわ!」


 そんな小艦巨砲主義少女を見ながら、ふと気になった。


「そういやその杖の名前ってなに?」


 パーミャチは自信満々に、


「キラーゴッドバスターよ!」


 …ダメだこりゃ。


 パーミャチと別れ、また図面とにらめっこする。装甲の設計はしたことが無いが、この世界の駆動系は驚くほど簡単なので助かる。適当に重さ超えないように装甲貼り付けるだけでもいける。

 砲はフィアット兄貴らが試行錯誤して作ってくれている。見てる感じ順調に完成に近づいているらしく、一安心だ。

 すると、伊智代が近づいてきた。


「みんな頑張っとるのう。正直儂にはよくわからんのじゃけど」


 伊智代はふさふさとしたしっぽを揺らしながら本を読んでいる。


「まあ、そんなすごい物は出来ませんよ。ここには技術者なんていませんからね」

「それでも、自力であちらの技術を再現しようとしているのは偉い事じゃ」


 伊智代はふと思い出したように、


「そういえば散歩してたらの、変な鉄の塊を見つけんじゃ。もしかしたらマヤが言っとる戦車がこちらに飛ばされて来たのじゃないかと思うてな」


 それはいいニュースだ。もしまだ使えるようだったら砲塔だけでも再利用出来そうだ。


「見に行ってみましょう!使えるかもしれません!」


 伊智代に案内されて、森を少し入るとそこには大きな戦車が放置されていた。角張った砲塔に幅広の履帯、緑色の塗装が施された戦車だ。


「すっげえ、リアルKV-1だ…」


 この戦車はKV-1重戦車であった。第二次大戦中に開発されたソ連戦車でその当時では分厚い装甲によってドイツ軍を苦しめた戦車である。ただ、信頼性が低く、よく変速機とか壊れていたらしい。


「これは十分使えそうですね!是非ともレストアしたいです!」


 しかし、喜びもつかの間、突然砲塔のハッチが開き、見覚えのある顔が飛び出した。


「残念だけど、マヤくん!もう僕らが改造しちゃったよ!」


 どうやら先客がいたようだ。


「ヨルムンガンドさんがいいエンジンをくれてね、そいつをこれに搭載したら、すっごい速くなったんだー!」


 興奮気味にヨミは話す。


「で、どれくらいの速さになったんだ?」


 元々の速さは大体時速30キロかそこらだろう。多分時速40キロ出せるようになったとかだろう。


「なんと時速140セクマルク!」


 何故かこの世界たまに単位が違ったりするからややこしい。大体1メーター2マルクくらいで、セクはキロだから…時速70キロメーター?40トン以上の巨体が時速70キロで走んのか…現代戦車みたいじゃないか。


「やばいな、それ。で、そんな速度で走ってどうすんの?」

「マヤくんの後ろをピッタリとついて行くよ!」


 うわあ、あの悪魔なんて事しやがったんだ。時速70キロってこっちの車より速いぞ。絶対逃げきれない。それをわかってヨミにエンジン渡したんだろうな。


「なんで追っかけてくるんだよ。もうお別れは済んだだろ?」


 ヨミは悪戯っぽく笑い。


「残念ながら、僕って結構好奇心旺盛でね!そんな楽しそうな旅について行かないなんて僕には無理だよ!」


 もう諦めるしかないようだ。別に危害を加えてくるるわけではないだろうし、どうせちょっと増えてももう変わらない。


「そういやマヤ、これってどうやって撃つの?」


 ヨミは砲を指しながら聞いてきた。


「弾が無いと撃てないぞ」

「弾なら無限に出てくるよ!」


 ヨミは中からどんどん砲弾を出してくる。ほんとに無限に生成されるようだ。なんで戦車の方がチート能力持って転生してるんだ。


「まあ、中身はよく知らないけど、弾装填して左の方探せば撃つ所あるんじゃない?」


 ヨミは中に入りゴソゴソと何かやっている。中で話しているようなのでメンバーがいるのだろう。しばらくすると、砲が上下した後にいきなり、


 パゴォォオン!!!


 とんでもない音とともに発射された。正面の木々はなぎ倒され、少し先で砲弾が爆発した。伊智代は少しクラクラしている。

 中からヨミが出てきて、


「やったー!撃てた!」


 ガッツポーズをしている。

 全く頼りになる仲間が増えたたものだ。


自分のお気に入りの戦車KV-1です。やっぱりソ連戦車は最高だぜ!

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[良い点] 戦車が登場したところ [気になる点] 〉自分のお気に入りの戦車KV-1です。やっぱりソ連戦車は最高だぜ! …… [一言] 心配しながら読んでいましたが異世界に登場したのがロシア戦車だった…
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