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130話 MARS

 

 自分はミーム達と共に長い階段を駆け上がる。先程上階で、とてつもない音がしたのだ。

 下からも戦闘音が聞こえたが、その音はその比にならないレベルの激しい音だった。


「今俺がいるのは4階…確か1番上にいるのは、ルトラ達。2階にいたのがカコだから、確実か」


 自分は階段を4、5段飛ばしで、登っていき、音がする階に到達する。

 その途中で焦っている何人かのコンカラーとすれ違ったが、その理由はその階の様子を見れば、直ぐにわかる。


「壁と天井どこ行った?」


 そこはまるで屋上の様になった6階だ。天井も吹き飛んでいるらしく、残っていない。

 剥き出しの鉄筋がそこらじゅうに飛び出ていて、危なっかしい。

 自分は辺りを見渡すが、真横に黒い玉が浮かんでいるのを見つける。恐らくコンカラーが、作り出したのだろうが、気持ち悪い。


「あ!ビワちゃん!」


 だが、そんな事を気にしている場合では無い。少し先に大きい体が横たわっているのが見える。

 自分は駆け寄って、息をしているか確かめる。どうやら生きてはいるようだ。


「マヤ…あいつめちゃくちゃ強い。あたい…負けちゃった…」


 自分はビワが指差す方を見る。そこには女の子2人が1対1で睨み合っていた。片方はマリー、もう片方はアンドロイド風の見た目をした銀髪の女の子だ。


「ルトラちゃんもやられてるし、マリーちゃんもやばいみたいだな」


 ルトラは離れた場所の柱にもたれかかっていた。マリーもボロボロで、限界のようだ。

 自分は鋏を構えて、戦っている2人のところに走る。マリーはアサルトライフルを構えているが、その手は震えていた。


「新手か」


 銀髪の子はこちらに気付いたらしく、こちらを向く。だが、マリーは焦った顔でこちらに叫ぶ。


「マヤ!逃げて!」


 自分は銀髪の子が目にも止まらぬ速さで、移動するのをギリギリ確認する。1秒も経たずに、自分の目の前に斬撃が繰り出されていた。


「ぐっ!」


 ギリギリの所で躱すが、髪の毛が少し切り裂かれる。自分は、無理矢理体を捻って、反撃するが、既に目の前に銀髪の子は居なかった。


「貴方が1番脆そうです。そこの小さな子は既に反撃する力もありません。私はマーズ。貴方を殺します」


 マーズと名乗った少女は長剣を構えて、こちらに斬りかかってきた。威力は低いが、とんでもなく速い。受け止めるので精一杯だ。

 ミームはいつの間にか移動して、マーズの足を引っ掛けようとしているが、素早いステップで寄せられている。

 ディザーは重いビワを担いでマリー達の所に移動している。救護してくれるようだ。


「ミーム!俺が攻撃受けるから、奴の足を止めてくれ!」

「分かった!」


 自分は鋏を前で構えながら、マーズに近付く。身体中の鳥肌が総立ちしている。ここまでの相手と戦うのは久しぶりだ。

 明らかに中の上程度の自分が戦う相手ではない。だが、この状況で尻尾巻いて逃げ出す訳にもいかない。

 マーズが少し体を動かす。自分はその瞬間に前に駆け出す。予想通り、マーズは攻撃を仕掛けてきた。


「喰らえ!」


 マーズの斬撃を鋏で流し、蹴りを入れようとするが、全く掠りもしなかった。自分は歯噛みしながら、体勢を整える。

 ここまで力不足だと、倒せる気がしない。ミームも突撃していたが、避けられて地面を滑っている。

 自分は何か手立てが無いかと、考えを巡らせる。そして、ふとショットガンを借りていた事を思い出す。散弾なら当たるかもしれない。


「マーズとの距離は…10メートル程か…いける!」


 散弾はあまり近すぎても、弾が散らばらないので効力を発揮しない。この距離ならいい感じにバラけるはずだ。

 自分はショットガンを取り出して、片手で構える。マーズの移動を予測して、正面に発射する。

 どう考えても当たる位置にいた筈なのに、マーズは迂回して、自分の横に移動していた。


「それは流石にやば過ぎるだろ…」


 自分は呟くが、既にマーズの斬撃は首の近くまで迫っていた。避けきれず、自分の首が飛ぶ。

 目の前の景色が回転して、地面に頭だけで叩きつけられる。


(痛ってー…死んじまったか…どうしよう)


 死んだために魔力を失い、ただの人間程度の力しか無い、幽霊状態になった。ミームは真っ青な顔でこちらを見ていた。

 自分は自分自身の体を横目で見てから、死んだふりをする。

 正面から行っても勝てない。どうにか隙をつかなければ、ダメージすら与えられない。


「次は残っている敵を排除」


 マーズはブツブツと呟きながら、マリー達の方へ歩き出した。ミームが必死止めようとするが、直ぐに頭を刎ねられて死んでしまった。

 早く逃がしておけば良かった。

 だが、後悔後先たたず、どうしようもない。自分は歯を食いしばり、自分の体をヴァルを介して動かす。今奴は油断している。

 ならば、ショットガンも当たるはず。


(ヴァル、絶対に外すなよ)

(分かってるにぇ!)


 ヴァルとテレパシーで話す。自分の体は、まるでデュラハンのように、頭無しで動いている。

 ずりずりと地面を這いずって、ショットガンを拾い、マーズの足に狙いをつける。


(早く、撃て!)


 散弾は発射され、マーズの足に直撃した。

 マーズは衝撃に耐えきれず、地面に倒れ伏す。自分はヴァルを呼んで、頭を体に付けさせる。

 神経が繋がり、自分は急いで立ち上がる。


「喰らえ!」


 自分は倒れている隙に、マーズに向けてショットガンを撃つ。一発目は当たったが、2発目は避けられた。

 マーズは無表情のまま、立ち上がってこちらを見ている。


「なぜ死んで居ないのです。死に至らなかった?いや、生命活動の停止を確認しています」

「俺は幽霊だからな!しかも生き返るタイプの」


 自分は鞄からシェルを取り出して、ショットガンの下部から装填する。こいつは絶対に殺す。

 足は奪った筈だ。ならば、相手の電池が切れるまで、何度でも突撃するのみ。


「不死鳥、ウロボロス、それに類する無限を内包する生物…そう捉えてもいいのですか?」

「知らねーよ。お前が何をしたいのかな知らないが、とりあえず殺す」


 マーズは足に散弾を受けたのにも関わらず、真っ直ぐに立っている。しまった、甘かった。自分はショットガンを構えるものの、マーズは先程の速度で動いてくるのだろう。


「死なないなら、反抗できなくなるくらいに、何度も殺してあげましょう」


 マーズは力を込める。しかし、盛大にずっこけた。よく見ると、オレンジ色の物体が、マーズの足にまとわりついている。

 自分は足を狙って、散弾を撃ち込む。今度は確実に足の機能を奪った…いや、奪いきれなかったか。

 マーズは飛び起きて、オレンジ色の物体を振り払う。よく見ると、その物体は動いていた。


「ミームか!」


 物体は集まって少年の姿をとる。死んでいたと思っていたミームは生きていた。


「そうだよ!僕はこれくらいで死なないよ!」

 自分はミームの頭を撫でる。どうやら誰も殺されては居ないようだ。自分はショットガンを構えながら、マーズに近付く。

 今度は足にダメージを負っているためか、少し体勢が傾いている。


「覚悟しろよ、首を飛ばしてくれた礼は、きちんとしてやる」


 自分はミームと共に、マーズの前に立つ。マーズは表情を変えずに、こちらを見ている。

 だが、少しだけだが、先程よりも敵意が含まれている気がする。

 ここからが正念場だ。


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