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125話 大長小な3人組

 

「ビワちゃん、ルトラちゃん、マリーちゃん!久しぶりー」

「わー!マヤー!」


 ビワはタックルするかの様に、自分に抱き着く。ふかふかの感触が全身を包み込む。冬場でも無いのに、こんなふかふかのジャンパー着て、暑くないのだろうか。


「ビワ、いきなり抱きつくな。デリカシーを疑われる」


 ビワの後ろから、ルトラが歩いてきて、引き剥がす。そして、屈んで自分に手を差し出してくる。いつ見ても背が高い。


「久しぶりだな、私も会いたかった。エージェント達とも和解したおかげで、今の所平和に過ごしている」


 自分はその手を握って、ルトラの顔を見上げる。


「久しぶり、ルトラちゃん。何事も無く過ごせていて良かった」


 ルトラと握手をしていると、横でマリーが睨んでくる。さっきビワと抱き合ってたのが気に食わなかったのだろうか。


「どうしたの、マリーちゃん。なんで、そんな敵意剥き出しで見つめてきてるんだ?」

「私、転生者は信用してないから」


 マリーは最初から自分の事を信用していなかったが、さらに信用が落ちている。マメに会いに行った方が良かったか。


「転生者は女の子を(規制済み)としか考えてないのよ!ハーレム作って、性欲を満たすためだけに、生きているのよ!」


 とんでもない言いがかりだ。確かに王都にいる奴らの中にはいるかもしれないが、こちらにそんな転生者はいない。いたら、既にこの手で首を落としている。


「どこの情報だよ。大体、女の子が(規制済み)なんて、言葉使っちゃダメ!」


 自分は、マリーの額に素早く、デコピンを食らわせる。しかし、反撃されないようにしたはずが、予想より速く、自分の指に噛み付く。

 しばらく齧ってから、ふん、と鼻を鳴らす。


「男なんて全員獣だって聞いたよ!マヤだって、(規制済み)なんでしょ!(規制済み)!(検閲済み)!気色の悪い(また規制済み)!」

「(規制())って…酷いな。ルトラちゃん、教育間違えてない?」


 自分はルトラに助けを求めるかのように、目線を向ける。ルトラは苦笑いしながら、目をそらす。


「マリーは悪い本を読んだからな…私は止めたんだぞ!マリーが、エージェント達の所に勝手に遊びに行くんだ…」


 全く、悪いエージェント達だこと。後でクレームつけてやらねば。

 自分はビワに目配せする。まだワーワー汚い言葉を発しているマリーをビワが、抱き上げて、どこかに連れていった。

 抱き上げて直ぐに、騒ぐ音がほとんど聞こえなくなったので、息ができているかが少し心配だ。


「エージェントもここに?」

「ああ、案内する。喧嘩しないでくれよ?これから共闘する手筈だからな」


 自分はパーミャチ達を呼んで、ルトラに着いていく。すると、少し離れた所に、大きな建物が見えてきた。それは、おそらく鉄筋コンクリート造の建物で、窓が1つも見えない。牢獄にしても、おかしな建物だ。


「あの施設の横のキャンプで、エージェント達と一時過ごしている。挨拶しに行こう、別に増えてはいないがな」

「ロストマインドともう、顔を合わせたくないんだけど、仕方ないかー」


 自分は大きなテントの入口を開けて、中に入る。サンクチュアリ、セレブルム、コンプライアンス、ロストマインド、そして、白い髪の少女、確かアンタルチカと言ったか。


「どうも、ご無沙汰してます」


「おお、久しぶりだね、マヤ君。わざわざコンカラーとは関係ない、君を呼び出すのは、気が引けたが、ルトラさん達が寂しがっていたからね、すまない」


 サンクチュアリは優しい顔をしながら、迎えてくれた。やはり神父はこういうイメージだ。まあ、この人も拳で戦うのだが。


「多分、ロスト君と私ぐらいしか、君に気軽に話しかけられる子はいないが、ゆっくりしていってくれ」

「ありがとうございます」


 自分は床に座って、一息着く。女性陣は自分の方に目を合わせずに黙っている。やっぱり元敵だから気まずいのだろうか。


「…」


 自分も、元々敵対していた女の子にラフに話しかけられない。いつも他人に受動的に接していた事に気付かされた。


「ははハ!これ大丈夫カ?もっと、楽しくいこうゼ?俺もその方が助かル」


 ロストマインドは折り畳み椅子を、ガタガタと言わせる。なんだか落ち着きが無い奴だ。


「まあ、仲良しこよしでいかなくても、最低限のコミュニケーションが取れればいいだろ。どうせ、全員でワラワラ移動することは無いし」


 自分はカバンを下ろして、中身を確認する。いざと言う時に、必要な物を取り出さなければいけない。ショットガンのシェルは上の方に、ハンドガンのマガジンは、いくつか携帯しておく。

 サンクチュアリは、自分が用意をし終わったのを確認して、話しかけてきた。


「明日、あの施設に突入する。あの施設はコンカラーの避難所になっているようだが、人間に敵対する存在も、隠れ蓑にしている事が分かった」

「なるほど、全員が悪い奴では無いんですか?」

「そうダ、全員に喧嘩売ってたラ、全滅するだろうサ」


 どうやら、あの大きな建物に、能力者が何人も住み着いているらしい。もし、敵対したらタダでは済まないのは確実。目標である時止め女と、カコの対処を最優先に行動する。


「コンカラーは基本的に我が強い子が多いが、仲間を引き連れているかもしれない、気をつけてくれ」


 サンクチュアリはそう言って、どこかへと歩いて行った。

 自分はやる事が無くなり、ルトラやパーミャチと共に会っていなかった時の話をする。ルトラはカコを探しながらも、コンカラー達を集めて、小集落を形成したらしい。

 位置は前に居た森では無く、フェンリル軍の占領地となっている森に移動したらしい。流石に戦争中なので、敵側の領地ではサポートも出来ないので有難い。

 パーミャチが第2軍での愚痴を話していると、ビワとマリーが帰ってきた。


「ただいま!」

「ただいま…」


 どうやら、マリーは相当怒られたらしい。小さい体が、更にしょぼくれてしまっている。


「おかえり、明日は突入するから、マリーもゆっくり休んでくれ。ビワ、怒るのは良いが、窒息はさせるなよ?」


 ビワは明るく返事して、テントの隅に座る。マリーは自分の横に座って、ため息をつく。


「ごめん、ビワがあそこまで本気で怒ったとこ初めて見た。そうだよね、キモイ転生者と戦ってる側なのに、酷い事言っちゃったわ」

「お!?ツンしかないマリーちゃんが、素直に謝った!これは、明日は大降りだな」

「ああ、大降りだろうな!傘を用意しておこう」


 マリーは自分の横腹を殴る。自分は笑って、顔を真っ赤にして、殴り続けようとしてくるのを避ける。

 だが、ルトラも横からいじっているのに、マリーに殴られないのは、何故なのか…


「まあ、別にそこまで怒らないけどね。それより、マリーちゃんが悪い子になった原因はだ〜れ?」


 マリーは黙って、コンプライアンスを指差す。自分は笑顔を貼り付けて、コンプライアンスの目の前まで歩いて行く。


「どうも、エージェント・コンプライアンス。マリーちゃんに何を読ませたんだい?返答次第では、明日のメンバーが1人減るぞ?」


 コンプライアンスは顔を引き攣らせて、首を横に振る。


「私は漫画とラノベ位しかあげてないんだよ!その子の悪い言葉は、私は関係ない!」


 コンプライアンスはそう言い放つ。しかし、直ぐに目を逸らして、申し訳なさそうに、ボソボソと話し出した。


「あー、でも…あの子がなんでもいいって言うからさ…私が読むの辞めたラノベとか漫画とかあげたんだよな。もしかして…その本が悪影響なのか?」


 自分はため息をつく。


「一体どんなのを渡したんだよ…」


 自分は頭を掻く。戦争が終わったら、出版物の規制もした方がいいかもしれない。どれほど教育に悪いのかだろうか。


「一言で言うと…クソつまらないやつ」


 自分はルトラの横に歩いて戻る。そして、ルトラに耳打ちをする。


「マリーちゃんの読む本、検閲した方がいいかも…」

「そ、そうだな…クソつまらないか…気をつけておこう」


 ルトラは苦笑いしながら、マリーの方を横目で見る。もっと面白い本を買ってあげよう。


 明日の予定を決めた後に、早めに眠る事にした。自分は毛布に包まりながら、ウトウトとし始めた。


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