124話 異世界からの侵入者
「いい天気だな。こんな日は戦車の訓練をしたくなってくるな!」
自分は基地の中をぶらぶらと散策する。今日は戦争もお休みだ。魔族からの援軍が本格的に増えてきている為、第7軍は暇を持て余している。勿論、完全に仕事が無い訳では無いのだが、普段より、格段に少ない為、すぐに終わってしまう。
そんな穏やかな連休は、自分には無縁のようだ。
「おう、暇そうだナ。これなら、遠慮なく引っ張って行けるナ!」
聞き覚えのある男の声が、後方から響く。
「あ?お前、なんで侵入できた?許可が出てない奴が侵入すると警報がなるはずだが」
自分が後ろを振り向くと、エージェント・ロストマインドが、ニヤニヤと笑いながら、煙草を咥えている。
「俺はエージェント最強ダ。こんくらい、屁でもなイ」
自分はため息をつく。どの世界でも、最強は面倒臭い奴が多いんだな。ヨルムンとか、ヨルムンとか、特にヨルムンガンド。
「そうか。で、何の用だ?戦いに来たと言うなら、お引き取り願いたいんだが」
自分は銃をロストマインドに向ける。ロストマインドはニヤけたまま、両手を上げる。
「お前の方が、戦いたそうじゃねーカ。俺は暇じゃねーんダ。こんなとこで時間食ってたら、サンクチュアリにキレられル」
ロストマインドは腕を下ろして、自分の前まで歩いてくる。そして、一枚の写真をこちらに見せてくる。
「エージェント殺しを、やっと見つけタ。そして、お前の仲間のオトモダチも、そこにいるんだとヨ。暇なら、手伝いに来いヨ、楽しいゾ?」
自分は低く舌打ちをする。自分を口封じに殺しにかかってきた奴が、目の前でヘラヘラしているのは、気分のいいものでは無い。
「お友達…ああ、パーミャチに良くしてくれた、あの魔法少女の子か。黒白の3人組もいるのか?」
「ああ、首を長くしてお待ちダ」
自分は3人を思い出す。大きいビワちゃん、背高のルトラちゃん、小さいマリーちゃん。久しぶりに会うのもいいかもしれない。
「分かった、場所を教えてくれ。数人連れて向かう」
「お、やる気だナ。前よりは成長したカ?なら、期待してるゾ。ほれ、これが地図ダ」
ロストマインドは地図だけ渡して、その場から溶ける様にいなくなる。こういう超常現象的な奴は苦手だ。テレポートは、神が行使するクラスの能力だ。それをいとも容易くやってのける。
「とりあえず、念の為にヨルムンに連絡、パーミャチにも直接連絡…あまり大所帯で行くと手薄になるし、第7軍からは俺だけでいいか。後は…」
自分はボソボソと呟きながら、部屋を出る。いつ、敵軍が襲撃してくるか分からない。ならば、戦争に関係ないことは、早めに始末しておくのが吉だ。
「すぴー、すぴー」
「ぐー…」
「…」
自分は輸送機の中で腕を組んで、横で眠りこけている、2人の少女を眺める。パーミャチと、ヒュプノスが呑気に寝息を立てているのだ。
最低限の人員で向かう予定だったが、ヨルムンガンドから、ヒュプノスが送られてきた。しかも、宅配便の箱で。
「ヒュプノスって戦えるのか?ヨルムンは安心しろ、って感じだったけど…」
自分は操縦席のカヤに話しかける。
「カヤさん、もう着きますか?」
「ああ、すぐだよ。そういや、ヨルムンガンドが、後ろにいっぱい兵器積んでるから、好きに使えってさ。着く前に見てきな」
「了解でーす」
この航空機は、ヨルムンガンドに借りた物だ。どうせ余計な事したに違いないと思いながら、自分は扉を開けて、後部の格納庫に向かう。
「うわあ」
馬鹿でかい輸送機の後部には大量の兵器が山積みにされていた。しかも、普通の兵器では無く、試作兵器や、ロマンを求めすぎた、ヘンテコな兵器ばかりだ。
その中で一際目立っている物体が、おそらく戦車であろう、布がかけられた物だ。
自分はその布を引き剥がす。すると、中には見慣れた四角い砲塔が見えた。
「KV-1!ヨミの戦車じゃないか、確か修理に出していたと言ってたけど、こんな所に乗せられて、可哀想に…」
自分はKV-1の緑色の砲塔を撫でる。この戦車は相当活躍している筈なのに、人間形態にはならない。ホロたちとは勝手が違うのか、それとも、別種なのか。
元は76ミリ砲が載せられていたが、貫通力が時代にあっていないために、75ミリ砲に換装された。それでも、自動的に対応する砲弾が追加されているらしく、異常性は無くなっていない。
「こんな旧式の戦車が、伝説の戦車として持て囃されるとはなー。やっぱりなんか取り憑いてんだろうな」
KV-1はヨミが車長として乗り込んでいるが、戦果がとんでもない。ティーガー15両、パンター30両、その他の戦車や装甲車500両撃破したと言われている。
ティーガーやパンターは、つい最近砲が強化されてからの戦果だが、旧式のKV-1が出した戦果とは思えない。
「壊したら、ヨミに振られるぞ。これは持ってけないな」
自分はKV-1に布を掛け直して、持っていくのに丁度いい武器を探す。今回は死ぬかもしれない。できるだけ火力が高く、手軽なのがいい。
「ヴァル〜、幽霊状態なら、どの武器がおすすめ?」
自分は色々な銃を持ち上げたり、構えたりして、重さを確かめる。
「んー、能力者相手なら、ショットガンがおすすめだにぇー。魔力を消耗させるなら、面で攻撃出来る散弾が使いやすいにぇ」
ヴァルは意外と真面目にアドバイスをしてくている。自分はショットガンを探して、手に持つ。
「かっけぇな!ショットガンなんてフェンリル軍では採用されてないから、触った事が無かった」
自分は軽く構えてみる。すると、後ろからヒュプノスが抱き着いてきた。
「おお、ショットガンに興味があるの?なら、私に任せなさいっ!」
ヒュプノスは自慢げに、ショットガンの弾をこちらに見せてきた。
航空機は目的地近くの平原に着陸する。
「とりあえず、兵器は全部下ろしておくよ。弾が足りなくなったら、戻ってきてくれ」
カヤは自分達を見送ってくれた。
とりあえず、集合場所に向かう前に、武器を決める事にした。
「はい!これなら、普通の人でも撃てます。それでは、見てて下さいね!」
ヒュプノスは嬉しそうに、ショットガンを取り出す。魔族の領地では、なんだか女の子が好きそう、と言うイメージの物が不人気なようだ。
そして、ヒュプノスはショットガンにハマったらしい。ヒュプノスがショットガンを使うイメージが湧かないが。
「まず、これがシェル、弾。このショットガンは、ここから装填するの!」
ヒュプノスはショットガンをひっくり返して、下の穴から、カシャカシャと弾を込めていく。とても慣れた手つきだ。
「装弾数は6発で、オート。マヤさんは右利きだから、左手はしっかりと下から抑えて〜」
自分は真似して、弾を装填して、構えてみる。やはり、初めて触る銃なので、しっくりこない。
「構えて〜バン!」
言葉通り、バンッ、と言う音と共に、散弾が発射される。自分もトリガーを引いて、発射する。的にしていた木の、表皮が弾け飛ぶ。
「どう?私、ショットガン大好きなの!持ってってくれる?」
自分はショットガンのセーフティをかけて、頷く。
「これ持ってく。短機関銃にしようかと思ったけど、中々に撃ってて気持ちいいね」
ヒュプノスは嬉しそうにしている。
「じゃあ、私もマイショットガンを持って、援護しようかな!」
ヒュプノスは、大きなレバーアクション式のショットガンを背負っている。自分はパーミャチを呼んで、目的地へと歩き始める。




