120話 色欲
「どこも戦闘してるな」
自分は街を1人で走り抜ける。その途中で出会った敵兵士を斬り捨て、撃ち殺す。敵兵士は魔術で攻撃してくるために、多少被弾しても、ダメージは無い。
戦車の車載機銃の方が危険だ。
勇敢にも、目の前に飛び出してきた兵士を1発で吹き飛ばし、自分は前進する。
「でかい魔力が、どっかにいる気がするんだけどなー。どこやろ?」
自分は辺りをキョロキョロと見回す。
この世界で能力者は一騎当千である。能力者と言っても、非戦闘タイプの能力を持つ人間もいるが、ここは戦場。
部隊に配備された能力者は抜群の戦闘力を誇る。
それでも、さらに強い能力者に蹂躙されるのだ。
「おっ、あの塔が怪しいか。数は1つ、おそらく当たり…司令部、こちらマヤ!七元徳らしき反応確認、市街地中央の高い塔。能力者の乱入を阻止してくれ、能力者部隊の移動を!」
「こちら本部、了解。健闘を祈ります!」
自分はマガジンに残っていた弾を、近くに居た敵兵士に撃ち込んで、塔に向かう。
敵戦車はパンター、ティーガー、そして、マウス。ノロノロと前方を走っているのを、ハッチに砲弾を打ち込んで撃破した。だが、流石にコストオーバーらしく、マウス1台しか見かけなかった。
「やっと着いた、やけに敵兵が少ないな。当たりだろうな」
自分は中に入って、階段を上る。人の気配は感じるが、警備の兵が見当たらない。と言うか、一室に固まっている気配がする。
「司令官でも居るのか。だとしても兵士がいないのはおかしいな」
自分はどんどんと突き進んでいく。そしてある部屋の扉の前に到着する。ここだ。
自分はピストルを構えたまま、扉を蹴破る。
「来ましたね!まさか1人で突っ込んで来るとは、舐めれたも…」
自分は容赦なく発砲する。話し始めていた女は慌てて回避する。弾丸は壁に当たって、穴を開ける。
その部屋には、何人もの男達が集まっていた。しかも、明らかに軍人ではない。奴隷達だ。
「何なの、あんた!おほんっ!何なんです、貴方?気が短すぎますよ」
長い金髪の美しい女性であった。美しい容姿で、特に胸が大きい。例えるなら、アダルトな作品のキャラの乳。それくらい大きい。
「お前が七元徳か?さっさと始末したいだが」
自分はピストルを構えつつ、女性を睨みつける。隙があれば、頭を撃ち抜く。
「私は美聖の純潔、ナアマ。私が貴方を罰します」
ナアマは妖艶に笑っている。自分は周りの状況を確認する。奴隷達は捕虜といった感じではなく、普通にそこに立っている。
だが、仲間であるはずの自分に向ける視線は、あまり心地よい物では無い。しかも、男性しかいない。
嫌な予感がする。
「そうか、じゃあ殺す」
自分はピストルをナアマに向ける。しかし、その前を遮るように、男達が並ぶ。やはり、そうか。魅了されている。
「ふふ、この方達は貴方の仲間…どうしますか?」
自分はワンドを投げる。しかし、ナアマは予想していたらしく、男達をすり抜けて飛んでいくワンドを掴んだ。
「ダメですよ、こんな物。さあ、皆さん、あの子を殺してしま…」
自分は目の前の男達に発砲する。2,3人の男が倒れ伏す。自分は邪魔な所に居る男を次々に撃ち倒す。
ナアマは驚いて口を開けたまま、こちらを見ている。
「何で!この人達、あなたの仲間よ!この人でなし!」
自分は黙ってナアマに斬り掛かる。ナアマはギリギリ躱して、飛び下がった。
「お前、俺を正義の味方か何かと勘違いしていないか?人質は選んだ方がいい」
自分は砲を展開しながら、ハンドガンのリロードをする。砲で撃ち込みながら、自分はナアマに近づいていく。
「俺は大切な仲間じゃない限り、踏みとどまりはしない」
自分は盾になろうと、している男をなぎ払いながら、ワンドを奪い返す。ナアマは慌てながら、窓を突き破って外に出る。
自分もそれを追って外に出る。どうやら完全にこちらのペースだ。
まさか、元奴隷達を洗脳か何かして、人質の様に扱うとは、七元徳とは名ばかりだ。
「そもそもまだ他人だしなー」
正義の味方ならば、無実の人を殺すのは躊躇うのだろう。しかし、もう自分は正義を捨てたし、善では無い。
「当たらないか」
ナアマを狙って撃っているが、当たったかと思えば、幻影で位置がズレていたり、そもそも分裂したかのように、二三人見えていたりする。
「焦って能力使いまくってるな。ド素人かよ」
自分はフェンリルの能力を使って、一気に距離を詰める。敵兵士からの対空砲火が飛んでくるが、掠りもしない。
「そこ!」
自分は建物の中に逃げ込もうとしたナアマに斬り掛かる。それも幻影であった。しかし、中から足音が聞こえる。ここに入り込んだのは確かだ。
「絶対に逃がさないぞ。流石に外道行為された事を許した訳じゃねえからなあ!」
中に入ると、何故かそこは平原であった。だが、もう種は分かっている。どうせプロジェクターの様に景色を写し出しているだけだ。
それでも邪魔な事には変わりない。
「こんな時には〜ヴァル!」
自分はヴァルを呼び出す。認識障害、視覚ジャックをされた時には、ヴァルを使えば解決出来る事が多い。
どうやら、ヴァルは自分とは違う次元からこの世界を見ているらしく、この世界の人間用の能力は通用しない事がある。
「見えるにぇー。すごく見えるにぇー!おそらく上の階!」
「よし、ナイスゥ!あの女、セコい事ばっかりしやがって」
自分はヴァルに手を引かれながら、上の階に登っていく。上の階に登ると、平原は消え去った。
そして、目の前に10人ほどナアマが立っている。しかも、一人一人違う事をしている。
「ヴァル、どれが本体?」
「だめだにぇ、あれ実態あるから分からないにぇー!」
七元徳とか言ってる癖に、まともに戦おうともしない。ずっと周りの人間を魅了か何かしながら、生きてきたのだろう。
「どれが本体か分からないのなら…」
自分はカバンから手榴弾を取り出す。そして、ナアマの群れの真ん中に投げる。ナアマ達は逃げ出そうとするが、手榴弾はすぐに爆発する。1人が階段を駆け上がって、逃げ延びたが、他は破片や爆風に巻き込まれて霧散する。
「追うぞ!」
自分は逃げ延びたナアマを追いかける。もう階段は無い、窓以外に逃げ道はない。
「ふう、それでは本気を出しますか。私はわざとこの部屋に逃げ込んだのです。この、私専用の衣装部屋に!」
ナアマはいきなり霧になる。また、視界を遮ってきたようだ。霧が晴れると、そこには水着のナアマが前屈みになりながら、こちらを見ていた。
「ふふ、とても情熱的でしょ?喰らいなさい、神聖な美しさを!」
何となく、自分の周りにねっとりとした空気が流れてきた気がする。どうやら自分に魅了をかけようとしているのだろう。見た目をエロくすれ効果が上がるらしい。
「あー、凄くエロいー(棒)」
自分はそう言いながら歩み寄る。どうやら完全にこちらを、洗脳したと勘違いしているようだ。笑いながらこちらを見ている。
だが!自分は全くエロいと感じない!そもそも巨乳好きでもない上に、知らない女を好きになるわけが無い!
せめて獣耳がついてれば、数秒は迷ったかもしれないが。
「どう?このおっぱい…触りたくない?」
「あー、触りたいなー(棒)」
スタイルだけはいいんだな。中身は性格の悪い痴女だろうが。自分はそーっとナイフを取り出す。
「もう私の虜ね」
自分は笑いを堪える。こいつも運が悪いな。どこも俺のタイプにヒットしていない。喋り方、バストサイズ、中身、獣耳無し。
と言うか、自分が男でなかったら、全く意味をなさない気がするのだが、よく七元徳の地位まで登り詰めた物だ。
ボロクソに言っているが、同じような事をしていたリズを、disってる気がするのでこれ以上はやめておこう。
自分はナアマの目の前に立つ。ナアマは自分が魅了にかかっていると勘違いしている。自分は動きを最小限に、心臓目掛けて、ナイフを突き刺す。
「きゃあああ!なんで、なんでぇぇぇぇ!」
しまった。中心を刺せば良かったな。胸が邪魔になって、上手く突き刺さらなかった。だが、ダメージは入った。
「残念!俺は巨乳好きじゃありませんんん!!ダイエットして出直せ、尻軽女ぁ!腹と胸出てんぞ!」
自分は笑いながら、鋏を構える。だが、ナアマも腐っても七元徳であった。鋏を避けて、その場から消え去った。辺りに風が吹きすさんで窓が全て割れる。
「やっぱり逃げられたか!畜生、ミスったあ!狙い所間違えた!」
自分は空いた窓から、顔を覗かせる。さっきまではわざと追わせていたのだろう。姿が完全に追えなくなった。すると、ヴァルが後ろからポンポンと背中を叩く。
「どんまいだにぇ。私もあの乳もいで欲しかったから残念だにぇ」
ヴァルと2人で、窓の外を眺める。よく考えたら、今の自分、凄くダサい気がする。これからはもう少し冷静になろう。




