表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/190

118話 遭遇戦

 

「おお、もう橋かけ終えたのか。こっちはまだ川すら見えてないぞ」

「とっても早く、終わってしまいました!ヨミさん達は、浅い所を見つけて、渡ったらしいです。マヤさんも、出来るだけ早く超えてください!アッティラ市では総力戦です!」


 自分は了承して、無線を切る。自分達の師団は第6軍とラザフォード達の中間の地点でアッティラ市を目指して移動中だ。途中で、敵の小隊の襲撃に合って少し、遅れている。


「速度上げろ!ここら辺は隠れる所が多い。森から狙撃されるぞ!」


 自分は当たりを警戒しながら、左の森近くの連隊に指示を送る。航空偵察では探しきれない敵が潜んでいる可能性がある。

 戦車に乗っているとはいえ、横から砲撃されればひとたまりもない。自分は広い平原に異常が無いか、双眼鏡で見渡す。すると、遠くに陽炎の様な揺らめきが見える。


「ん、何か嫌な予感だな。こちらマヤ、第3連隊、2時方向に異常現象、警戒しろ!」


 自分はその揺らめきを注視する。段々とその揺らめきは大きく、激しくなってくる。

 そして、空から長い筒が飛び出してきた。それを皮切りに、揺らめきが消え、そこに隠れていた物が現れた。


「やべえ、魔術隠蔽だ!総員、3時方向から敵襲!戦闘準備!」


 主力部隊を襲撃する為に潜んでいたのだろう。敵の戦車部隊が何も無い空間から現れたかのように、数を増やしていく。

 味方の重戦車が停止して、砲撃を始める。早めに見つけたおかげで、側面攻撃をされずに済んだが、ここは遮蔽物も無い平原。頼れるのは装甲だけだ。


「第3連隊の中戦車大隊はそのまま進んで横から回り込め!第1連隊は、5時方向から大きく回り込んで攻撃!」


 自分は手短に指示を送り、今度は自分が所属する司令大隊に指示を送り始める。


「ホロ!前に出るなよ、ここから支援砲撃に徹しろ。アポロ大隊は後方の警戒、スプートニク大隊は、第3連隊の援護に向かえ!」


 既に砲兵達の撃つ、対戦車自走砲の砲声が、鳴り響いている。師団と敵との距離は、約800メートル。ここからだと、約1000メートル。


「よし、1キロ先でも当ててやる!15糎の榴弾、たっぷり味わうといい!」


 ホロは次々に榴弾を撃ち込んでいる。実質SU-152だから、敵に当たれば撃破できるだろう。自分は敵の戦車を観察する。どうやら例のパンターらしい。装甲は本物のパンターとさして変わらない装甲、貫通力は不足していない。


「問題は、あのヤークトパンターだな。何か異様に装甲板が厚そうだ」


 パンターを駆逐戦車に改装したヤークトパンター。だが、敵のヤクパンは周りのパンターよりも、一回り大きい。


「敵の駆逐パンターに気を付けろ!載せてるのは史実通りなら、アハトア…いや、88ミリ!しかも長砲身!下手したら重戦車も正面抜かれるぞ!」


 そう言った瞬間に、FV-4005の砲塔が吹き飛んだ。まあ、装甲ペラペラだから、一撃爆破は仕方ないが、火力が出る戦車が吹き飛ぶのは辛い。


「どうやら、練度はこちらの方が高いようだな。敵戦車の数も減ってきた」


 落ち着いてきた、そう思っていたが、後ろで警戒をしていたはずの、アポロ大隊から、慌てた無線が入ってきたらしい。その声が近くに居た無線手のヘッドホンから漏れてきた。

 そして、無線手はこちらに叫ぶ。


「司令!アポロ大隊が敵戦車部隊を発見!森の方です!」

「了解、反対側か!って、戦車部隊、しかも能力者付きか!?おかしいくらいの軽装の奴らがいるぞ!」


 嫌な予感はしていた。平原に隠れられたのに、暗い森に隠れられない訳が無い。


「ラザ!応答しろ!」

「はい!どうしましたか?」

「敵襲だ、俺が出る。指揮を変わってくれ!」

「増援は必要ですか?」

「いや、こちらに本隊を誘き出す作戦かもしれん。警戒を怠らせるな!」


 自分はハッチを開けて、外に出る。


「アポロ大隊が既に攻撃しているな。パウ!!仕事だぞ!」

「あい。手袋着ける…んしょ!」


 パウも遅れて外に出てきた。敵は名の馳せた能力者には見えないが、こちらも対能力者は自分とパウしか居ない。そもそも、移動中にここまで大規模な戦闘は想定されていない。


「パウ、前に出てくれ、俺は後ろで砲撃する」

「りょーかーい」


 パウは手袋を着け、戦闘態勢に移る。左手にはサブマシンガンを持っている。どこからくすねてきたんだ。


「うぇーい」


 パウは敵の懐に潜り込んで、顎を叩いて頭を吹き飛ばす。自分も縮地しながら、突っ込んできた兵士

 をハンドガンで撃ち殺す。

 戦い続けながら、近くの戦車をワンドで突く。しかし、1人で倒しきるのは無理だ。


「こいつら弱いぞ!」

「でもちょっと硬い」


 確かに砲撃が当たってもピンピンとしている。おそらく魔術防御に特化している。ならば近接で捻り殺す。


「ウルルルアアア!」


 フェンリルの能力を使って近くに居た能力者の頭を掴み、地面に叩きつける。何度か叩きつけると動かなくなった。


「パウ!撤退しろ、敵戦車がすり抜け過ぎだ!俺が殴り殺しておく!」

「いや、もう大分近づいてる」

「うぇ!?」


 自分の知らない内に、何十両も師団の近くにいる。もしかしたら、認識阻害をかけられていたのか?

 いや、そんな事より、もう重戦車が撃たれすぎて、何両か撃破されている。やばい。


「くっそ!」


 間に合わない。アポロ大隊を突破されれば、背中を曝け出した戦車や兵士達が居る。

 自分は、周りの戦車の砲身をへし折りながら、大隊の所に走る。パウも戦車を弾き飛ばしながら、着いてきているが、量が多すぎる。


「終わった…」


 アポロ大隊のすぐ側まで、近づいている。先頭にいたティーガーⅡが、アポロ大隊長の乗るIS-6に狙いを付ける。IS-6はまだ装填し終わって居ない。

 しかし、ティーガーⅡは砲弾を発射する事なく、その砲塔を空に打ちあげた。


「中戦車が砲塔正面抜いたのか?いや、違う。増援だ!」


 ティーガーⅡを撃破したのは、後方から駆けつけた戦車部隊、その先頭にいるセンチュリオンであった。

 その砲塔の上には、マスケット銃を構えた、例の紳士が立っていた。



「うむ、伏兵とは我が輩の予想通りであったな。だが、友軍が殆ど生き残っているのは、予想外だった」


 ジャックはマスケット銃を撃つ。その弾丸は正確に、頭を少しだけ出していた、敵戦車の車長を撃ち抜いた。


「同志諸君、紅茶が冷めぬように、早めに片付けよう。彼にも熱い紅茶を入れてやろう。素人の癖に、頑張っているじゃないか」


 ジャックは静かに笑い、マスケット銃をもう一度撃つ。次は跳弾して、操縦手用の覗き穴に弾が入り込んだ。


「どうだ、美味いか!もっと美味いのを喰らわせてやろう!」


 センチュリオンの砲が火を噴く。このセンチュリオンに載せられた砲は105ミリ。しかも、魔族製改造弾のAPDSを装填している。そのダーツの様な弾丸は王都の戦車を易々と貫く。

 ジャックは1人で戦車から飛び降りて、マヤの方へ走る。



「おっさん、何でここにいるんですか?第8軍は遥か後方で進軍中では?」

「足が速いのだけ集めて、臨時の大隊を組んだ。マヤ坊が心配になってな」


 自分は少し笑ってしまう。意外に仲間思いなのかもしれない。ヒーローは遅れてやってくる、格好良いじゃないか。

 ジャックと共に話しながら、戦車を潰していく。


「とても有難いです。流石にこの量を捌くのは無理でした」

「だろうな。我が輩もここまでワラワラ襲ってくるとは思っていなかった」


 ジャックは襲いかかってきた能力者を、チラリとも見ずに片手で撃ち抜く。


「さっさと片付けるぞ。こんな雑魚にティータイムが邪魔されるのは、気に食わん」


 ジャックはこちらに不敵に笑いかける。自分も笑い返す。


「ティータイムですか?挟み撃ちされていなければ、この程度の敵、弱すぎますよ。紅茶は直ぐに飲めますよ、熱々のを」


 自分はそう言って戦闘に戻った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ