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115話 HappyRebirthday

 

「マヤくん!おっはよう!」

「ん…?ああ、ヨミ。おはよう」


 自分は朝早くに叩き起されて、瞼を擦りながら、ベッドから降りる。いつも自分の方が先に起きて起こしているので、驚きだ。


「ねえねえ、今日は何の日か分かる?」

「んー、えっと。ああ、そういえば、ヨミの誕生日?誕生日って言っていいのか分からんが、一応そういう日だったかな?去年は気にしていなかったけど、よく考えたら、どういう日なんだ?」


 自分は着替えながら、ベットに座って足を揺らしているヨミに疑問をぶつける。ヨミは見た目では分からないが、一応アンデッド、ゾンビ的な女の子だ。

 ゾンビならば、どのタイミングが誕生日に当たるのかが、謎である。


「僕がゾンビになった日なんだって!僕も本当はあまりよく分かってないけどね」


 着替え終わって、自分はヨミと共に食堂に向かう。この時間はまだ幹部のメンバーはおらず、ポツポツと士官達が食事をとっている。


「ゾンビになってすぐに、サタン領の軍に配属されてたんだよね。ゾンビになる前の記憶が無いから、ある意味マヤくんと似たような状況だね!」


「そっかー。あんまりアンデッドを見た事無いから。何故アンデッドになるのか、よく知らないんだよなー」


 自分はヨミと共に、食事を食べ進める。


「うーん、僕も良くは知らないかな。まあ、僕は僕だから、気にしないでも大丈夫!」


 ヨミはパンを齧りながら、自分の方を見つめる。いつもより嬉しそうな表情に、自分も笑みが零れる。


「よし!今日はヨミの為に、いっぱいプレゼントを用意したぞ!目一杯楽しんでくれよ!」


 自分はヨミの頭をわしゃわしゃと撫でる。ゾンビにしてはサラサラな髪の毛が、自分の指の間をすり抜けていく。

 自分は鞄に入れておいた、プレゼントの箱を取り出す。


「ほら、まずはこれ!ある意味手作りだから、1番手間はかかってる」


 ヨミはプレゼントを受け取って嬉しそうに、包み紙を破く。そして硬いケースが中から現れる。

 そのケースの中にはハンドガンが入っている。それを手に取ったヨミは目を輝かせる。


「うおお!リボルバーだー!でっかい!」

「いいだろ!機関銃用の12ミリだ!火力マシマシ、ヨミ専用カスタムだぞ!」


 ヨミはサイトを眺めたり、弾倉をクルクルと回したりしている。


「12ミリ…やっぱり単位統合した方がいいよね!魔族領はマヤくんの世界と同じ単位なのに、フェンリル軍は混ざりあっているのは、ややこしすぎるよねー」


 おっしゃる通りだよ。この弾薬は12モルと書いているのに、戦車の計画書には105ミリと書かれている。


「戦争終わるまでに統合したいな。まだ、生産の方ではモル表記だもんな。ちなみに、俺の世界にもmolって単位はあったんだぞー。説明は面倒いので省略!」


 ヨミは食事を終えて、自分の袖を引っ張る。自分はヨミに着いて走っていく。この施設にある射撃場に向かっているのだろう。


「よし、試し撃ちだー!」


 ヨミは早速と言わんばかりに、的に弾丸を撃ち込む。火薬たっぷりの改造弾は大きな破裂音と共に、的を叩き壊さん勢いだ。

 ヨミは何度も何度も射撃している。


「これは…いい銃だね!反動がヤバすぎるから普通の人は使えないね」

「そりゃ、ヨミが使えるギリギリまで攻めた銃だからな」


 ヨミは嬉しそうに、銃身を撫でる。ヨミはとても喜んでいるが、自分はヨミがまだ満足していない事を分かっている。そう、分かっている。


「次はこれだ!ここに来るとわかっていたから、準備しておいたのだ!」


 自分はヨミが撃っている間に取ってきた、大きなプレゼントの包みを渡す。ヨミは受け取って、すぐに包み紙を開ける。


「わー、服がいっぱい!?かっわいい!」


 その中には様々なジャンルの服を詰め込んだ。ヨミが気に入るか分からないが、普段パーカーっぽい服をずっと着ているので、たまには雰囲気変えてはどうだろうかと、贈ってみた。


「ねえねえ!似合ってる?」


 ヨミは魔女の帽子を被って上目遣いでこちらを見上げてきた。自分は黙って親指を上げ、肯定の意を表す。

 正直言って、このプレゼントはヨミの為と言うより、自分の為だったのかもしれない。

 めちゃくちゃ可愛い。目の前で着替え始めているので、一応目を逸らしておく。別に、下着が見えて、キャーキャー言う程の、初々しい関係ではないが、流石に下着姿を見つめるのは、気恥しい。


「今日は、これ着てみようかな!マヤくん!」


 自分はドキドキしながら、ヨミの方を向く。

 なんと、わざわざ一番奥に詰めておいた筈の、セーラー服に着替えていた。

 ヨルムンガンドが率先して、制作していた学生服セット。ヨルムンガンド曰く、フェンリル軍の正式な制服にしようと、開発したらしい。流石に辞めさせるが。


「お、おう。めちゃくちゃ似合ってる。やっぱりヨミは派手なのより、そういうのの方が似合うな!」


 ヨミは嬉しそうに自分の周りで、歩き回る。喜んでくれているなら、自分は嬉しい。


「よし!次行こうか!一日は短いし、やる事は沢山だ!」


 自分はヨミの手を引っ張って、次の場所を目指す。



 既に日は遠くの山に隠れようとしている。自分はヨミと共に基地の屋根の上で、夕日を眺める。今日は色んな所を連れ回して、色んなプレゼントを贈った。

 他のメンバーも出会う度にプレゼントをヨミにあげていた。今ヨミはカヤから貰った、ちょっとお高めのお菓子をかじっている。


「楽しかった!戦争中なのに、こんなに楽しんでいいのか心配になっちゃうね!」

「ああ、確かに戦争を忘れてしまいそうだな。俺の元世界の戦争よりはマシだからなー」


 自分はヨミの頭を撫でる。


「今日のプレゼントの中で、どれが1番嬉しかった?」


 自分は撫でながらヨミに話しかける。来年の誕生日プレゼントの参考の為にも聞いておきたい。

 ヨミは元気よく答える。


「そりゃあ、今日1日の為に、マヤくんが準備してくれていた事だよ!」


 ヨミは自分に体を寄せてくる。ひんやりとした体温が服越しに伝わってくる。


「僕の為に、マヤくんがここまでしてくれるの、凄く嬉しいんだ。僕の事大事に思ってくれるって証拠だしね!」

「そりゃあ、俺はヨミが彼女だと思っているからな。ヨミもそう思っているといいけど」


 自分はヨミの手を握る。真っ白な肌が、夕日にほんのり赤く照らさている。ヨミは自分の手を握り返して、微笑んできた。


「もちろん!僕もマヤくんの事が大好きだよ!」


 ヨミはそう言ってから俯く。そして、暫くモジモジしてから、自分の目をじっと見つめてきた。


「だから、僕の秘密教えるよ。あまり口外しないように言われてるけど、そろそろ話してスッキリしときたいしね」


 ヨミは髪の毛を掻き分けて、何かを探している。すると、ヨミの頭に何か小さな突起があるのが見えた。


「これは魔王の角なんだ。僕は魔王の死体のゾンビ、それも、嫌われ者の魔王のね」


 自分はその角をぐりぐりといじる。

 ヨミは困った顔で、自分を見上げてくる。


「マヤくん!いじるのはちょっと後にしてよ〜!」


 自分は構わず弄り続ける。


「いや、シリアスな話はヨミにして欲しくないから」


 そういうと、ヨミは声を上げて笑う。ヨミは立ち上がり、自分の前まで来て、正面から抱き着いてきた。


「もう!ちゃんと自分自身で解決したし、暗い話じゃないよ!」


 ヨミは自分を強く抱きしめる。


「それに、マヤくんのおかげで、僕も、死んだ魔王も救われたから!」


 自分は目を逸らす。恥ずかしくて、自分の顔が熱くなっているのが分かる。


「それなら…いいんだけどな。まあ、ヨミが救われたんなら、うん」


 自分もヨミを抱き締める。


「ずっと、一緒にいてよね、マヤくん!」


 自分はヨミの言葉に、深く頷いて、肯定の意を示した。


 次の日、自分はヨルムンガンドと執務室で、グダグダと喋っていた。その途中で、ヨミの前世の話になった。


「ヨミちゃんの体は、元は魔王ハデスの死体ってのは知っとるよね。ハデスは圧政を敷いた魔王として有名だったけど、それが基盤となって、サタンちゃんの領地の安定に繋がったんやよねー」

「サタンって10年前に就任したらしいやん?ヨルムンが今の地位につくより前って事は、ヨルムンより先輩ってことなん?」

「せやで。私8年前位やから、ヨミちゃんの方がこの世界では先輩やな」


 ヨルムンガンドは新型の戦車の設計図を睨みながら答える。


「ハデスはぼっちのまま死んでったって聞いたし、ヨミちゃんも友達はマヤ達と会うまではおらんかったからねー。部下はおったんやけど」

「なるほど。じゃあ、これから1人にならないように、俺がついたらなあかんな」


 ヨルムンガンドは、こちらに向けて親指を立てる。おそらく、そうしてくれ、と言う事だろう。自分も親指を立てて、任せとけと笑う。


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