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114話 ある日の食事

 

 第7軍の基地の食堂で、幹部のメンバーで朝食を頬張る。自分、ヨミ、サヤ、カヤ、グラン、アクケルテ、ラザフォード、ハティ。それに、監視下に置いている、ヨトゥン。

 食べ進めていると、食堂の扉を開けてパウが入ってくる。


「おはよ」

「はい、おはよう。パウ、せめてパジャマは着替えないのか?」


 自分は眠たそうな顔で席につく、パウに話しかける。話し方はヨトゥンの方が子供っぽいが、実は中身の方は、ヨトゥンの方が大人びている。

 パウは見た目はちょっと小さい高校生くらいなのに、やる事は子供っぽい。


「めんどい」

「パウちゃん、ダメだよ!ちゃんと、まじめにしないと、まるのみにするよ!」


 パウはヒェッと呟いて、首を竦める。ヨトゥンが住み着いて3日ほど経つが、意外や意外、めちゃくちゃ扱いやすい。

 言う事はきちんと聞くし、身の回りの事は自分で、全部こなすし、ハティをビビらせて、イタズラの回数を減らしてくれたり、重い荷物を軽々と運んでくれるおかげで、時間が浮いたり。

 大飯食らいと言う欠点もあるが、精々20人前を平らげるだけなので、20人以上の働きをするヨトゥンなら、問題は無い。

 よく考えたら7歳位の女の子が20人前を平らげるのはおかしいが。


「今日は仕事も落ち着いてきたし、ゆっくり話でも聞こうかな。まずはヨトゥン、七元徳って何?」


 ヨトゥンは16杯目のご飯をおかわりしながら、こちらを見てくる。


「いいけど、なかのよくないメンバーの、のうりょくとかは、しらないよ!できるかぎりは、はなすけど」


 パウは黙々と食事を続けている。話すのが下手らしいので期待はしていないが、少しは話してくれると嬉しいのだが。


「しちげんとくは、おうとの、特務騎士団、トップセブンのことなんだよ。べつにつよくなくても、ゆうのうなら、だれでもなれるんだ!」


 ヨトゥンは胸に手を当てて得意げに、話し続ける。


「ちなみに、わたしはつよいからだよ!それで、しちげんとくいがいにも、ヤバいやつはいるよ。そのなも、しんかてんけいぶたい!」


 自分は首を傾げる。


「進化典型部隊?」

「神歌天啓部隊。転生者とかが配属されてる」


 パウが横から説明してくれた。


「調子に乗った能力者達の溜まり場ね。私昔から大っ嫌いだったわ、そいつら!」


 グランも王都出身だけあって、知っていたようだ。グランはイライラしたように、フォークを噛んでいる。


「なんか名前キモイな。狂信者とかわんさかいそう」

「いるよ!しんかきょうとのなかでも、ヤバいやつおおいよ!」


 神歌教徒、国の名前にもなっている国教の信徒達。そこら中に立っていて、フェンリル軍が真っ先に狙われる教会も、神歌教の物だ。

 早めに潰しておくと、転生者が復活できないので、転生者の共通の弱点とも言える。


「パウ達は神歌教徒じゃないのか?」

「違う。胡散臭い宗教嫌い」

「そうだよー!すべてのものは、ローダンセのつくったもの、なんて、ごーまんすぎるよ!」


 ローダンセが主神として崇められてるのは知っていたが、創造神クラスを自称していたのは知らなかった。アマテラスが鼻で笑いそうだ。


「まじ笑える。シバキ回してやりたいよね」


 噂をすれば、天啓来た。アマテラスが頭の中に直接語りかけてきた。しかも、特に意味もなく。



「確かにそうだな!ローダンセを持ち上げすぎるのは気に食わないね」


 カヤもさっさと食べ終わって、話に参加してきている。カヤも出身は王都付近の街の筈だ。何か思う所は有るのだろう。


「それで、これからどう攻めればいいかとか、アドバイスあるかい?」


 自分はヨトゥンに話しかける。ヨトゥンはスープをガブ飲みしてから、ゲップをする。


「げひんでごめんね。んー、そうだねー。かりょくのたかい、へいきをかいはつしたほうが、いいよ!アードルフは、いっぱいヨルムンガンドの、ぎじゅつを、ぬすんできたからね」

「なるほど、やはりアードルフが曲者のようだな。…そういや、グラン?アードルフの事何か知らないのか?」


 グランは首を横に振る。


「七元徳って王族の警護とかしてるんだけど、私は伊智代がついてたし、あんまり他と関わりが無かったのよねー」


 やはり伊智代さんは七元徳だった。フィアットは辞退したのか知らないが、七元徳では無かったらしい。


「グレイプニルにはヨトゥンと純潔、スルトには寛容と慈愛、フレイヤには忠義と分別だったっけなー。忠義、アードルフって言ってたけど、いつも見ていたのは、影武者だったのかなー」


 そういえば7人いるんだったな。しかも補充される可能性がある。増えないとしても、後4人。先は長そうだ。


「うーん、他は本人達に聞くかな。…アードルフについてはエウスはそこまで深い事は知らん、と言ってたから結局謎だな。子供の頃から気持ち悪い男だったってよ」


 自分は腕を組んで頭を悩ませる。アードルフはいつも笑っていたらしい。エウスが見ていたのも、薄ら笑いか、微笑みか、卑しい笑いか。喜怒哀楽の怒哀を失ったような男らしい。


「そういえば、ヨトゥンさんは節制でパウさんが勤勉って言ってたっすよね?…どこにもそんな要素が見当たら無いっすけど?」


 アクケルテは恐る恐る話しかける。ヨトゥンは珍しく自分から話し出した、アクケルテを見つめる。アクケルテはすぐに目を逸らす。


「うーん!まったくもって、はんろんのよちなし!どちらかといえば、まぎゃくだね!」


 確かに節制と言うには食いすぎ。勤勉と言うにはだらしな過ぎる。


「どうせ決め方適当だし」


 パウは目玉焼きを、つんつんつつきながら、ため息をつく。口の端にはスープの跡が残っている。

 ラザフォードが横からナプキンでそれを拭き取る。


「もう!貴方まで適当になる必要はありませんよ!」



 皆が黙って食事を平らげていると、いきなりハティが立ち上がって、叫ぶ。


「ご馳走様!遊んでくる!」


 ハティは扉を開けて走り去った。ヨミも立ち上がって追いかけ始めた。


「こら!またイタズラするつもりでしょ!これ以上やったら僕がしばき回すよ!」


 ドタバタと走り回る音は暫く、基地内に響き渡った。食堂内で笑いが起きる。まさにドッタンバッタン大騒ぎと言った所だ。おかしな子だらけだが、自分は楽しくて好きだ。

 と、言いたい所だが、正直手に余る。誰か助けてくれたら良いのだが、カヤは頼りになりそうに見えて、面倒事からは逃げるタイプだ。

 しかも最近テレポートを覚えたせいで逃げ足が早くなっている。


「主人様、お代わりいかがですか?」

「そうだね、スープ1杯貰える?」


 サヤは真面目で仕事も早いが、躾コマンドが、首を斬る、腕を斬る、足を斬る、胴を斬る、の様な子なので、ハティの世話には向かない。


「食べ終わったら、さっさと仕事始めるか。皆、今日も頑張ってくれよ!」


 自分はスープを飲み干して、食堂を出る。第7軍の軍人達が廊下を早足に通り過ぎていく。



 同じ時刻、王都ではとある事件が起きていた。


「アードルフ様、我らエルフ軍はローダンセ様の為に、命を懸けて戦う所存です!」

「そうか!わざわざ王都まで御苦労。主神もさぞ

 お喜びであろう!神歌王国は暖かく迎え入れよう」


 美しい顔立ちをしたエルフの王は、アードルフの前で膝を着く。落ち着いた表情をした、その心の内では、笑いを堪えるのに必死であった。


(王都は人間が殆どだが、人が減っている今、エルフが王都に流入すれば、一気にエルフの人口は増えるだろう)


「ありがたき幸せ」


(エルフの人口が増えれば、私の地位も上がる。行く行くは、この大陸の半分をエルフの物に、なるに違いない!いや、して見せるとも!)


 アードルフは嬉しそうに、エルフの王が引き連れてきていた軍団を眺める。百戦錬磨の弓兵達が、美しい金髪を光の反射で輝かせている。


「それで、エルフ軍は誰が指揮すればいいのかね?」


 アードルフはエルフの王に近づいて尋ねる。


「私が指揮致しましょう!エルフの事を1番よく知っているのは、私であります!」


 アードルフは笑みを浮かべたまま、腰から何かを取り出した。


「エルフは神歌王国の傘下に入る。間違いないかな?」

「ええ、神に反する犬共を根絶やしにしてみせましょう!」


 エルフの王は自信満々にそう答える。アードルフはエルフの王の頭に、先程取り出した物を突きつける。それは大きな銃であった。エルフ達は銃をよく知らなかった。

 エルフの王は訳の分からないような顔で、アードルフを見上げていた。


「1つ言っておこう。指揮するのは君ではないぞ」


 火薬の破裂音と共に、エルフの王の頭に大きな穴が空く。エルフの軍団は、エルフの王の死体が地面に音を立てて倒れたのを見て、やっと状況が分かったらしく、悲鳴を上げる。

 アードルフは笑ったまま、エルフ達に話しかける。


「諸君らを歓迎しよう!今、種族は関係ない。自由の為に戦おうじゃないか!」


 エルフ達は黙って立ち竦んでいる。アードルフは微笑みを浮かべたまま、まだ硝煙の匂いが残る銃を撫でる。


 狂気が向けられるのは、敵だけではない。


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