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108話 不幸な転生者

 

 アクケルテは艦内を銃を構えたまま走り抜ける。

 能力者との戦闘は日常茶飯事であるが、狭い通路での戦闘を得意としないアクケルテは、この状況に焦っていた。


「どこから上に上がればいいんすか…もう、地図とか壁に貼ってて欲しいんすけど!」


 アクケルテは上で戦闘が始まっているのを感じながら、道に迷っている。アクケルテは重度の方向音痴であった。

 現に、このフロアからずっと抜け出せていない。


「あ、アクケルテさん!上へどうやって行くのか分かりますか?」


 もう1人方向音痴がいた。ラザフォードは何やら大型のライフルのような物を抱えながらアクケルテの方へ走ってきた。


「あー、実は俺も迷ってる最中なんすよ。この船広すぎるっすよ!」

「すごく分かります!今自分が何処に居るかさえ分からなくなります!」


 アクケルテとラザフォードは合流して走り出す。しかし、方向音痴が2人集まっても方向音痴である。いくら走っても、階段すら見つからない。

 それもそのはず、2人は同じ道をぐるぐると回っていたのだ。

 そんな事を分かっていない2人が走り続けていると、たまたま敵の能力者と鉢合わせた。中に入っていたアキトだ。


「おっ、敵の戦闘員か!俺がここで倒せば、もしかしたら俺が七元徳になれるかもしれないな!」


 転生者であるアキトはアクケルテ達を見て嬉しそうにする。アキトは障壁を貼って、アクケルテ達に向かい合う。


「俺の能力、スーパーバリア!お前ら反逆者達は俺が倒す!」


 アクケルテとラザフォードはアキトを見て笑う。


「なんすか、いきなり出てきて、スーパーバリア?能力名なら安直すぎるっす!」

「それ名前つける必要ありますか?能力だったらもっとスタイリッシュに名前をつければいいんじゃないんですか!」


 アキトは笑われて顔を真っ赤にする。多分本人も気にしてはいたようだ。

 ラザフォードはひとしきり笑ってから、手に持っていたライフル砲をアキトに向ける。


「ラザフォードさん、この人で私の兵器のプレゼンをさせていただきます!」

「おお、いいっすね!そのライフル砲って最近開発された携帯対戦車砲っすよね!見てみたいっす!」


 ラザフォードとアクケルテが嬉しそうに話しているのを見て、今度はアキトが笑いだした。


「俺のバリアをそんなちっこい銃で割ろうとしているのか?舐められ過ぎだろ!」


 アキトは相当自分の守りに自信があるらしく、高笑いし続けている。ラザフォードは気にせずに、ライフル砲のセーフティロックを解除する。

 そして弾が入っているのを確認して、しっかりと構える。


「弾薬は25ミリで、海軍の機関砲用の弾を改造しています。元はとてつもない反動のせいで誰も撃てない代物だったんですが、逆方向に魔力で力を加える機構を搭載しているので、ギリギリ普通の人間でも撃てます」


 アクケルテは長い砲身をジロジロと眺める。この距離で使う武器では無い。アクケルテは自分も銃を構えて、ラザフォードに話しかける。


「じゃあ、一緒にあいつを撃ち倒すっすよ!いい感じだったらマヤさんに直談判するっす!」


 ラザフォードは狙いをつけて直ぐにアキトに向かって発射する。アキトはドヤ顔で手を翳す。その手の前に薄くバリアが展開される。

 弾丸はそのバリアで勢いを落としたものの、爆音と共に叩き割ってアキトに直撃する。


「ぐほあ!」


 アキトはそのまま廊下を吹き飛ばされて壁に直撃する。ラザフォードは手動で排莢して、新しい弾を装填する。


「いい貫徹力でしょう?貫徹力だけなら75モル砲クラスなんですよ。ただし口径が小さいので、遠距離は狙えません」

「良いっすね!中戦車程度なら楽々貫通できるっすよ!」


 ラザフォードはもう一度アキトに狙いを定める。アキトは慌てて、その場から逃げ出そうとする。

 少し逸れた砲弾はアキトのバリアを本人と共に吹き飛ばす。ラザフォードは再装填しながら、アクケルテと共に後を追う。


「あっ、外への通路!」

「やばいっすよ!逃げられます!」


 アキトは既に手摺から降りて、地上に向かっていた。アクケルテは上から弾丸をばら撒く。

 しかし、貫通力の低いアクケルテの弾丸はアキトにダメージを与えられない。


「逃がさない!」


 ラザフォードはライフル砲を発射する。しかし、流石に高速で落下するアキトに当てる事は出来ず、アキトは無事に地上に辿り着いた。


「ふう、危ない所だった。あの距離でバリアを破ってくる敵に勝てるわけがない!」


 アキトは無事に地上には降りられた。降りられただけだ。


「転生者…転生者…転生者ぁアアア!」


 アキトの上をフェンリル軍の爆撃機が通り過ぎる。そこから1人の男がアキトの目の前に降り立つ。

 第2軍司令官カイン。カインはマヤ達の思っていたよりも、精神に異常を来たしていた。


「カ、カ、カイン!?」


 アキトはその異常さに驚く。

 アキトとカインは王都で出会ったことがある。その時のカインは調子に乗った転生者の立ち振る舞いをしていた。だが、色々な出来事がカインを変えた。


「アキトだっけ?…殺す」


 アキトは立ち上がってバリアを展開する。


「ちょっと待てよ!俺はもう戦う意思は無い!お前に勝てる気がしないからな!」


 アキトは震えながら、一歩づつ後ろに下がる。


「確かお前は雑魚狩りが得意だったよな。うちの兵士もいっぱい殺したんだろうな。いいよな、お前は敵を殺せばいっぱいいっぱい褒めてもらえるんだもんな。お前は頭空っぽで人殺ししてもいいんだよな」


 カインは話しながら、鞘から剣を抜く。


「俺は褒められないぞ。正義なんてクソ喰らえだ」


 カインはブツブツ呟いて、アキトに向かって歩み寄る。その目は真っ直ぐにアキトを見つめている。しかし、光は見えない。


「敵の転生者を鏖殺する。戦争に参加した奴は鏖殺だ。それだけでいい」


 カインの剣はギラギラと太陽の光を反射する。アキトは武器の大剣を取り出した。しかし、手が震えているためか、ガタガタと情けなく構えている。


「待ってくれ!こ、殺さなくてもいいだろ!ほら、と、投降するから!」


 アキトはゆっくりと剣を地面に置く。しかし、カインは目もくれずに、進んでいく。


「皆殺しだと言ってるだろ。敵の転生者は全員俺が殺す」


 カインはアキトに飛び掛る。剣がバリアに触れた瞬間に、剣から異常な程の魔力が吹き出る。その魔力に押し潰されるようにバリアは消し飛んだ。

 アキトは慌てて剣を握って防御する。剣と剣がぶつかり合って甲高い音が響き渡る。


「俺は前よりも強いぞ、バリア男!」


 カインは手を翳して魔術を発動する。手の先から霧のような物が出て、アキトの顔にかかる。

 アキトはかかった瞬間に叫び声をあげて飛び上がった。カインはアキトを貼られたバリアを叩き割って蹴り飛ばす。


「痛い!いだい!」


 アキトは目を抑えて叫ぶ。カインは歩いてアキトの目の前に立つ。


「地獄で再会しよう。そして、地獄でも殺す」


 カインは剣をアキトの腹部に突き刺す。アキトの叫び声が辺りに響き渡る。カインは剣を抜いて、今度は首に突き刺す。

 今度は大きな叫び声は上げられなかった。カインは何度も何度も殆ど動かなくなった体を突き刺し続ける。

 直にそこには人の形をしていない肉片が転がっているだけであった。

 カインは剣に着いた血を拭って鞘に収める。そして転がっている肉をちらっと見てから、何も言わずに歩き出した。


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