表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

すきま

作者: ヴルペル

いつもと同じ風景。いつも気にも止めていない場所に目を向けてみたら違うものが見えるかもしれませんよ

いつもの駅

いつものホーム

いつもの電車

だが、その日はいつもと違った


挿絵(By みてみん)


ーーーーーー。


「早く起きないと遅刻するわよー!!」

勢いよくカーテンが開けられる。眩しい光が私の目に射し込む。うるさい鳥のさえずり。なかなかあかない(まぶた)


「んんーもうちょっと……あと5分……」

「あんた今日朝練だから起こしてくれって言ったのは誰よ!!」

「んんー???」

なかなかあかない(まぶた)を擦りながら時計を見る

「んん!?」

電車の発車時間が迫ってきていた

「なんで早く起こしてくれないのよ!!あー!もう!遅刻しちゃう!」

「私はちゃんと起こしたわよ!」


ふんっと鼻を鳴らしお母さんは部屋を出ていく


私は大慌てで制服を着て時間割の確認を済ませる

食パンにジャムをつけ(かじ)りながら天気予報をチェックすることは(おこた)らない


「今日は晴れか……」

口に無理やり食パンを押し込んで牛乳で流し込む


「今日はお母さん帰るの遅いから戸締りちゃんとするのよ」

「はーい!わかったよー!」


鍵をカバンの中に投げ入れる

「それじゃ!行ってきまーす!!」

「行ってらっしゃい」


かかとを踏みながら慌てて家を出る

あと5分!間に合えー!!!

家から駅はそう遠くなく、歩いて7分くらいのところにあった


慌てて定期券を取りだし、改札を通る


「よし!電車まだ来てない!間に合ったー!」

ほっと胸をなでおろし電車を待つ

挿絵(By みてみん)

すると、急にベンチに座っていたおばあさんが話しかけてきた

「学校に行くのかい?まーこんな早い時間から頑張るねぇ」


にこやかに声をかけられ、つられて笑顔になる


「はい!今日部活が朝練なので早起きしましたよー!」

「いつもは午後練なので朝起きるの大変で!つい寝坊しかけちゃいましたー!」


照れ混じりに会話を続ける


「まー!そうなのねー!朝から元気をもらってうれしいわぁ!」

おばあさんはしみじみと言った


他愛もない会話を続けていくうちにおばあさんと前も話したことがあるように感じるほど話が弾んだ


「そろそろ電車が来るわね」

「え?」


電車が来るメロディが駅に響く

「この電車は○○行きー。○○行きです。黄色い線まで下がってお待ちください」


「あ!ほんとだ!」

「おばあさん!沢山話してくれてありがとうねー!!」

「こちらこそ。久しぶりに楽しい会話だったわ。夜に気をつけてね」

改めておばあさんにお礼を言おうと振り返るとそこにはおばあさんはいなかった


「おばあさん電車を待ってたんじゃないのかな?」

きっと帰ったのだろうと思い席に座った

流れるいつもの景色が窓いっぱいに広がる

(この景色。初めは田舎臭いと思ってたけど慣れたら落ち着くなぁ)

穏やかな気持ちのまま電車に揺れる


電車が駅に着いた

改札を抜け学校に向かって走る


ーーーーーーーーーーー


「もー!!!!!午後練もあるなんて聞いてないよ!!」


朝練を終えた私はへとへとになって教室へ帰ろうとすると部活の先輩から午後も出るよね?と言われてしまった

そのまま放課後練習をしていて時間が過ぎ、日も暮れていた


「汗ベタベタだし…帰ってすぐシャワー浴びよ…」


改札を抜け電車を待つ

「次の電車は何時だっけな………ゲッ…最悪……あと1時間もある…」

さすが田舎の電車……

1時間に1本という噂は本当だったのか…


1時間ずっと待つのも暇なのでホームを散歩することにした

「へー!こんな所に草生えたりするんだ!どうなってるの!?」

真新しい発見が多く、時間を潰すには絶好の機会だった

「ちっちゃい花もある!かわいい!あ!こんなところにも!」

はしゃぎながらホームを散歩していた時

背後に何かの気配を感じた


振り返ると何も無い……

何も無いが……

何か嫌な予感がした私は大人しくベンチで待つことにした


「うー!!早く電車来て……」

心臓の音が聞こえてくる

感覚が研ぎ澄まされていくのがわかる




〜♪

電車が来るメロディが鳴る

音が(かす)れているのはきっとこの駅が古いからだろう


「やっと来た!」


ベンチから立ち上がり扉が開く位置に移動する

さっきから寒気が収まらない

どんどん背筋が凍るような感覚に襲われる


プシューッ

「ドアが開きます。ご注意ください」


私は乗り込もうとし、足を伸ばした

だが、伸ばしたはずの足は1ミリも動いていなかった

「え…なんで?」



動けない…

動けない…!

動けない!

動けない!!

なんで動かないの!?



恐怖で頭が塗り替えられていく

まるで…誰かに足を押えられているよう…な……


ゾッ……

気にし始めたら怖い想像が止まらなくなる

もし、掴まれていたら

もし、本当に足が掴まれていたら

その考えが溢れて止まない


私は気になってつい足元を見た

見てしまった


挿絵(By みてみん)


足元にいた"それ"を……


白く血の(かよ)っていない肌

細く伸びた無数の指が足を掴んでいた



「…………!」

声にならない叫びをあげる


動かそうと試みるがどうしても動かせない

頭が真っ白になり血の気が引いていく感じがする

右足が……動いた

動かされた…

どんどん引きずられていく

「……ひっ……い…いや…いや……」


意思とは関係なく引きずられていく足

右足の次は左足

左足の次は右足…と

交互に引きずられていく


ーーーー黄色い線をまたいだーーーー


止まらない…

止まらない

止まらない

止まらない

止まらない

止まらない

止まらない

とまらない

とまラない

とまらナイ

トマラナイ




遂に電車の前まで引きずられてしまった

耳鳴りが響く

鼓膜全体が呼吸をして心臓が跳ね上がる

囁きかけてくる声が絶え間なく襲ってきた


「オイデ……ォィデ……」


「たノ…死ぃ夜」


「ぁ…ナたも……コッチに…ぉィデ」


無数の手が一斉に伸びてくる

暗闇に浮かぶ無数の目と目があってしまった

ニヤニヤと薄気味の悪い笑みを浮かべてこっちを見ていた


「ォイデ……ぉイデ」


力強く足を引っ張られる


「い…や!いや……!ぃゃ……!!」









「間も無く、電車が発車死ます。黄色ぃ線までぉ下がり下さい」

読んでいただきありがとうございます。これは私が登下校中怖いなと思ったものを参考にしました。普段何気ない場所も夜になると雰囲気が変わったり。近くの公園から物音が鳴ったり。気になりますよね。何気ない場所にも目を向けてみるとなにか見えてくるかもしれませんよ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] イラストついてて、すごいですね! 読みやすかったですし、怖くて面白かったです(*^^*)
2020/07/10 11:47 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ