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今はいない大切な君への贈り物  作者: 宮久啓平
70/71

ーエピローグー ①

―エピローグー


 ―数日後―


もう迷いはない。


「僕も、ともみのたくさんの笑顔のおかげで幸せでした。

本当にありがとう。

でも、ともみと結婚できません」


ともみは屈託のない笑顔で、両手を差し出してきた。

いつもとは違い、麦わら帽子を被っていないので、

その表情もはっきりと分かる。


僕はその小さな手を優しく握り締めると、

あまりの湿っぽさに驚いた。


「やっと言ってくれたね。

何十年待ったと思っているの」

ともみはほっぺを膨らました。


思わず下を向いてしまった。

何十年も緊張して待たしてしまった申し訳なさと、

あまりのかわいさに。

やっぱりかわいいと思ってしまう僕がいる。


「渉君」


その声で顔を上げると、

夕陽がカリブ海に沈んでいく景色に変わっていた。

ともみは僕の手を放し、微笑み掛けてくる。


「ちはるちゃん、渉君と同じ事言っていたね」


「そうだね」


ちはるは車の荷台の上で、僕と同じ将来の夢を語った。

僕と同じように見て感じてくれたと分かり、

嬉しくて笑ってしまったのだ。


「それからね、昨日桜が言っていたよ。

『やっと吹っ切れた。これからは容赦しない』って。

渉君大丈夫?」


「大丈夫、僕も吹っ切れたから」


 桜とちはるには、「ともみは大事な人」と言ったが、

実際はそこまで割り切れていなかった。

心のどこかで大切な人になっていた。

たぶん桜もそれに気付いていたのだろう。

僕に対してずっと遠慮していた

。だが、旅行中桜とちはるを見て、

何が大切で何が大事か改めて確認できた。


そして、ちはるのあの言葉のおかげで完全に吹っ切れた。

わが子に教わるとはこういう事を言うのだろう。


「ともみ、ごめん。

遅くなったけど、ようやく一つ、いや二つお願い事叶えられたよ」


「知っているよ。

渉君とこうして向き合っているから。

でも遅すぎだよ」


 ともみはほっぺを膨らましながらも嬉しそうだ。


「だから、渉君に新しいお願い事を言うね。

桜とちはるちゃんを幸せにしてね。

大切な人と大事な人をはき違えたらダメだよ」


「参ったな」


僕はまた下を向き、

頭を掻きながらともみには叶わないなと思っていると、

ともみの顔が覗き込んできた。


「渉君信じて。渉君自身を。

そして桜とちはるちゃんを。

私、ずっと見てきたから。

そしてこれからもずっと、ずっと見ているから」


ともみはそのまま一歩ずつ後ずさり、カリブ海の上に立った。

僕には見えない道がともみには見えているようだ。


そこには昔と何も変わらないともみがいる。


僕は大きく手を振り、

「ありがとう」と叫んだ。


ともみも屈託のない笑顔で大きく手を振った。


「ありがとう」


僕に背を向け、僕には見えない道を、

夕陽に向かって堂々と歩いて行った。


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