ー渉ー ㊺
「ごめん。急用が入ってしまった。
旅行の事は今度話そう。
後何か好きなもの食べてから帰って。
私からのせめてもの礼だと思って」
先生はそう言うと早足でレストランを出て行った。
「渉、せっかくだから食べて行こう」
桜は早速メニューを開いている。
僕達はパンケーキ二つと紅茶のおかわりを追加注文した。
「渉、挙式の件どうなっているの?」
「これでどうかな?」
僕は携帯の画像を選択し桜に差し出した
。画像には僕が考えたプランの流れが書いてある。
あの日からいろいろ調べて、
僕なりのプランを作っていた。
自画自賛だがよくできていると思う。
「渉らしくていいと思う。衣装と指輪はどうするの?」
「衣装はマヤの民族衣装にしようと思って。指輪は……」
携帯の画像を横にスクロールし、
ココナッツピアスの画像を見せた。
「これピアス?かわいい。
渉、私のお土産これでいいよ」
桜は画像を見ながらはしゃいだ。
「携帯は持って行くの?」
「持って行かないよ」
「じゃあ、必要なものはiPodに
長いイヤホンでいいんだよね」
「それで足りるはず」
「楽しみだね。ともみどんな反応するかな?」
パンケーキと紅茶が運ばれてきたので、
とりあえず一口放り込む。
「で、私は何をすればいいの?」
「えっ、特にないよ。洸平と文太に頼んだから」
桜は持っていたホークを置き、
僕の顔を笑顔で覗き込んできた。
「手伝わせろ。
これはお願いじゃなくて、命令だからね。後麻里と恵理子も」
桜の瞳が黒光りしていた。
桜はいつの間にか怒鳴ったり、
暴力を振るわなくなっていた。
その代わりに笑顔で物事を訴えるようになり、
その表情は以前よりも凄味が増していた。
「そんな事言われても特にやる事ないし」
「もう一度言うね。手伝わせろ。
手伝いを拒否するなら私もベリーズに付いて行くからね」
こうなっては断ることができない。
もし断ったら桜は本当に付いてくるのかもしれないのだ。
「分かった。洸平達に相談してみる」
僕はため息を漏らした。
「そのため息は何?
もしかして迷惑?
別に手伝わなくてもいいんだよ。
どうなるか知らないけどね」
「よろしくお願いします」
僕は残ったパンケーキと紅茶を無理やり胃に流し込んだ。
桜は上機嫌でパンケーキを頬張っている。
僕は外の景色を見ながら心の中でもう一度ため息を漏らした。
12月22日
今日はベリーズに行けるかの最終判断の検査だったよ。
渉君が一緒にいたからかな?
今までの検査の中で一番緊張したよ。
結果は「気を付けて楽しんでおいで」だったんだ。
思わず先生に「何それー」って言っちゃった。
これで文句なしで行けるね。
12月24日
今日はクリスマスイブ。
渉君の家に招待されました。
おいしかったなー、チキンにケーキ。
夜はね、荷物の最終確認をしたんだよ。
渉君もう行けるって張り切っていたね。
早く行きたいな。
12月27日
いよいよ明日出発です。
私と渉君は実家にいます。
パスポートも受け取りました。
明日出発してアメリカに一泊したらベリーズだね。
本当に楽しみです。
ただ一つお父さんが
「チケットがほしかったら、この麦わら帽子を被れ」
って言うんだよ。
どう考えたって似合わないよ。
渉君は「似合っている」って言っていたけど騙されないからね。
一応持っていくよ。
でも被らないからね。
後お父さんに渡しておいた何枚かの日程表が、
見違える程立派になって返ってきたんだよ。
お父さんありがとう。
私達が行く場所いろいろ調べてくれたんだね。
緊急連絡先もわざわざ電話して、
お願いしてくれたんだね。ありがとう。
私達思いっ切り楽しんできます。
お土産話し楽しみにしていてね。
12月29日(30日)
私はベリーズにいるよ。
念願だった、夢だったベリーズにいます。
第一印象はとにかく暑いです。
それに思っていたよりも紫外線が強くて、
嫌だった麦わら帽子ずっと被っているよ。
お父さんありがとう。
まずね、空港からバス乗り場までタクシーで行って、
途中海が見えたけど、汚かったんだ。
せっかくのカリブ海なのに残念です。
そこからバスでシュナントニッチに行きました。
シュナントニッチを見て、カハルペッチに行ったんだけど、
もう閉まっていたんだ。
弾丸ツアーはやっぱりダメだね。
向かいにあったホテルすごかったなぁー。
本当は泊まりたかったけど、仕方ないよね。
でも泊まりたかったなぁー。
夕食は宿から少し離れた店で食べたんだよ。
ライスアンドビーンズおいしかったよ。
また食べたいな。
後ね、宿シングル二つで予約したはずなのに、
ダブルが一つの部屋だったんだ。
渉君が「部屋変えてもらおうか?」
って言っていたけど断っちゃった。
渉君と同じベッドで寝たかったから。
それからね、「挙式の準備」って宿から出て行ったんだ。
お願いした日以来一度も口にしなかったから
忘れていると思っていたんだよ。
でもちゃんと覚えていてくれたんだね。
ありがとう。
十分くらいで戻って来たけど何の準備だったのかな?
いつどこでどんな挙式にしてくれるのかな?
楽しみに待っています。
明日も楽しもうね。
12月30日(31日)
今日はマヤ村にいるんだよ。電気ガスがない生活。
貴重な体験をしているよ。
マヤの子供達かわいいよ。
川のお風呂に入ったり、
ハンモックで寝たりいい体験をしているよ。
ノートを破って鶴を折ったけど
みんなそれで喜んでいたんだよ。
今度はないけど、ちゃんと用意しなくちゃだね、折り紙。
それからね、星が本当に綺麗なんだよ。
流れ星見放題。
いっぱいお願い事ができるんだよ。
みんなのお願い事いっぱいしちゃった。
叶うといいな。




