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今はいない大切な君への贈り物  作者: 宮久啓平
26/71

ー渉ー ⑲

「僕達も付き合う事になりました」


しばらくの沈黙の後、「えー」と思わず叫んでしまったが、

僕だけではない。

洸平と麻里以外の全員が思い思いの言葉を口走っていた。


「ごめんね。もっと早く報告する予定だったけど、

ともみと渉がはっきりしないから、このタイミングになっちゃった」


「いつから付き合っているの?」


「一昨日から」


「彩佳は?」


「ゴールデンウィークの前の日、みんなと別れた後に別れた」


「なんで俺達に報告しなかった?」


「渉が告白したっていうラインの後にできるはずないだろ、

それにともみとの初デートだって何の報告もなかったし」


「そういう事。

ともみがうじうじ小さい事で悩んでいるからいけないんだよ。

洸平からともみと渉が付き合い始めたって聞いていたけど、

私達に何も言わないんだから。

休み明け話しがあるってラインが着たけど、

どうしようかと思っていたんだよ」


「ごめん」


「ともみ、この件は謝らない約束でしょ」


「そうだったね」


「そういえば、何で四人は遅れて来たんだ?

ともみの左頬赤かったし、これと関係しているのか?」


「関係ないよ。

ゴールデンウィークの話ししていたら遅れちゃった」


そんなはずない。きっと麻里が言っていた

「ともみがうじうじ小さい事……」で遅れたのだろう。

しかし、これで何の心配もなくともみと付き合えるのだから

追及しても仕方ない。それにしても洸平と麻里には驚かされた。

まさか付き合っているなんて、

今日洸平の様子がおかしかったのも納得できる。


「それよりさ、ともみと渉は放課後空いている?

もしよかったら一緒に縁結びの神社にお詣りに行かない?」


今どき付き合い初めで神社に行くのは古臭い気もしたが、

ともみと一緒にお詣りできるなら願ったり叶ったりだ。


「僕は行けるけど、ともみは?」


「私も行けるけど、どうせ行くならみんなで行こう。

縁結びは恋人のためだけじゃなくて、

みんな平等にある事だと思うから」


「ともみ偉い。そうだぞ麻里。

幸せな連中だけでお詣り行ったって仕方ないでしょ、

私達も連れていけ」


恵理子も桜に続いて野次を言っている。

確かにともみの言う通りだ。

縁結びとは恋人のためだけではなく、

みんな平等にあるものだ。

それに僕達七人も立派な縁で結ばれている。

ともみと一緒にいるだけでいろいろな事に気付かされる。


「分かった。みんなで行こう。文太はどうする?明子も誘う?」


「いいや、七人で行こう。

渉とともみ、洸平と麻里の記念日だからな」


「じゃあ決まりだね。七人で行こう」


「ところでさ、その縁結びの神社ってどこにあるの?」


「文太そんな事も知らないの?城前通りの橋の所にある神社だよ」


麻里が説明している間に呼び鈴が鳴った。

あのカエルさん通りの神社が縁結びの神社だとは知らなかった。

あの時すでに結ばれていたのかもしれない。

このバックにぶら下がっているカエルが結ばれた証拠かとも思う。


「じゃあまた放課後」


桜はそう言うと、ともみ達と先に校舎に向かって行った。

僕達はともみ達の背中を見送っていた。

お昼休みの前とは違い清々しい気分だ。放課後が待ち遠しい。


「とりあえず、渉、洸平おめでとう」


「あぁ、ありがとう。それに何も言えなくて悪いな。

全部渉とともみが悪いんだけど」


「ごめん」

「謝んなよ。それに全部丸く収まったからいいだろ。

それよりも文太、無理やり誘ったみたいで悪いな」


「気にするなよ。

何となく七人で行くべきかなって思っただけだから。

明子にはうまく言っておけば大丈夫だと思うし、

それよりも洸平君お手が早いですねー。

いろいろと事情聴取が必要だと思いますが、

どう思いますか、渉君」


「文太君、その通りだと思います。

明日は僕達が遅刻する必要があると思います」

僕と文太は洸平の顔を覗き込んだ。


「おいおい勘弁してくれよ。

渉とともみがはっきりしたら報告するつもりだったから、

明日ちゃんと話すよ。それよりも教室に戻ろうぜ。遅刻しちまう」


洸平はそう言うとサッと立ち上がり校舎に向かって歩き始めた。


「やっぱり怪しいな。何か言いづらい事でもあるのか?」


「ねーよ、そんなもん」


「あー、明日が楽しみだ」文太はわざとらしく背伸びをした。


「洸平、渉、駅の改札から改札までは恋人よりも俺達を優先しろよ」


「分かっているよ、持つべきものは恋人より友人だろ。な、渉」


「あぁ、そうだな。本当にありがとう」


そう言うと、二人は僕の方をまじまじと見つめてきた。

何か変な事を言ったかと思ったが、

「ありがとう」と言っただけだ。


「渉、何となくともみに似てきたな。

今までなら『ありがとう』なんて言わなかったぜ」


「あぁ確かにな。

でも『ありがとう』と言われて悪い気持ちにはならない」


二人はそう言うと笑い始めた。僕も自然と笑ってしまう。

ともみに出会ってからどんどんと変わっていく。

僕だけではない。洸平も文太も桜もみんな変わっていく。

なぜかは分からなかったが、

きっとそれがともみなのだろうと改めて思った。


「お前達、チャイムが聞こえなかったのか」


我に返り振り向くと先生が腕組みをして立っていた。

知らぬ間にチャイムが鳴っていたらしい。

僕達は「すみません」と謝りながら駆け足で校舎の中に入った。

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