82話 ゲーム少女と新型SR
ジャマーウェーブが見事に敵の見たこと無いSRへと命中してアリスは満足げに結果を確認した。
自分のステータス表示には採掘場を襲う盗賊を撃退せよとクエストが発生している。ギャラクシーライブラリーからの指令であるクエストが発生したということは、自分に正義があるという事である。まぁ、なくても全然かまわないけど、その場合は保釈金や罰金をギャラクシーライブラリーに払ったり面倒なクエストをやらないといけないので、できるだけペナルティが発生しない戦いをしたい。特に敵のアイテムを奪い取るときは双方戦闘状態でお互いに非が発生しない状況へと持ち込むか、相手が非がある状況が良い。
今、アリスは偶然にも演習場の着弾地点として使われていた場所の晶石をクロウラーに採掘させていたのだ。偶然にも盗賊がそれを確認してクロウラーを攻撃してきたのだから、撃退せねばなるまい。
「OKです。カナタさん、攻撃を開始しましょう」
カナタへと通信を繋げて、アシナガンビーを移動させる。ちらりとクロウラーを見るが先程の攻撃で耐久力は1しか減っていない。ダメージは受けるが、それはクロウラーを破壊するまではいかないだろう。
「あいあいさー! ふはは、地球人どもよ~。覚悟せよ~」
調子にのったカナタの声が聞こえてきて、クスリと可憐なる微笑みを浮かべてアリスは一気にアシナガンビーを飛翔させた。時速300キロしかでない機体だが、まぁ、それでも余裕だろうと考えて。
SR隊は大混乱であった。突如として着弾地点からの謎の攻撃にAチームのシヴァがやられたのだ。
だが、みかけは傷ついているように見えない。構えたライフルは力を失くした腕にだらーんと投げ出されているように見えるが。超電磁バリアが守ったのだろうとAチームのリーダは判断した。
なので通信をして相手に無事を確認しようとする。
「A2! 大丈夫か、ダメージを報告せよ! 何が起こったかわからんが、他の国の攻撃と判断して行動するぞ! A2! 返事をしろ、どうしたA2!」
無事に見えたA2のシヴァからは、うんともすんとも通信は返ってこない。
「なんだ! ダメージを受けているのか? 誰か、他の奴等で救援に」
他の部下に救援にいかせようとしたとき、またもや先程のピンク色のショックウェーブが飛来してリーダーの機体に激突する。
その瞬間、あらゆるコックピットの光が消えて停止状態へと移行するシヴァ。リーダーはすぐに起動ボタンを押下するが、なにも起こらないことに驚愕する。
「まずい! 敵の攻撃はバリアを貫通してこちらの兵器を停止状態に追い込むのか! とすると敵の目的は」
ガクンと機体が揺れて、ちりちりとハッチ周りをビーム光が走っていく。ガシャンとそのままハッチがはぎ取られてしまう。ハッチが剥がされて驚くリーダーの目の前にガチガチと歯を噛みあわせている巨大な鉄色の蜂が出現していた。
「くそっ! なんだこいつは、どこから現れた!」
慌てて腰にあるホルスターからせめてもの反撃をとハンドガンを取り出そうとするが、蜂の尻尾から緑色のビーム光を受けて意識を失うのであった。
アシナガンビーを空中にて飛翔させて、アリスはもはや戦闘を為していないSRへと冷たい眼差しを向けて呟く。
「まさか、こちらが見えていないのですか………。初期標準ステルスが搭載されているだけの機体なんですが………」
敵のSRはすでに何かがいるとはわかってはいるが、モニターに映らないのだろう。困惑した形で、しかも民間人もかなり離れた場所であるがいるために武器を使うことができないようであった。武器を色々な方向に向けて警戒しているだけだ。それも見えていないのでは極めて意味がない。
「これなら楽勝ですね。哀れ盗賊は全ての機体をハンターに奪われる運命です。オリハルハでは博物館に売りに行った方が良いですかね」
呟きながら、全ての機動兵器の動きを停止させるジャマーウェーブを放つ。こちらが見えてない敵は面白いように命中していき、その動きを停止させていく。
「じゃじゃーん! 恐怖巨大蜂襲来!」
ノリノリでカナタが停止した機動兵器へと張り付き、ハッチをビームでこじ開けて、パイロットをパラライズビームで麻痺させて、ぽいぽいとSRから捨てていく。
けっこう雑に放り投げているので、ちょっと痛そうである。簡単すぎてあくびがでますねとアリスが油断したときであった。
ロックとモニターに表示されるので、素早く右へと機体を鋭角にずらす。その横を超電導ライフルの砲弾が通り過ぎていくのが見えた。
「あれ? こちらの機体が見えたんですかね?」
不思議がるアリスが、攻撃をしてきた方向へと視線をずらすと、この間戦った六文銭がハッチを開けて視認しながらこちらを狙い撃っている。
その姿に苦笑をしながら次々と飛来する砲弾をひらひらと回避していく。当たってもダメージを負う事は無いと思うが、これはハンターとしての癖であるから仕方ない。
「ねぇねぇ、あのパイロットの人、私、この間見たよ! サソリと戦う勇気あるSRのパイロットさんだよ!」
カナタがのほほんと告げてくるので、あぁ、なるほどとアリスは納得する。
「なるほど、それならば納得です。自殺行為にしか見えませんが、それしか私たちと戦う方法がないですからね」
「フハハ、ハッチを開けたままなど愚か者めー!」
カナタがパラライズビームを撃つと、慌てて回避しようとするSRであったが、ハッチを開けたままなので、どんどん命中していきパイロットは麻痺状態になる。
「これならあんまり時間をかけないで全機回収できそうです。鏡、トラクターポータルの準備をよろしくお願いします」
アリスは冷静に戦場を見ながら、宇宙船に待機している鏡へと声をかける。
「アイアイマム。トラクターポータル発射準備よし、投下開始!」
6本の青いクリスタルが円を描くように地上へと落ちてくる。そのまま設置が終了して、青い光が上空まで放たれる。
「さて、哀れなる盗賊さんたちを、あと何分で倒せるでしょうか」
ちろりと口を舐めて、アリスはぱっちりおめめを次なる獲物へと向けるのであった。
VIP席は大騒ぎであった。民間人はモニターを見ても何が起こったかはいまいちわかっていない。なにしろ敵の姿が見えないのであるからして。
ただ動きを停止したSRのハッチがはじけ飛び、パイロットが空中を不自然に浮遊して地面へと寝かされているのを見て、なにかが起こっているとは感じており、ざわめいていた。
「な、なんですか~! いったい、なにが起こっているというんですか~!」
サラスが混乱した表情でVIP席からモニター画面を食い入るように見つめる。他の人々も何が起こっているのかがわからずに混乱している。
一部を除いてだが。
「通信が入りました。スピーカーにまわします!」
VIP席に座るお偉いさんのためだろう、誰かが気を利かせて通信内容をスピーカーにまわす。
「こちらSR隊。モニターに映らない敵兵器に撃破されている! 出雲大尉が視認のみでしか確認できない兵器なのでハッチを開けないと駄目だと言っているが、たしかに目視だとよくわかる。あしながバチのような巨大な機体だ。SRと大きさは同じぐらいだが、翅での高機動飛行を行っている!」
その通信に顔を見合せる人々。最近騒がれている宇宙人の兵器だとすぐにピンときたのである。すぐに軍のお偉いさんが怒鳴るように指示を出す。
「捕獲しろ! いや、とりあえずは撃破しろ! 敵兵器へとSRの力を見せつけるのだ!」
「そ、それが敵の動きは鋭角的でしかも速いんです! こちらの兵器だけでは、うわぁぁぁ!」
通信が途絶えて、搭乗者がやられたのが皆に伝わった。すぐに周りの軍人が指示を出し始める。
「援軍を用意しろ! 戦闘機を出せ! なすすべもなくやられたら、我が太平洋連合軍の恥だぞ!」
「はっ! 近場にいるヘリを出撃させます!」
敬礼をして走っていく部下と思われる軍人。
それを見て、サラスが目を輝かせて、走り出す。
「これはチャンスでーす! 是非自分の目で敵を見てみたいでーす」
おいおいと守里は戸惑いながらも、これはチャンスだと思いなおしてすぐにサラスへと続く。
「サラス、君は車を運転できるのかい?」
「当たり前でーす! 目標はゴールド免許でーす!」
すぐ近くにあるバギーへと飛び乗り慌てる兵士へと、笑みで告げる。
「すいませーん。この車少しだけおかりしまーす」
「お、おいっ! サラス博士か、ま、まて、まつんだ~! 盾野博士もっ!」
兵士が慌てながら怒鳴ってくるが、無視をしてバギーを発射させるサラス。その横に飛び乗る守里。
ふんふんと鼻息荒くサラスは楽しそうな表情で興奮しているだろう頬を赤く染めて守里に言う。
「スピード違反になりますので、シートベルトをしっかりしめておいてくださー」
そう言って、道路を爆走して戦いが行われている場所まで走るバギーであった。
アリスは、んしょんしょと可愛らしい掛け声で動きの止まったSRをトラクターポータルへとポイ捨てしていた。青い光が発生しミュンミュンと音をたてて空中を飛んでいき、宇宙船に格納されていくSR。
「今回も楽勝だったね~。う~ん、地球人よ~。もう少し頑張るのだぞ~」
上から目線のカナタである。まぁ、たしかに今回も歯ごたえはなさ過ぎた。
「そもそも、こちらの姿を確認できないのでは話になりません。戦いにもならない盗賊団でしたね」
「あくまでお前は盗賊団だと言い張るわけね………。まぁ、いいけどさ。散々あちらからの攻撃を受けてきたんだしな」
鏡が答えるが、アリスたちは不法侵入者というか侵略者なので、それは仕方ないだろう。ハンターギルドもギャラクシーライブラリーに登録をしていない国も悪いのだのスタイルである。実に不真面目なスタイルである。
「これだけ素材が手に入って、晶石もそこそこ手に入れば色々とアリスシティも発展できますね。まずは職業訓練校を作りたいのですが………。ん? あれはなんでしょうか?」
戦場なのに、女性が二人バギーに乗りこちらへと手を振って爆走してくる。無防備すぎて不安になるぐらいだ。
まぁ、話でもあるのかなとアリスは近づいてくるバギーを待つのであった。




