73話 ゲーム少女はグリフォンと戦う
遠く離れた空中に飛翔する鳥とも思われる米粒みたいな大きさの敵へと高熱のビームが飛んでいく。空気をじりじりと焼いて飛来する極太のビームは見事に飛んでいる鳥、いやグリフォンに命中した。
「やはり、マテリアル不足のシールドですね。マテリアルがたっぷり含まれているご飯を食べることをお勧めします」
冷徹に墜落していくグリフォンを見ながら、素早くエネルギーパックを取り出してリロードをするアリス。
「多少の軽減があったかなぁ? いや、直撃したように見えるな、あれは」
鏡が墜落していくグリフォンを見て、ダメージを予測するがその通りだろうとアリスは頷く。
「私の見る限り、直撃しました。ビームを防ぐ基本的なアーマーをもっていないと思いますよ。まぁ、それはアストラル体に多く見られるので問題ないのですが」
他のグリフォンへとスチャッとリロードが終了して狙いなおす。
再びの射撃に、空を斬り裂きビームが次のグリフォンを吹き飛ばす。同じように命中して頭を半分ほども吹き飛ばされて、ひゅーんと墜落していくグリフォン。
その様子を確認しながら、アリスは戸惑うように鏡へと言う。
「頭の部位破壊で死んでしまうとは情けないですよね。おかしな惑星です、他の惑星ならば頭を部位破壊されても、多少の命中率ダウンや超能力などのステータスダウンで敵は攻撃を続けてくるんですが。もちろんハンターだってそうです」
「あぁ~。今のアリスが部位破壊を受けたらどうなるんだろうな………たぶん黒い部位となるだけで平気で戦えそうだよね。たしかに部位破壊程度ではやられないだろうけど、ここと地球は頭への部位破壊は致命的なんだよ」
腕組みをして、困ったように鏡はアリスへと答える。それを聞いて、ピクリと眉を動かして驚きを見せるアリス。
「なんと、そんなことがあるんですか。それならば頭狙いをこの惑星ではしていきましょう。弾代の節約となりますし。さすが鏡、サポートキャラとして素晴らしい情報です。あとで角砂糖をあげますね」
「角砂糖を貰って喜ぶのは馬だからね? 俺に馬車馬の如く働けと言う暗喩じゃないよね、アリスさんや?」
的確なるツッコミをしてくる凄いフェアリーだなとアリスは感心しながらも、手を動かしてリロードを終了する。
嬉しそうにこれは良いことを聞きながら、再び新たなるグリフォンへと狙いをつけて撃ち落とす。そこでようやくグリフォンたちは、超遠距離からの攻撃を受けていると気づいたのであろう。
こちらへと、ぴ~ひょろろ~と鳴きながら空中を羽ばたいて、急速に迫りくるのであった。
さすがに空の王者と呼ばれるだけあり、かなりの速さなのでもう一匹倒してバズーカの出番は終わりかなとアリスは思いながら、もう一度リロードを終えて、再びグリフォンへと撃つ。
その攻撃はさすがに予測していたグリフォンなので、くるりと体を旋回させて回避しようとした。
だが、回避した先になぜかビームは飛来して、見事命中して体を燃やして墜落するのであった。
「甘いですね。回避運動をするのなら、もっと大きく限界を超えた力を出さないと私の射撃は躱せませんよ」
ふふっと墜落していくグリフォンを見ながら、アリスは呟きながらバズーカを背にかけて、ビームマシンガンを取り出す。
「鳥猟なら、ライフルかショットガンですが問題ないでしょう。さて、皆さん戦いの時間ですよ」
その言葉と近づいてくるグリフォンを見て、わんにゃん隊はすぐにカイトシールドを構えて一斉に盾技を発動させる。
『防護盾』
淡い光の盾がわんにゃん隊のカイトシールドを中心に2メートルぐらいの半径に広がる。それと同時にグリフォンが超常の力を込めて、鳴く。
『ぴ~ひょろ~』
グリフォンの周りに逆巻く風が緑色の力を纏い、物理的な刃へと変化して幾本ものギロチンの刃の如くわんにゃん隊へと迫る。
ガガガと硬いもの削るような音と共に防護盾は打ち破られて、風の刃により斬り裂かれるわんにゃん隊。
だが、深く斬り傷を負ったものも含めて、わんにゃん隊は怯まずに立っていた。獰猛な目つきで怯まずにグリフォンを睨む姿に、反対にグリフォンが怯み多少距離を取ろうとする。
その隙に光が深く斬られた騎士を覆う。いや、周りにいた騎士たちを光が覆う。
『エリアヒール』
アリスが素早くレベル30の範囲治癒術を使用したのだ。完全に回復したとは言えないが、出血は止まり傷も塞がったので、安心してわんにゃん隊は盾を再び掲げて防護盾を発動させる。
遠距離攻撃にはクールタイムが発生するのだろう。連続的に魔法を使えないグリフォンたちは突進して蹂躙をしようと高度を上げようとするが、その隙を狙わないアリスではない。ビームマシンガンを撃ちまくり、チチチと鳥が鳴くような音と共にビームのシャワーを浴びて、運悪く羽を焼かれたグリフォンが墜落していく。
数を減らしても怯まずに、グリフォンは羽を畳み直下の人へと突撃をしてくる。以前の傭兵団ならその突進で粉々になっていただろう魔法の力のこもったチャージアタックである。
だが、ドーベルが不敵な笑みを浮かべて、一歩前にでる。
「へへへ、一流の神殿騎士たるドーベルの力を見なっ! 『硬化』」
むぅんと力を全身に込めて、ドーベルの身体が薄らと光る。自らの防御力を上げるドーベル得意の技である。今までは基本の力がしょぼくて、微妙な技ではあったのだが。今は違うのだ。そこへダンプカーもかくやという勢いで巨体で突進してくるグリフォン。
ずずんと構えた盾にぶち当たり、ずずっと後ろに大きく押し出されるドーベルであったがそれだけであった。
盾が壊れることも、突進の威力で体が破裂することもなくドーベルは耐えきったのである。
「はっ。よくやった、ドーベル! 『鋭撃』」
切れ味を大幅に上げた騎士剣をレイダが振り上げて、ドーベルが受け止めたグリフォンの横に現れて首を目掛けて振り下ろす。
スパッとバターでも斬るようにグリフォンの首は半分ほども斬られて血がどばどばとでてくる。
「あ~! てめぇ! この泥棒猫めっ! ここから俺様の反撃で倒す予定だったんだよ!」
ドーベルが怒鳴り散らすが、レイダも負けず劣らず怒鳴り返す。
「馬鹿を言いなっ! 周りにはまだ何羽もグリフォンがいるんだ。早く片付けるんだよ! お前らも」
レイダが周りで戦闘を繰り広げている仲間へと声をかけようとしたところで、雷光が天から落ちてきた。雨の如く降り注ぎ、仲間には当たっても平気であり、グリフォンだけがその雷光により焼き焦がされる。
『サンダーレイン』
アリスが敵が集中して地上へと突進してきたので、レベル40の範囲雷術を発動させたのである。天空からの雨が降るが如し雷により、次々と鳴き声をあげながら、雷を浴びたグリフォンが動きを止めて痺れながら震える。ちなみにフレンドリファイア無効である楽々ゲーム仕様だ。
「雷の追加ダメージである麻痺も入ったみたいですね。今です、どんどん倒してください」
うぉぉ~と剣を掲げて、今だと一斉にわんにゃん隊がガルルニャーニャーとグリフォンへと襲い掛かり斬り裂く。
一度ダメージを入れたから、全部の経験値は私も入りますねと安心するアリス。グリフォンの戦闘力を一応見てみる。
『戦闘力530』
『戦闘力480』
後のグリフォンも平均500台だったので、これぐらいがこの惑星のグリフォンの力なんですねと頷く。
「ふむ………グリフォンとやら、俺たちの相手ではないみたいだな。素材がいくらで売れるのか不安だが」
何しろ焦げているしねと指を指して、鏡が不安がるが問題ないだろう。
「亜空間ポーチへと回収すれば綺麗になるので問題ないですよ」
焦げていても安心な回収機能を説明するアリス。ゲーム仕様であるからして回収は問題はない。
もう既に倒されているグリフォンへと、紅葉のようなちっこいおててを翳すと亜空間ポーチへと回収されるグリフォン。くちばしや毛皮、肉やら羽と素材が表示される。
うんうんと満足そうに他のも仕舞いましょうかとアリスが手を伸ばそうとするので、ハッとした鏡が叫んで止める。
「止めるんだ、アリス。回収したら自動分解して素材が回収されるから倒したようには見えないぞ!」
なんですとと鏡の言葉に驚くアリス。でも、こんな大きい死骸を持っていけないと思うが、持っていく方法はいくらでもあると考え直す。
「危ないところでした。この惑星の奇妙な風習でしたね、たしか。それならこうします」
手を翳して、空間術を発動させる。
『ミニマム』
空間が圧縮されて、グリフォンの死体はあっという間にサイコロ程度の大きさへと早変わりする。物凄い抵抗力が低い相手を小さくできる術である。なので、ほとんどの敵は小さくはできない。しかもダメージを1でも負うと元に戻るという手荒く床に投げるだけでも解除されてしまう役に立たない術であるが、別に宇宙船で運ぶというわけでもないのだ。問題あるまい。
まだ戦闘が激しい場所にはエリアヒールをかけながら、ビームマシンガンを片手に援護をしていく。苦戦をして傷だらけにわんにゃん隊がなりながらもなんとかグリフォンを退治していく。
数十分後、見事全てのグリフォンを撃破できたのであった。すぐに最初に撃ち落としたグリフォンたちも回収にむかっておく。
「はっはー! 俺たち神殿騎士団にかかれば、グリフォンなどなにするものだな!」
かんらかんらと猛将のような高笑いをあげて、ドーベルがグリフォンの死骸を見て調子にのる。
「何言っているんだい、あんたは何回死にかけた? アリスがいなければ、とっくに死んでいるよ!」
レイダが苦笑して皮肉を言うが、レイダ自身も戦闘結果に満足気であった。
「これで金貨100枚かぁ、えっと10体?ぐらいいたよね。10体以上いたんだけど? これ全部お金を貰えるのかなぁ? 大金だよ?」
チャシャが大金になりそうで目を白黒させて、にゃんにゃんと戸惑う。
「素材を売ればもっと儲かるという話ですが、これは私が使用しますので、均等に分けるとそんなにはなりませんよ」
ちゃっかり素材の権利は自分ですと言い張るアリスである。反対意見がないから良いのであろう。良いに決まった。もう返さないからとゲーム少女は素材をもらい受けたのだった。
「本当に均等にする気なのかい………。馬鹿な使い方をしないように部下へと言っておかないとね」
レイダが苦笑いをする。大金を手に入れた馬鹿がどうなるかが昔から見てきたので、注意をしておくに限る。
「では、王都へと戻りましょうか。なかなか良い戦いでした。レベルも47になりましたしね」
ハンガーからトラックを取り出してアリスはトラックに乗りながら、これで名声ゲットですかねと思っていた。王都ではグリフォン退治の結果を見て大騒ぎになるのであるが。




