72話 ゲーム少女は神殿騎士団の力を確認する
グリフォンとはなにか?天空の王者である空を飛ぶ魔物の中でも強者であるのがグリフォンだ。
強力な風の結界を自らの体に常にかけており、多少の矢や魔法などは弾き返して、空中からの5メートルを超える巨体を利用した突進攻撃や、風魔法による上空からの攻撃にて通常の兵士では太刀打ちできない。英雄やそれに準じた戦士、魔法使い、または大勢の兵士により倒すしか方法はないのだ。
この惑星では、いや剣と魔法の世界であるこの惑星ではグリフォンは災厄と言われる魔物である。
「なるほどねぇ~。AHOでもグリフォンは強者だったけど、この惑星でも強力なアストラル体なのね」
ふよふよとおっさんフェアリーが空中に浮きながら、呑気な声でレイダが言う内容を聞いて納得する。
「そうですね、ふよふよと浮いている戦闘力5のフェアリーと違い、グリフォンはいつでも強敵ですよ」
「フハハ、ウサギモードへの変身を可能にした俺にその言い方は効かないぞ、アリス。フハハ」
高笑いをするおっさんフェアリーを見て、なんだか負けた気分ですと、うみゅぅと悔しがるアリス。アリス対おっさんフェアリーの熾烈なるアホな漫才は常に進歩しているのである。
「グリフォンの依頼なんて、よくドーベルは引き受けたね? アタシらじゃ死ぬだけだよ、以前の街でも現われた際には勢子役しかしていなかったじゃないか」
レイダがニヤニヤと笑いながらドーベルへと話しかけて、ドーベルはにやりとその言葉に反応を返す。
「わかっているんだろう? 俺たちは姐御の加護で大幅に力を上げたんだ。装備も超一流、加護により力も増大している、それなのにこんな美味しい依頼を受けないというのかよ?」
「アハハ! たしかにそうだね、なにしろ新米たちがこんな活躍をするんだからね」
レイダが傭兵団の新米たちへと視線を向ける。新米たちとはもちろんチャシャたちである。
今はアリスたちは森林に結局20人ほどのメンバーで来たのである。トラックに傭兵たち、いや今は神殿騎士たちを連れて。多数の魔物がいるのなら殲滅に人が必要だとレイダたちに説得されて、人数を揃えてきたのだ。
そんなアリスたちの集団を見逃すはずがなく、街道から森林に入って少ししたら、縄張りを追われた魔物たちが襲い掛かってきたのであるが
「ほいっ、ほほいっ」
オーガが2匹、ブチーダへとこん棒を振り下ろして殺そうと襲い掛かっているが、ブチーダは余裕をもって回避をしている。目の前にこん棒がきても、素早く後ろに飛びのいて躱して、もう一匹のオーガからのこん棒をカイトシールドを前に出して受け止める。
オーガに比べると華奢であり、以前は吹き飛ばされたブチーダであるが、今は平然と受け止めて多少後ろに押し下がるだけであった。
2匹がブチーダに攻撃を集中していた隙を狙い、横からクロームが剣をオーガの膝めがけて横薙ぎに入れる。
蒼く光る騎士剣は肉深くまで骨をも斬り裂き、血が飛び散る。
斬られた痛みに膝をつくオーガへと、大きくジャンプしたチャシャが剣を大きく振りかぶり襲い掛かる。
「にゃーん、これで終わりだよっ! 『強撃』」
力が増大して使用できるようになった剣技を使用して、兜割の如く振り下ろす。剣技により大幅により力が増した振り下ろしはオーガの頭を縦に胴体の半ばまでをも合わせて斬り裂くのであった。
その間も盾でこん棒の攻撃を受け止めながら、連続で斬りかかりオーガへとダメージを与えているブチーダ。
数分後、他の二人の加勢も入り、残ったオーガは倒れるのであった。
「やったー! 強くなったと思ったけど、オーガがこんなに簡単に倒せるようになるとは思わなかったよ」
にゃんにゃん踊りをしながら、子猫たちが喜ぶ。たしかにレベル30の兵士となった子猫たちには楽勝な相手だ。なにしろ戦闘力は最低で150は上がっており、なおかつ剣技、盾技、体術がレベル30になっているのであるからして。用意された神殿騎士の装備も入れれば戦闘力は300ちかい。
チャシャたちが300ちかいということは、ベテランは確実に400を超えている。それは平均的な騎士隊長レベルを超えている。小国ならば騎士団長にもなれるレベルであった。
なので、森林に入っても楽勝な神殿騎士団わんにゃん隊である。ちなみにアリスが内心でわんにゃん隊と呼んでいるだけで、正式な騎士団の名称は決まっていない。わんにゃん隊が良いとアリスは思っているが、恐らくは却下されるだろう。
「しかし、雑魚敵が多いのですね。あんまりビームバズーカを使いたくないので、仕方ないのでビームマシンガンを使用しますが」
新たに血の匂いに釣られて、ガサガサと茂みから現れるアストラル体を見ながら、ビームマシンガンを構えるアリス。
今度はオークである。猪のような毛皮に覆われているアストラル体だ。軽く引き金をひくと、赤いビーム弾がシャワーのように銃から吐き出されて、オークへと次々と命中する。高熱のビームを受けて穴だらけになるオーク。さすがに1撃では倒せないが、3発あれば息の根を止めれることを確認したので、正確に3発ずつセミオートにて倒していくアリス。
オークたちは、ぞろぞろと目の前の仲間がやられても気にもせずに突撃をしてくる。30匹ぐらいはいただろうか。
だが、のしのしと小走り程度で近づいてくる敵など相手ではない。マシンガンの前に接敵もできずにオークたちは全て倒れ伏すのであった。
「戦闘力は80………。まぁ、良い感じじゃないですかね。レベルが45になりましたし」
そこらへんの小石を片付けたように淡々と言うアリスへと苦笑しながらレイダたちは自分たちの主の力に感心をする。
他にもグラスウルフや、ビックスパイダーなどが次々と現れたが、わんにゃん隊は増大した自分の力を使い、あっさりと倒していくのであった。
そこには、ダイショーの街でくすぶっていた狩人の集団ではなく、力を持つ強者としての集団として機能をしっかりとしていた。
第三者が見たら、さすがは騎士団と感心していたことは間違いない。
「でも、こいつらは拠点化時の兵士能力を突如として自分の力として使う事に躊躇いとかないのかね? やっぱり自分の力だけで強くなりたいとか」
土下座する勢いでドロイドを作成してもらい、その力でブイブイ言わせているおっさんフェアリーの言葉である。鏡は自分の姿を鏡で見た方が良いだろう。
「自分の力だけでとは、強者の考えですね。彼らは成り上がりお金持ちになり幸せになりたいのです。なにしろ食い詰めた狩人軍団ですからね」
アリスが平然とぱっちりおめめでおっさんフェアリーを見ながら言う。たしかにそうだなと鏡も思う。自分だって食い詰めて傭兵団にいたら、力が手に入る方に心が傾くだろう。力が欲しいかと言われたら、条件を詳しく文書化して聞いてから頷く用心深いおっさんフェアリーであるが。
「さて、グリフォンというのはあれですかね?」
しばらく歩いてから、上空を指さすアリス。ぴーひょろろ~と鳥が数羽飛んでいるので指さす。
レイダが目を細めて確認するが、遠すぎてよく見えない。鳥にも見えるがどうなんだろうという顔だ。
「あれは鳥じゃないかい? う~ん………。グリフォンっていうわりには10羽ちかくいるんだが………」
「巣があるって、言ってましたよね? それならあれぐらいはいるんじゃないですか?」
アリスの問いかけに、かぶりをふり否定するドーベル。
「いや、グリフォンは大体2匹いればいいほうだと聞いているんだが………。だってあれ10羽はいるよな?」
騎士団がいくら精強でも10匹などは無理ではなかろうかと思うし、そんなにいるのなら軍の出番だろうと考えるドーベルだが、鏡はピンときた。
「はは~ん。俺たちは威力偵察隊兼捨て駒だな。どれぐらいいるかを依頼をだした貴族とやらは知っていたんだろう。確認のために成功するわけもない依頼を出して、敵の戦力を自分の戦力を失わないように確かめようとしたんだ」
ドヤ顔での推察を語るおっさんフェアリーであるが、アリスもその内容を聞いて納得して頷く。
「たしかに鏡の言う通りですね。不思議には思っていたのです。こんなに美味しい依頼をしてくるのに、誰も喰いつかないなんてと」
ふふっと可憐に微笑みを浮かべてアリスは楽しそうになる。いや、実際に楽しいのであるが。これは当たりのクエストだと判断したのだ。
「こういうクリアできないと依頼者が思うクエスト程、報酬は高額であり、名声はうなぎ上りになるんです。やりましたね、受けれて良かったですね、このクエスト」
「まぁ、ハンターたるもの、そういう依頼にこそ喜んで食いつくからな。だからこそ、依頼者は気を付けるべきである。ハンターへのクエストを出すときは、ぼったくられないようにな」
鏡がうんうんと頷きながら同意するのを、アリスは見ながら
「鏡もハンターの心得を知っているのですね、サポートキャラっぽいので安心しました。ただの羽虫かなぁと思い始めていたので」
ジャコンとビームバズーカを取り出して、肩に担ぐアリス。キシャーと叫ぶおっさんフェアリーは華麗にスルーする。
「さて、皆さん。あのグリフォンを退治しますが、戦いたくない人は下がっていてください。その代わりグリフォンの報酬はなしですが」
アリスの言葉に顔を見合わせて、コクリと頷き武器を構え始めるわんにゃん隊。
「はっ。アリスが戦えるというのなら、のるしかないだろうさっ」
「俺たち神殿騎士団の初仕事ですからね。姉御の顔に泥を塗るような真似はできませんぜ」
「私たちも戦うよっ! お~!」
レイダもドーベルも、新米なチャシャたちも笑顔で武器を構えて逃げる様子はない。
ふむふむ、どうやら良い人たちを雇用できましたねと、アリスは幸運だったと微笑む。
「では、グリフォンアストラル体をサクッと倒してしまいましょう。グリフォンの素材はくちばしから尻尾まで捨てるところはありませんので、全滅確定でいきますよ」
おぉっ!と意気軒昂にわんにゃん隊が叫び、遠く離れて米粒程度にしか見えないグリフォンへとビームバズーカを向ける。
スコープ越しにグリフォンの姿をロックしたゲーム少女は、強力なるビームバズーカの引き金をひくのであった。




