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7話 ゲーム少女は状況を確認する

 ざわざわと人々が上空を指差して、驚愕しながら話している。敵はいないと調査結果が出たので、ステルスモードも解除している超級戦艦絹ごし豆腐。そのため、多くの家々が巨大な戦艦の影に入っており、多少の暗さを甘受していた。


 そして、人々が見ている中、ヘリやら戦闘機がスクランブルで発進して宇宙戦艦の周りを旋回している中で、再び戦艦は雷光を纏ったと思ったら、姿を消したのである。戦闘機やヘリがその場に隠れているのではと、恐る恐る近づいても何も無かったことが判明するのみであった。


「あ〜、ようやく仕舞えたか。やっぱり大騒ぎになっているなぁ」


 鏡がアリスにつけさせたテレビを見ながら嘆いて頭を抱えている。テレビは緊急放送とやらで大騒ぎとなっていた。


 ちなみに私は全言語わかる知識を生まれたときから持っている。ロイヤルニュートという高位の生物だからだ。基本はノーマルニュートと変わらないが、経験値テーブルも限界レベルも比べ物にならない。ノーマルニュートはレベル100までしか上げられないが、私は最強の1000まで上げられる。


 生まれの差は残酷だが仕方ない。それに私は生まれは最高であったが、最初のスタートは他の人たちバウンティハンターと同じであったし。


「うぁぁぁ〜。72日たったら、皆忘れてくれないかな? どう思う、アリス?」


「超級戦艦が来訪したので珍しいだけでしょ? 問題はありませんよ。直にマスコミなんて新しい記事に食いつきます」


 テレビは超級戦艦絹ごし豆腐の話題一色だった。みんながバラバラに好き勝手になにかを発言している。辺境でも、都会でもそれは変わらないなぁと思う。


 私が帝国を救った時や、スペースアントの母巣を破壊した時もマスコミは大騒ぎしたが、あっという間に他の話題に移ってしまった。たしか2日も持たなかったと覚えている。


「いや、ゲームだと新しいイベントが発生すると、それ一色になるけど……大丈夫かなぁ」


 そう言って、再びおっさんフェアリーはテレビへと目を向ける。古いテレビだ。辺境にしても酷い。ホログラムにもできないテレビなんて、辺境の中の辺境ぐらいだ。


 そこでは評論家とか政治家らしき人々が映って話していた。


「総理! この戦艦はなんでしょうか? まさか日本が建造を?」

「普通に考えて頂きたい、あれ程の技術の戦艦を地球のどこの国が作れるというのでしょうか? 反対に私に教えて頂きたい」

「ならば宇宙人ですよね? もう接触はあったのでは?」

「あの戦艦が宇宙から来たことは明らかです。訪問の目的を……」


 超級戦艦一隻で辺境は楽しそうだねと、アリスはふふっと笑って、気になることを鏡に尋ねる。


「あの、鏡? どこに30億マテリアルあるんですか? 報酬は前払いですよね? 違うのなら少しお話し合いが必要になるかもしれませんが。バウンティハンターのお話し合いは少し乱暴ですよ?」


 マテリアル、大金であるマテリアルをすぐに亜空間倉庫に仕舞わないといけないよねと、アリスは使命感に駆られて尋ねる。どのような使命感かは不明。


「あ〜、30億ね……」


 頭をかきながら、困った表情で言いづらそうに鏡がする。


 その対応にピンときた。とりあえず銃を抜いておこうと考えるアリス。怪しい態度なので。


「待った! 騙したワケじゃないからな! とりあえず銃は仕舞え! 金はこの国のクレジットなんだ。この地球でしか使えない!」


 アリスの態度を見て、慌てるおっさんフェアリー。銃はヤバイ、近所の人に見られると通報間違いなしだからして。


 アリスはそっと銃を仕舞う。首を可愛く傾げて不思議な表情になる。


「この地球のみのクレジット? それがなんの役に立つのですか? バウンティハンターを雇うのに、騙したのですか?」


 ぱっちりお目々を鋭く細めて、怒りを多少こめて言う。マテリアルだと思ったら、この星でしか使えないクレジットなんて、バウンティハンターを舐めているとしか思えない。


 その眼光を受けて、鏡は震えて解決策を提案する。なにせアリスの眼光は命がかかっているような圧力だから。


「まぁまぁ、食事代とか遊ぶための金と思ったらどうだろうか? それに俺の力で異世界にも行けるんだよ? そこでレアなアイテムやマテリアルが手に入るだろうし。現状、オリハルハには絹ごし豆腐でも戻れないぞ?」


 おっさんフェアリーは、アリスの性格を大体理解した。なにしろ自分がやっていたゲーム内の行為から、性格が作られていると思うので。


 それならば、アリスは自分をゲームキャラだとは思っていないみたいだし、とりあえずオリハルハには戻れないし、レアなアイテムも手に入ると言えば納得すると推察していた。どう見てもケチな守銭奴に見えるので。実際に鏡はそのようにゲームでは行動していたのだから。


 その予想通り、アリスは素直に頷いて、ちっこいおててを顎にあてて、その話を検討し始める。


 むむむ、たしかにギャラクシーライブラリーも通信不可能な辺境。最初は異世界とか騙されそうになったが、ステータスボードは、ちゃんと仕事をしてくれた。すなわち辺境開拓地と表示されたので。


 だからして、異世界とか嘘だろうが、ここよりも文明度が低い星へも稼ぎに行かせてくれるみたい。ならば美味しい食事と楽しい稼ぎがある長期クエストなのだろう。ゆっくりとやっていこうと決心した。特に美味しい食事は今までになかったから、かなり嬉しい。


「わかりました。その提案にのりましょう。とりあえず、この星のクレジットをください。ご飯はこれからはそのクレジットで購入しますので」


 それでも、高い素材とかがあったら、それも止めてクレジットで買い漁ろうと考えていたが。


 うんうんと、予想通りのアリスの了承を受けて、鏡はニヤリと悪そうに笑い、新たな提案をする。


「なら、まずはこの日本の戸籍、そして、俺が生きているという偽装だ。できるか、アリス?」


「簡単です……と言いたいところですがレベルが不安ですね。電子操術で偽の戸籍を作れば良いんですよね? 一度アクセスして使ってみてどれくらいのレベルがあればクラッキングできるか調べます。ですが、レベル10じゃないと『電子解析』も使えませんね」


 あとレベルは4必要だ。そうしたらレベル最低の術だが必要クラッキングレベルがわかる貴重な術が使えるのだ。これからずっと使っていく術でもある。


「もちろん、レベル10まで回復させるつもりは……ないに決まっているか」


 はぁ、と項垂れる鏡。わかりきっていることを聞かないでくださいと胸をはり、ふんすと息を吐くアリス。マテリアルを消費する?これからの稼ぎで考えましょうの精神だ。今までのは別枠ねと謎のアリス理論再び。


「オーケー。オーケー。わかったよ、ハニー。それならば経験値稼ぎに異世界へと行くとしよう。なんという異世界かはわからないけど」


 両手を掲げて、こちらへと肩をすくめながら、おちゃらけたように語る鏡。ちょっとイラッとくる態度だ。あと、ハニーって、私のことだろうか。


「あと、生きている偽装って、なんですか? 生きているじゃないですか、鏡は」


 おっさんフェアリーを指差して、不思議な表情で尋ねる。なんで偽装が必要なんだろうと。今まさに生きていますよねと。


「あぁ〜、俺はな、本来はノーマルニュートなんだ。今はこんな姿だけどな。それもお前に憑依? とかしている感じだ」


「なるほど、なるほど。大体わかりました。このクエストの目的達成は貴方の復活と私がお金を稼ぐことというわけですね」


 なるほど、ありがちだが困難なクエストだとアリスは理解した。これは長いクエストになるぞと、気合を入れる。たくさん稼げるねと。


 全然事態を理解していないアリスである。だがアリスが勘違いしていることは鏡も理解した。一緒にいる理由にもなる鏡に都合が良い考えだし、もしも自分が復活できるなら、途轍もないラッキーだ。あと、なにげに自分の野望もしっかり入れているアリスである。


 なので、おっさんフェアリーはその話に喜んでのることにした。


「バレちまったら仕方ない。大体そんな感じだから、これからよろしくな、アリス。色々アドバイスをしていくから、ちゃんと聞いてくれよ?」


 口元を曲げてニヒルそうに笑う鏡。アリスもその返答に嬉しそうに、やった、やっぱり予想通りだねと満足して、再度頭を下げる。


「サポートキャラも兼任するということですね。そういうクエストは慣れていますので、安心してください」


 そう答えて、仄かに癒やされる微笑みを浮かべるのであった。


「よし、それならば再度の異世界転移に行こう! アリス、しくじるなよ?」


「私の依頼達成率は100%です。問題ありませんよ」


 自信満々に返答するゲーム少女は再び異世界へと舞い戻るのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんだかんだで上手い事オッさんがアリスの手綱を握って異世界漫遊することに(^ ^)魂の主導権を取られてこっちまぬけなオッさん扱いだったけど、資産30億のトレーダーの経歴は伊達じゃなかったの…
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