64話 ゲーム少女は王都入りする
ごとごとと車体を揺らしながら、電動特殊輸送用10トントレーラーが白い舗装道路を移動している。100メートルは横幅がある無駄に広い車道である。ちなみに電動といっても、ゲーム科学の物なのでハイパワーだったりする。
トラックといっても、トレーラータイプだ。すなわちコンテナを積んだ貨物車を牽引する感じで、牽引車はキャンピングカーにもなっていた。贅沢極まりない車両である。
周囲は生い茂った森林となっており、背丈も高く地球ではありえない植生をしており、植物に詳しくない鏡でもひと目でわかる見たこともない木が多かった。なにしろ青色やピンク色のど派手な色彩の色なので、地球ではないと一般人なら簡単にわかる。
そんな外を眺めながら数奇なる人生となる原因の少女へと視線を向けると、すよすよと寝息をたてて、可愛らしい姿で椅子にもたれかかり、気持ちよさそうに寝ているのであった。
「はぁ、本当に魔物が出てきませんな」
「魔の森なら、ゴブリンとか出てきていいはずなんだがねぇ」
「さすが姐さんの作った道だ」
驚きの声をあげるフォックスニュートたちへとちらりと視線を向けて答える。
「この白い舗装の効果は聞いたはずだ。魔物など来れるはずがない」
本日は運転手となっている鏡。すなわち、アリスが作ったうさぎドロイドに憑依しているのだ。制限時間は6時間と長いが、クールタイムも6時間なので、やられない限りは制限時間が切れても即戻れるのだ。
しかもステータスはオール100、スキルは各種レベル100とアリスより遥かに強くなった鏡である。でも精神攻撃に弱いし、一長一短なおっさんウサギであった。
まぁ、実際に強いとは思うが、それはアリスがレベル劣化を回復していないからである。
ふと、もしもレベル劣化を完全回復していたらどうなっていただろうかと考えた。
その場合のアリスの猛威はとんでもないこととなっていただろうし、自分もこんな雑魚ロボットを作成はしてくれなかっただろう。本来のアリスの配下たちが活躍しており、おっさんはフヨフヨと浮いて、アリスと話しているだけだったに違いない。
それを考えると、アリスのケチぶりは自分にはプラスに働いたのかと、今更ながらに胸を撫で下ろす鏡であった。
それに強いといっても、戦闘力とスキル上の話だ。アリスなら誤差ですねとあっさりおっさんうさぎを倒しそうな予感もする。
「魔物を寄せ付けないこの白い聖石があれば町が開拓して作り放題ですが、アリス様はこれを量産してくれるでしょうか?」
グリムが恐る恐る聞いてくるが、否定をしておく。
「無理だろうな。これは龍の力がこもっているんだ。簡単には作れないだろうよ」
「むむむ、さようですか……。これがトラブルにならなければ良いのですが……」
不吉なことを言うグリムを見ながら苦笑する。きっとアリスは喜んでトラブルに入っていくだろうと簡単に予想できるので。
そうしてトコトコと森林を抜けて、平原を突破する。馬車など比べ物にならない平均速度60キロで移動中なので、通りかかる馬車の御者が驚いた表情でその車両の列を見ていた。
車両の列である。オート走行にて5台の兵員輸送用トラックがワンニャン軍団をのせて追従してきているからだ。
「まぁ、今考えても仕方ないだろ。それよりそろそろ王都が見えてきたからアリスを起こすんだ」
「はい、神騎士様。お、起こして大丈夫でしょうか?」
鏡はアリスの作った眷属であると聞かされているので、恐る恐る確認してくる。おっさんはついにサポートキャラから、創造されたおっさんへと格落ちしてしまった模様。まぁ、おっさんだから特に気にしなくて良いだろう。
ちなみに偽装してあるので、一般人レベルだと渋いおっさんに見えているはず。そうだといいなと思う。リアルウサギには見えないようにと祈るおっさんうさぎだった。ちなみに一般人レベルはゲームの中での話なので、もう現実での基準になるとはまったく信じていない。
「大丈夫だよ。アリスはその程度じゃ怒らない。おら、起きろ、アリス」
鏡の怒鳴り声にうにゃうにゃと、目をこしこしと擦りながら、アリスはふわぁ〜とあくびをした。
「なんだか公害レベルの騒音が聞こえてきましたが、気のせいでふかね? ふわぁ〜」
「寝起きでもディスってくる、その気概は認めよう。次は耳元で拡声器を使って起こしてやるから、期待しておけよ」
クククと含み笑いをして、アホな返しをしてくるおっさんうさぎをチラ見してから、うんせと後部座席から、前部座席へと移動するアリス。
そうして外を覗いて見ると、平原の真ん中に高い外壁で囲んでいる町が目に入る。奥には城も見えているので、アリスはおおっと感心して感想を告げる。
「なんというしょぼさでしょうか。外壁はシールドエネルギーも張られていないみたいですし、お城はなんだか薄汚れていて、観光客はこない感じですね」
さすが辺境の王都と、間違っている感心をしながら
「観光客を集めたいなら、なにか目玉となるものが必要です。私がプロデュースするなら遊園地とカジノですね。遊園地ではポテトはしょっぱくして飲み物の需要を増やし、カジノは当たらないジャックポットをたくさん作ります」
むふふと非道なる建物を作成しようとするプロデューサーアリスがここにいた。
「はいはい、変な発言はするなよ? 謎の神官アリスとか、謎をつけまくる美少女の真似はしないように」
鏡が呆れながら忠告をすると、アリスは素直に頷いた。その姿は素直で愛らしい子供のような美少女である。
「謎はつけません。私はいつものハンターの名乗りをあげるだけです。名声を上げないといけませんからね。クエストが発生しなくなりますから」
両手を腰にあてて得意げなる表情を浮かべ胸をはり、いつもの如く胸を反らしすぎて、うわぁとひっくり返る可愛らしいアリスであった。
その言葉を鏡は特に気にせずに、コロンと後ろ向きに転がったアリスへとニヤリと笑いを見せた。
「なんにせよ、目立つからな。まぁ、ハンターでも傭兵でも料理人でもなんでも良いだろ」
「鏡様、ご冗談はおやめください。アリス様は神官様として皆にはご紹介するつもりです。鏡様はそのお付きである神殿騎士団長となります」
グリムが真面目な表情で硬い口調で告げてくるので、ニヤリとニヒルに笑いを返す強い躰を手に入れて強気になっているおっさんがここにいた。
その姿はブルーブロンズアーマーという綺麗な青色のハーフプレートアーマーを着込んでおり、椅子の横にはカイトシールドを置いてあり、ブルーブロンズソードとエネルギーガンを腰につけている。
ようはファンタジーでいう青銅の剣であるが、スペースオペラな武器なので、多少透き通っておりマテリアルがこめられているので、この世界ではかなりの切れ味の魔法剣扱いされるだろうと予想している。
地球もそうだが、この惑星もマテリアルを意図的にこめた装備はない。なので一般的なこの惑星での武器防具の戦闘力は9割引きで性能を考えないと、AHOの武器防具とは比較できなきだろう。
アンダーシャツも綺麗に青が映えるシャツであり、ズボンプレッサーも白いラインが入っている制服のように見える服である。防御力は5であるが。でも5でも、この制服強そうだなぁと思う鏡であった。
王都の門前には大勢の人々が並んで入場検査を受けており、その中でも目立ちまくるアリスの車両群は注目の的であり、人々の視線を釘づけにしていた。
「それじゃ、アタシたちも降りるかね。神殿騎士団の初仕事といこうじゃないか」
「おう! 俺たちの晴れ姿を王都の連中に見せてやろうぜ!」
レイダとドーベルもやはり鏡と同じ装備をしているが、エネルギーガンは持っていない。あとは鏡の装備の方が少し意匠が凝っているぐらいか。
ぞろぞろと後ろのトラックからも意気揚々としたワンニャン軍団が降りてきて、練習していた整列と行軍だけは素早く行う。整列と行軍が素早く美しくできないと騎士団としての程度を見られてしまいますよとのグリムの意見を聞いて、整列と行軍の練習だけをメインとしていたワンニャン軍団である。アリスにバレたら怒られること間違いなしだ。
ビシリとキャンピングカーの前に整列したワンニャン軍団。かっこいいですねと満足げに、鏡に手をとられ、しずしずと降りてくるアリス。かっこいいは好きです。可愛いは正義ですの精神なアリスなので気に入った模様。
どこから見てもやんごとない身分の少女である。しかも黒髪は艷やかで美しく、顔立ちも可愛らしい。小柄な体躯は子犬を喚起させる子供にも見える見たこともないほど美しい少女であった。
それに立派な騎士団が護衛についているのだ。
門前の人々は、失礼なことをして、罰せられたら大変だと後退る。門番はアリスたちを見て慌てた様子で駆け寄ってきた。
そうしてアリスたちの前で、ビシリと背筋を伸ばして、恭しそうにお側付きと思われる文官らしきグリムへと声をかけてくる。
「ようこそ、トーギ王都へ。この度はどこのお国からのご訪問でしょうか?」
見たこともない魔法具と思われる馬がいないのに動く馬車には宝石のような半透明の宇宙樹が描かれているが、その紋章がどこの国のものかわからないので、失礼なことであるとは理解しながら尋ねる兵士。
その言葉ににこやかに笑みを浮かべてグリムが答えようとしたら、その前に一歩前に出たアリスが見事なカーテシーを見せながら答える。
「私は安心格安、確実に依頼をこなす、今回は神官になったバウンティハンター魔風アリスと申します。今回は王都に商売に来ました」
美しい少女アリスに見惚れる門番たち。ちょっと子供に見える感じもするがそれでも美しい。
「はっ! では多少の話をお伺いしてから王都への入場が許可が降ります」
「よろしくお願いしますね」
顔が赤い門番たちを気にしないで、王都とはどんなものだろうと、ふふっと笑うゲーム少女であった。
アリスの出現により、多かれ少なかれ波乱が始まるトーギ国でもあった。




