41話 ゲーム少女の新たなる日本での活動
てくてくと不機嫌そうにカナタは歩いていた。学校が終わり、またね~と友人たちに手を振った後に不機嫌な表情を浮かべて家へと帰宅するべく歩いていた。
不機嫌な原因である元凶な向かいの豪邸へと視線を向けて溜息を吐く。せっかく出会えた宇宙人なのに、最近全然姿をみないのであるからして、非日常が来ると考えていたカナタはがっかりしていたのだ。
荒事が発生するだろうと考えて、これまで以上に道場で訓練をして腕前が上がったなとお爺ちゃんに感心されて、なにか力が必要なことがあったのかと眼光を光らせて怪しむように尋ねてきた時も、別にちょっと気が向いただけと答えながら、それでもなにかがあるとわくわくと期待していた。
アリスちゃんに出会って最初の日はワクワクして寝られなかった。次の日はなにが起こるんだろうとドキドキしていた、もしかして爆発音とかが聞こえてくるかもと。その次の日も次の日もドキドキして待っていたが、向かいの家は灯りが夜中につくぐらいで、人の気配を日中はしていなかった。
母親が心配気にアリスちゃんはなにか仕事でもしているのかと、尋ねてきたがハンターをしているみたいだよとも答えられないし、正直に答えたらふざけているのと怒られること請け合いである。ただ、お金だけはたっぷりと父親から貰っているらしいよと教えたら、それこそが問題を複雑にしているのと困り顔になった正義感の溢れる母親だった。
たぶん、たくさんあるお金を使って非行にでも走っているのでは、悪い人に騙されているのではと心配をしているのは丸わかりだ。昨今のコンクリートジャングルと呼ばれる人情紙風船で隣家の人の名前すら知らないという世の中なのに珍しい人だし、そんな母親を自分は尊敬してもいる。お爺ちゃんと同じで私は倫理観があまりないと自覚しているので。
はぁ~と深く嘆息して、アリスちゃんは今頃宇宙をまたにかけた冒険でもしているのかなぁ。自分も冒険をしたいと考えるカナタは珍しく豪邸の灯りが点いているのに気づいた。
「アリスちゃん、帰ってきているんだ!」
もしかして父親の方かもと一瞬考えるが、それならそれでアリスちゃんとの出会いを尋ねればよい。きっと凄い方法でコンタクトをとったに違いない。
そうして、ピンポンピンポンと呼び鈴を鳴らしまくるカナタ。確実に近所迷惑と怒鳴られても仕方ないやり方であるが、アクティブなカナタはそんなことは気にしないし、猪突猛進が売りなのであるからして。
カナタが家の人早く出てきてよとピンポン連打をしていると、はぁ~いと鈴を鳴らすような可愛らしい声が聞こえてきて、がちゃりとドアが不用心に開き美少女が顔を覗かせるのであった。
アリスは目の前の人間へと目をやった。久しぶりに会うサポートキャラであるカナタであるので笑顔で答える。
「こんにちは、カナタさん。今日は何の用事でしょうか? なにか困った事が発生しましたか? ハンターの出番ですか?」
きっとクエストを持ってきたのだろうと、わくわく顔で歓迎するアリスへとカナタがプンスコ怒りながら口を開く。
「アリスちゃん、今までどこに行ってたの? 10日ぐらい私を放置プレーするなんて!」
「放置プレー? すいません、好感度を上げるのに毎日会いに行くより、どかどかプレゼントをしたほうが効率が良いので、会いに行くという選択肢はなかなかとらないんです」
アリスがぺこりと小さく頭を下げて、好感度を上げるのに毎日は会いに行かないよと言うと
「もぉ~。私のアリスちゃんへの好感度はかなり高いから! それよりいったいなにをしていたのか教えて?」
てへへと小首を傾げてぺろりと小さく舌をだして、カナタが尋ねてくるので、アリスは素直に頷き家の中に案内するのであった。
リビングルームでサイダーをコップに入れてカナタに勧めながら、自分の最近やっていることを話し始めるアリス。鏡は苦々しい表情だが止める様子はなく、ふよふよとアリスの頭の上に浮いている。
「最近は文明の低い惑星での開拓を始める事にしました。開拓後にどかんとお金や資源を回収するためですね」
その言葉を聞いて身を乗り出して、ふんふんと鼻息荒く興奮するカナタ。
「え~! 他の惑星? 文明の低い惑星を開拓………。モノリスとかを置いていったりするの?」
なかなか古いSF小説に詳しいカナタは、懐かしい単語を口にするが、アリスはかぶりをふって否定する。
「モノリスがなにかはわかりませんが、まずアストラル体を退治して拠点を確保。そしてノーマルニュートを集めて拠点を生成していきます」
「ほぉ~。楽しそうだね~。私も連れて行って貰えたりしないかな?」
わくわくとした表情で尋ねてくるので、アリスはカナタを確認する。
『解析』
『戦闘力132』
まぁ、普通の人ですねと頷くアリスだが、鏡はその驚くべき数値に驚嘆の声を上げた。
「まじかよ! え? この子ちょっと戦闘力高すぎない? なんで? 仙人のもとで修業でもしているの?」
驚く鏡へとそういえばおっさんフェアリーの戦闘力は見たこと無いなと解析をかけてみると、なんと素直に表示された。
『戦闘力5』
「ゴミですね。なんというか哀れみを覚えます」
哀れみを含む視線を鏡へと向けると、慌てて手をぶんぶん振りながら鏡は弁解をしてきた。
「違う、今は実体がないからこんなに弱いんだ! 元に戻ったら戦闘力53万ぐらいあるから! 3回の変身も残しているから!」
盛りすぎて銀河の帝王と同じ戦闘力にするおっさんフェアリーである。慌てて弁解した内容が53万とかアホすぎて泣けてくる感じだ。
おっさんフェアリーはいつも慌てているので、放置をすることに決めて、カナタへと返事を返すアリス。
「まぁ、いつかは連れて行っても良いと思いますが、拠点ができてからですね」
「本当! 約束だからね、絶対に連れて行ってよ!」
しょぼい文明度にがっかりをしないといいけどと心配しながら、アリスも頷き会話を続ける。
「それと今は地球で物資集めですね。何しろここは低レベルですが物資がたくさんありますので」
キランと目を光らせてカナタが期待に満ちた声音で叫ぶ。
「キター! 地球を侵略するエイリアンだね! わわわっ、地球は侵略されちゃう?」
侵略されるといっているのに、嬉しそうな楽しそうな表情で目もキラキラさせているので、変わった人だなぁと苦笑しながら、アリスはテレビをつける。
「いえ、どうやら所有権を放棄した素材がたくさん地球にはあるみたいなので、そこから補充をしています」
ん?となんでテレビをつけたのかなとカナタが首を捻ると録画であったのだろう映像が映る。
それはレポーターが森林の中で、誰かにインタビューをしている様子であった。マイクをつきつけて深刻そうな表情を浮かべて尋ねているが、その内容はというと
「では、ご主人。この多くの粗大ごみを不法投棄されているのに大変お困りということですね?」
「はい。ここ最近は冷蔵庫やテレビなどを捨てていって、回収するにも費用がかかり大変なんです………」
困り顔ので語るインタビューされている男性が答えていると、場面が移り変わり山と森林に捨てられている粗大ごみが映りだされて
「このようにご主人は不法な粗大ごみの投棄に大変お困りです。良心があるなら、このようなことは起こさないと思いますが、どうでしょうか? スタジオさ~ん?」
そう言ってスタジオに場面が移り変わるところで映像をアリスはぽちりと止める。
「このように困っている人たちがいますが、それはなんとお宝の山をいらないと言っているんです。すごいですよね、この地球って」
腕を軽く組みながら、ソファに深く沈み込みうみゅうみゅと愛らしく頷くアリスはそのまま今やっていることを説明する。
「なので、私が回収しているんです。資源は仮令晶石関係の鉱石でなくても、精製が面倒ですから回収すれば多様に使えるです」
その言葉に驚いて、カナタはスマフォを取り出して最近のニュースを調べ始めて呟く。
「不法投棄の話を聞いたことがあるよ! でもそれは不法投棄がされて困っているという話じゃなくて………」
望みのニュースが見つかり、アリスへとスマフォを見せて目を輝かせるカナタ。
「各地にて不法投棄されていた粗大ごみが一夜にして消えていく! なんのミステリーか? もしかしなくてもアリスちゃんが原因なんでしょ!」
これだよ、これ!と得意げに教えてくるカナタにアリスは簡単に隠すこともせずに頷く。
「はい。所有権を放棄されているとはっきりと表示されていたので回収させていただきました。今夜も回収予定ですよ」
「どんな風に? どんな風に? 未知の技術かな? 私も見に行っていい?」
興奮するカナタへとニコリと可憐な微笑みを見せてアリスは答える。
「いえ、リモートでの回収ですから、現地にはいきませんよ。この子たちが集め廻っているんです」
ぱちりと指を鳴らすと、アリスの後ろから空気から滲み出すように2メートルはあるカマキリが現れる。もちろんただのカマキリではなく、顔部分はバイザーがかぶさっており、皮膚も鉛色でありメカニカルな感じを見せているし、光のラインが身体を走っている。そしてなにより恐ろしいのが鎌部分がクリスタルみたいな半透明な感じなのだ。
それを見てカナタは驚きで悲鳴を大きく上げた。
「きゃー! 凄い! これロボットだよね? 回収用工作ロボット? 凄い、凄いよ!」
悲鳴は悲鳴でも喜びの悲鳴であるので、この娘はやばい娘かもと鏡はカナタの様子を見てドン引きしてきた。動じない図太い精神に、高い戦闘力。この娘は侵略されるかもと言ってきた時も嬉しそうだし倫理観がどうなっているのかと心配すらしてしまう。
「これはお安い資源回収ロボットのインスタントカマキリ君です。何台かありますので、今夜一緒に資源回収のゲームをしませんか? 自動ではないので操作の必要があるのです」
アリスがにこやかにただ働きをさせようとカナタへと提案して、無論、カナタの返答は決まっていた。




