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ゲームの国の異世界アリス〜異世界と日本を行き来してゲームを楽しみます  作者: バッド
13章 夏休みの大冒険?なゲーム少女

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173話 属国ができたゲーム少女

 真夏である。さんさんと陽射しが降り注ぎ、アリスシティでは、あははと子供たちが笑顔で海水浴を楽しみ、あらあらと大人が浜辺でのんびりとビールを飲んでいる。海の家には具のない焼きそばや、ルーしかないカレー、麺が伸びたラーメンが売られており、多くの人々が押し寄せて舌鼓をうっており、店主は汗だくだ。


 少し離れた岸壁には釣り人がのんびりと釣り糸を垂らして、魚を釣っており、アイスキャンディー屋が浜辺で売り子をやって歩いている。ファンタジーにあり得ない光景であるが、街の娯楽施設として海水浴場と釣り場をアリスが設置したので仕方ない。なんだか日本めいているが、仕方ない。


 ゲームの力で設置された娯楽施設のために、普通ならば恐れなくてはいけない水棲の魔物の襲撃もない。特殊フィールドで覆われており、侵入しようとする敵はまずそのフィールドを破壊しなければならないが、この世界の浅瀬に住む程度の魔物では近づくこともできなかった。


 なので、皆は安心して海水浴を楽しみ、釣りにて今夜の一品を増やそうと頑張っていた。


 そんな夏真っ盛りのアリスシティだが、アリスの住む屋敷は緊張状態となっていた。


 様々な調度品が置かれて、シックな内装の応接間にて、人間族とナーガ族が相対していた。ナーガは下半身が蛇のために、にょろりんととぐろを巻いて椅子に器用に座っている。


 この間会った老ナーガオハラと、その部下の2人。外交官なのだろう文官2名。


 対するのは、アリスとおっさんモードの鏡、そしてシグムントと目をキラキラと輝かせるカナタである。


 緊張気味の空気が漂う中で、ガチガチの状態でメイドがアイスココアとお茶請けのショートケーキを置いていく。メイドが去ったところで、鏡が空気を破り、口を開く。


「それで上手くギゲン王を説得できたのかな?」


 クールでダンディな男である鏡はニヒルに笑みをうかべてオハラに視線を向けて、アリスは早くもショートケーキをパクパクと食べ始めた。


「はい。アリス様にはこちらを献上するとのこと。そして、イーマ王国はアリス様に毎年朝貢を行うこととします」


 オハラは銀の箱をテーブルに置き、羊皮紙の巻物を見せてくる。びっしりと書かれているのは、毎年行う朝貢の内容だろう。


 よくぞ神器を手放して、朝貢をするようにまで説得できたものだと、鏡は感心した。よほど能力の高い王でなければ決断はできまい。だって、貴族たちの反発だって有るのだ。ナーガ至上主義をとってきたのに、人間族に頭を下げることを決心したものだ。


「これはなんですか? 蓬莱の桃盃?」


 そんなおっさんの考えは気にせずに、アリスはサッとプレゼントを貰えた子供のように銀箱を開けて中身を確認する。ふわりと桃の匂いが開けた銀箱から薫ってきて、鼻をくすぐる。中には木でできた簡単な器が入っていた。


「はい。これは神器蓬莱の桃盃。1年に一度、その盃に満たされる甘露を飲めば、いかなる病や毒、肉体の欠損すら癒やす聖杯でございます」


「レベル100の回復アイテムですね。目減りしないのは良いことです。ありがとうございます。盗賊団の更生にて、イーマ盗賊団のクエストは終了となりました」


 やったぁと、聖杯を翳して喜ぶアリス。その可愛らしい笑みは見惚れる程だ。


『鉄竜神の復活。イーマ盗賊団を倒せ! クリア!』

『報酬:シュウの神木Ⅲ1D、シュウの樹液Ⅲ1D』


完全クリアとなったのか、ログにクエストクリアと表示がされる。


「やりましたよ鏡。クエスト報酬は、シュウの神木Ⅲと、その樹液が1ダース。さっそくこのアイテムに使ってみましょう」


 150レベル以下の木製のアイテムの品質を1段階高めるシュウの神木Ⅲ。それをアリスはさっそく使ってみる。蓬莱の桃盃にトパーズのような煌めきを持つ小枝を亜空間ポーチから取り出すと、ためらいなくザクリと突き刺す。


 パアッと蓬莱の桃盃は光り輝くと、木の貧相な作りから、複雑な木の意匠が掘られている金色の器へと変化した。


「ありゃ。修復スキルも発動しましたか。これで1年に1回が、1か月に1回に回数が変化しました。やりました。レアアイテムですよ。まぁ、レベルが100以下しか効果がないので、私には意味はありませんが」

 

 これは初めて見るアイテムだと、亜空間ポーチの中身を確認したあとに喜ぶアリス。かなりのアイテムが仕舞われているので、持っていたかもしれなかったので。


 同じようなアイテムはたくさんあるが、それでも嬉しいとアイテムコレクターアリスは亜空間ポーチに仕舞い、早くも倉庫の肥やしに変える。たぶんもう使うことはないに違いない。


 その様子をおっさん以外は唖然として見ていた。オハラ以外のナーガは敵意のこもった目つきをしていたのだが、アリスの行ったことに青褪めて、目を泳がす。もしかしたら神罰を受けて殺されてしまうかもしれないと恐れたのだ。まったくアリスは気にしていないが。サブクエストのメインキャラの部下は石ころと同じ感覚のアリスだからして。


 傍目には神器の真の力を呼び起こしたように見えたのだ。神器の力を呼び起こす事ができるなど、神しかいないとナーガたちは確信した。そのため、ますます恐れおののくのであった。


 たとえ、目の前の少女が水着姿であろうとも。アリスはセパレートタイプのピンクの可愛らしい水着を着ていた。自分が作った海水浴場で、海の家を堪能し、釣り場でめいいっぱい魚を釣って楽しむ予定だからだ。


 なので、アイテムだけ貰ったら、サッサとイベントを終わらせようと画策しており、相手は馬鹿にされていると内心で怒っていた。


 怒っていた、だ。既に過去形である。今はその力を見て、神は全くナーガ族を気にしていないと悟っていた。オハラでさえも、眼中にあるかどうか。部下たちのことは全く気にしていないのは明らかであり、その態度はなるほど傲慢で神に相応しいと痛感していた。


「しかし神器を渡して良かったのか? 王様は王権のピンチなんじゃない?」


 一応鏡は勉強した。シグムントが教えてくれた内容は王権には神器は欠かせないとか。持っているから王様というわけにはならないが、持っていなければ、王権は認められないとか。王権神授説から成る話だろうと納得した。


「いえ、陛下は実はもう一つ神器を持っております。なので問題はありませぬ」


 神器同士の戦いは絶対にある。先に使わせて、無駄うちをさせる作戦が一般的だが、やはり持っていたらしい。


「ギゲン王はいくつも神器を持っているのですな」


 アドバイザーとして席についていたシグムントが眉を潜めて尋ねると、コホンと咳払いをオハラはする。


「どこの国も隠している神器はあるかと」


「たしかにそのとおりです」


 そうして飄々と答えるオハラに苦笑をして、シグムントは押し下がると、アリスに顔を向ける。もしもアリスがこの大陸に訪れていなかったら、トーギ王国は侵略されていたかもしれなかったと、アリスに感謝の念を送る。


「アリス様には感謝の念に耐えません。本当にありがとうございます」


「そろそろ海水浴場に行っても良いですかね?」


 その想いはまったくアリスには届かなかったが。アリスはショートケーキを2皿食べ終えたので、サッサと海の家に行きたいのだ。ソワソワと子犬が散歩を待つようにしちゃう。


「朝貢はどうする? 俺はこの記載されている量で良いと思うが。どうせ少な目に書いているんだろうし遠慮なく貰おうぜ」


 いつの間にかなくなっていた自分のショートケーキのおかわりを鏡はメイドに頼みつつアリスに尋ねる。少な目と聞いてオハラの連れている文官の肩が震えたので図星なのだろう。


「朝貢ってなんですか?」


 アリスは朝貢自体知らなかったので、コテンと首を傾げる。どんなイベントなのだろうとおかわりのショートケーキをメイドから受け取りながら。


「朝貢ってのは、盟主に贈り物をして、守ってください、権威付けをさせてくださいという年に1回のイベントだ。こちらも返礼品を渡す必要があるし、相手の損にはならない。どうせ大勢の商人と一緒に訪れるだろうからな。きっとアリスシティの商品を沢山買い込んで帰るはずだ。一種の経済振興策というわけ」


 おっさんはドヤ顔で人差し指を振りながら、予め調べておいた内容をそのまま繰り返して説明する。シグムントやオハラたちがその説明を聞いて、この男は博識だと感心していたが博識なのは、ネット情報である。


「ふむふむ。わかりました。年1のイベントと。了解です。受けましょう。それでは海水浴場に行ってきます」


 話は終わりだよねと、お腹ペコペコアリスは口元の生クリームを拭うと外に出かける。もちろん、メイドが再び持ってきたショートケーキのおかわりを受け取って、3口で食べて、てってけと。


「ちょ、ちょっと待ってアリスちゃん! ここは蛇の人と戦争になるところじゃないの? それか王様を救いに行くとか。カナタとありすえもんの異星旅行のメインイベントは〜? 私、接着剤を使わないプラモなら作れるよ〜」


 だいぶアリスに毒されつつある修羅の国からやって来たカナタが慌てて立ち上がり、アリスを追いかける。非日常を求めるカナタにとっては血みどろのイベントを欲しているのだろうか。彼女をこのまま付き合わせてよいか甚だ疑問である。


 物騒な発言を残してカナタが去り、オハラたちナーガは鏡たちを恐怖の面持ちで見てくる。


 さすがに少し気まずいなぁと、鏡は嘆息する。アリスを教育した者の顔がみたいよと思うが、自分なので文句もいえない。十六夜国の国主の前に水着で謁見したこともあるのだ。あれは浮いていたが、現実だとどうなることやらと、ゲームの国々がないことに安堵もした。


「あの娘は武門の家系でね。アリスとは仲が良いが少しだけ物騒な物言いをするんだ。武門の功績は戦いだからな」


 外大陸の友人カナタ。神であるとオハラたちは確信しているが、大神官を兼ねているらしいので、現人神なのかとも思い、コクリと頷く。武門の家系はたしかにいつも物騒だ。戦いでしか存在意義を示すことができないと思っている家門はイーマ王国でも少なからず存在するので。


 そして、オハラはあの娘の口車にアリス様が乗らないようにと祈りながら、神殿騎士団長にお願いをする。


「アリス様の国に朝貢をすることの返礼といってはなんですが、関わりがあることの証明を頂きたいのですが。今回既に貢物は持ってきていますゆえ」


「あぁ。そういうのか。ん〜、ならこれで良いだろ」


 おっさんは考え込むとすぐに立ち上がり部屋を出る。そうして、しばらくすると戻ってきて、一本の金の棒をオハラに手渡す。


「これは?」


「手に持って、横のボタンを押すんだ」


 怪訝な面持ちのオハラに鏡は説明する。不思議そうな顔となり、オハラは柄の横にある小さな水晶を押す。水晶内が輝くと、金の棒から光の旗が現れた。


 半透明であり、アリスの紋章である金銀の鎖が絡む宝石をあしらった旗だ。本物の布のように質感があり、美しくそして神秘性を感じられた。


「これなら複製は不可能だろう。他国への牽制に使うんだろうから、持ちやすくて良いだろ」


 鏡の言葉にオハラは少しだけ怯んだ顔となるが、すぐに内心を隠すと深く頭を下げる。


「ありがとうございます。これで陛下に報告できます」


 感謝の言葉と共にオハラたちは陛下のもとへと帰還するのでと帰って行くのであった。鏡たちはあっさりと見送った。なにか考えているみたいだけど、特に気にすることもないかなと。対岸の火事なら問題なかろうなおっさんなのである。アリスは対岸に火事があったら川を泳いで突撃するだろうけど。


 オハラの考えは、神とは戦わずに、イーマ国が周辺地域を統一することだった。トーギ国は諦めるが、東山脈にドワーフ王国、北には獣人の国がある。


 見たところ、神は支配欲はなさそうだとオハラは看破した。そのためにギゲン王に方針転換を申し出たのだ。東と北を制圧し大回りとなるが、トーギ国を迂回して中央聖地を目指す。神は変われど、その力は利用する。後ろ盾とすれば属国として助けを求めることもできるだろうと。


 形式上、属国となるだけであり、アリスシティを不可侵国として、その舶来の物を交易に使い金を稼ぎ国を富ませ、大陸を統一する。それで問題ないとギゲン王に説明し、王はさすがはオハラと褒め称え、神器を手放したのである。攻撃用ではないので、そこまでの価値はないと考えて。


 オハラはこれからの方策を考えながらアリスの紋章旗を手にして帰還の途につくのであった。


 鏡はといえば、オリハルハの紋章旗だが、いくらでも貰えるゴミアイテムだから良いよねと考えていた。


 オハラの作戦が上手く行くかは、今は定かではない。

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― 新着の感想 ―
[一言] ワンダーランドではなくオリハルハの紋章旗かぁ、となるとなにかのフラグが立ちそうですな!
[一言] 支配欲はないけど物欲はMAXなので昌石鉱山とかあったら突撃していきますぜ。
[良い点]  なかなかひと筋縄では行かない策謀の国イーマ王国(´ω`)しかし気がついたらドワーフの国にも獣人の国にもアリスの光る旗がパタパタとはためいて侵略なんて無理だったりしてwww [気になる点]…
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