16話 ゲーム少女の墓場探索
墓場へと入ろうとすると、扉がありその前に兵士が2人立っていた。墓場の柵は3メートルはあるだろうか。そしてそれを塞ぐように分厚い木の扉が塞いでいた。
「なるほどなぁ、アンデッドが生まれる土壌の世界は、墓場は厳重に見張らないといけない場所という訳だ」
感慨深く鏡が頷いて、その様子を観察する。
「それは、辺境では同じではないでしょうか? ガストが生まれる土壌がちょこちょこありましたからね」
ゾンビと言われたのでピンとこなかったが、同じように他の惑星でも退治の依頼は受けていたのだ。
その返答を受けて、鏡ものんびりと返答する。
「まあなぁ。特に苦戦はしないけど、名声度上げに必要だったからなぁ。名声度はマスキングされているから、わかりにくいんだよな。名声度が高いと発生するクエストを目安にしていたもんだ。っていうか、マスキングされたデータ多すぎだったよ。あのゲーム」
「相変わらずゲーム扱いするんですね。もしかしてフェアリーアストラルは現実をゲームと考える慣習でもあるんですか? なるほど、そう考えるとしっくりきます。特におっさんフェアリーはそうなんですね?」
さり気なくディスるアリス。ゲームと現実を一緒にしてはいけませんよという注意をするゲーム少女である。
「そこにおっさんはいらないだろ? 俺はおっさんと美少女の差別を感じるよ? 差別してない? ねぇ、凄い差別してない?」
ディスられていると感じて、問い詰めるおっさんフェアリー。
「それじゃ、鏡は美少女フェアリーとおっさんフェアリーが困っていたらどっちに声をかけますか? 私は両方に声をかけますが、とりあえず美少女からです」
ジト目になり言い返すアリスである。その意見はブレることはない。さすが今まで鏡の趣味通りに動いていたゲーム少女であった。
「うぬぬ、たしかに美少女だけど、それは仕方ない。仕方ないよね、それは差別じゃなくて、格差だから………ハッ!そういうことか!」
答えながら真実に気づき崩れ落ちる。尊い真実、それは
「俺が格差だと思っていたからかよ! もぉ〜、昔の俺のバカバカ」
「安心してください。私は鏡のことを最初からバカだとわかっていました。それどころか少し危ないやつかなとも思っていました」
すかさず慰めるためにフォローに入るアリスだが、それははフォローではない。トドメを刺すというやつである。
そんなアホなコントを開始するアリスたちを放置して話しは進む。
墓場の門兵が、こちらに確認するように声をかけてきた。
「あんたらがゾンビ退治の傭兵かい?」
「はい、安心格安で確実に依頼をこなす魔風アリスに全てお任せ下さい。ゾンビとかいうのも、あっさりと倒しますので」
すぐにアピールするために、一歩前に出て微笑みを浮かべて挨拶をする。もしかしたら門兵から追加のクエストを依頼されるかもしれないからだ。夜に慌てていたから、指輪を落としたとか財布をおとしたとか。
報酬がもらえるなら、悪事でなければ大体引き受けるゲーム少女である。悪事はマイナス要素が多いので、本当に珍しいアイテムとか報酬とかスキルのアンロックがなければやらない。
そんなアリスをじろじろと上から下まで眺めて、門兵が不安そうに再度尋ねてくる。
「人間族の子供が傭兵? あんたらが片付けるのかい?」
アリスを無視してチャシャたちに声をかける門兵。どうも依頼に一緒についてきた子供扱いされている模様。
チャシャが慌てたように手を顔の前で振りながら説明する。
「この人は神官様なんです。なので、いつもと違いあっさりと片付くはずですよ」
「ほぉ~、この幼いこの子供が神官? 本当に?」
完全に疑っている表情である。まぁ、無理もないかもしれない。アリスは外見は子供である。ゲームでは外見での差別はなかった。さすがにそこまではフォローしていなかったので、どんな格好でも気にされることは無かったのだ。
だが、現実ではアリスは子供にしか見えない。しかも幼いという慣用句がつく感じだ。
「えっと、ゾンビ退治に見届け人が来るんですよね? それならすぐわかりますよ」
チャシャが疑いを晴らすために答える。それを不思議そうに聞くアリス。首を傾げて尋ねる。
「見届け人ってなんですか?」
「あぁ、ゾンビ退治にはちゃんと倒したか門兵さんがついてくるんです。そうしないと他の魔物みたいに、部位を持って来いというのも無理な話なので」
アリスの疑問に、教える事ができて役に立っていると思い嬉しそうに答えるチャシャ。
「はぁ、クエストボードを見ればクリアしたかどうかなんてわかると思うんですが………」
依頼者だって、自分のクエストボードを見れるのだ。それを見ればいいのではと思う。
「アリス、この惑星はクエストボードが無いんだ。だからこうやって見届け人が必要なんだろ」
フォローをおっさんフェアリーがするが、その返答を受けて、アリスは本当に変わっていると思った。
「私のクエスト一覧には出ているんですが。これを見れないという事ですか」
不思議そうに首を傾げてアリスは呟く。
ほいっとクエスト一覧を見ると、ゾンビを20体退治せよ!と記載されていた。0/20体撃破中と書いてある。ちなみに報酬は記載されない方式だ。
そのステータスボードは鏡も見れたのだろう。目を驚愕で開いて口をアホみたいに開けていた。ステータスボードに貼りつくように近づいて驚いている。
「えぇぇぇ! なんでクエストが一覧に乗るわけ? この仕組みどうなっているわけ?」
「いつもそうじゃないですか。なんでいまさら驚くんですか?」
クエストを受けると一覧に出てくるのはいつものことだ。もう一つクエストは記載されている。おっさんフェアリーと一緒に旅をしよう!と、そこには表示されていた。
「まじかよ! え? 俺はクエスト扱い? てか、なんで名前じゃなくて、おっさんフェアリーなの? 俺の名前はおっさんフェアリーという名称にも負けるわけ?」
その記載を見て、慌てふためき、驚いていながら、怒っているという器用なことをする鏡。面倒なので、もう放置しておく。このおっさんフェアリーはいつも何かに驚いているのだから。
「ですが、ステータスボードすら見れないのですか………。ギャラクシーライブラリーに接続できない人たちは哀れですね………。わかりました。それでは私の華麗なる活躍を見ていてください。見学料は取りませんので」
えっへんと胸をはり、自信満々に笑みを浮かべる。まだゾンビを見たこともないのに、凄い強気なアリスである。所詮初期のクエストだと、高を括っているのがわかる。
不安顔を消さない門兵を後ろに引き連れて、墓場に入るアリスであった。でも何故かチャシャたちもついてくるのだが。
テクテクと歩きながら、チャシャたちへと顔を向けて尋ねる。
「もう墓場の位置はわかりました。後で地図も手に入れないとですが、それでも歩いた場所は記載されるので、帰りも心配いりませんよ?」
マップは地図が無いので真っ暗であるが、歩いた場所は明るく表示されている。なので、宿屋まで戻るのは楽勝である。
その問いを笑顔で返して、力こぶを見せるチャシャたち。
「えへへ。人間族だと力がないからゾンビに近寄られると危ないかなぁって思って。前衛を私たちが務めるよっ!」
「そうそう、ゾンビは一応力があるから、ひ弱な人間族だと危ないだろ?」
「僕たちならゾンビたちの足止めくらいできるからさ」
皆で前衛を務めてくれるらしい。その返答を聞いて考えこむアリス。鏡も考え込む。
最初に声を発したのは鏡であった。疑問の表情で聞いてくる。
「なぁなぁ、なんだか変じゃないか? なんだかノーマルニュートってディスられてない? さっきの酒場でも思ったけどさ」
「そうですか? 気づきませんでした。そんなことより、この人たちへ報酬を与えないといけないのでしょうか? 迷うんですが。あげた方が良いですかね?」
「………あ~、お前ならそう言うよな………。報酬はいらないんじゃね? この子たちは下心があるみたいだしな」
アリスの悩みが金だとわかり呆れる鏡。まぁ、今気にすることでもないかと気を取り直す。
「ほ~。下心ですか。なんでしょうか? 恐らくは新たなクエストですよね? 良いですね。良いですよ。楽しくなりそうです」
鏡の言葉を斜め方向に理解したアリスは嬉し気になり、安心したようだった。
敵を探すことに集中しようと考える。すでに日が落ちきり夜となり暗闇が支配する世界となり始めた。だが、アリスには関係ない。仮令夜でも薄暗い程度である。ゲーム仕様の娘なので。
意図的に暗くされている場所以外は暗闇でも問題ない便利さで目が見える仕様である。なので、てってこ前に進むが他の面々はそうではない。慌てて松明をぼろいずた袋から取り出して、燃やし始めた。
周りが多少明るくなるが、それでもそんなに明るくはない。それなのに足元が見えているようにてってこ進む少女へと慌てて声をかける。
「危ないですよ、アリスちゃん。この暗闇だと全然前が見えないですし」
ほえ?と不思議そうに振り返り、松明をつけている人たちを見る。
「え? この程度の暗闇で見えないのですか? そうなんですか………」
「え? アリスちゃんは見えているんですか? エルフやドワーフではないですよね?」
「違いますけど? 私は見た目通りです」
チャシャが不思議がるが、こっちが不思議だよとツッコミを入れたいアリスである。でもハンターじゃないとそうなのかなと軌道修正する。いや、でも他の人でも普通に見れていたような………。気のせいだったかな?
まぁ、いいかと歩みを進めると死体が歩いているのが見えた。ボロボロの服を着ているアストラル体だ。
「なんだ、寄生ガストアストラルではないですか。この惑星は別名でアストラル体を言う事が多いのでしょうか」
困ったなぁと思いながら、ゾンビとやらに手を翳すゲーム少女であった。




