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ゲームの国の異世界アリス〜異世界と日本を行き来してゲームを楽しみます  作者: バッド
ゲーム少女は旅立つ

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14話 ゲーム少女は入団試験を受ける

 薄汚れた宿屋兼酒場はシーンと静まり返っていた。今しがた新米傭兵が連れてきた新人の入団希望者の言い放った内容が信じられなかったからである。

 

 そんな静寂に包まれた酒場の空気をガン無視してアリスは当然入れてくれますよねと言った表情で、ぱっちりお目々を団長らしきキャットニュートの女性へと向けていた。


「おぉ、凄い発言だな………。ゲーム内ではこういう契約がされていたから、プレイヤーは自由に行動できていたのか……」


 なぜかドン引きの鏡。ハンターなら当たり前の契約なのに知らなかったのだろうかとアリスは思った。一般の契約とは違うハンターの契約は自由に行動できるためのものである。


 高位のハンターは数千人の兵よりも強い。しかも古代遺跡から持ってくるロストテクノロジーの部品や、強大なアストラル体を倒した素材で建造した艦は、一軍に匹敵する。その強大な力を確保しておくために、いつでも出入りできる自由すぎる契約を各国や各組織が結ぶのは当然の帰結であった。


 それなのに、目の前の団長は半笑いの表情で呆れている。もしかして、この辺境ではハンターに対する扱いも知らないのかと不安になってきた。


「………あ〜………。それはあんたに有利すぎる契約だと思わないかい? お嬢ちゃん?」


 やはり知らないのかと嘆息するアリス。この惑星でハンターが暮らすのは大変そうだ。恐らくはこんなに慣習やら文化が違うと誰も寄り付かないに違いない。今までなら、どんな辺境でも知っていた共通ルールであるからして。


「当然です。私はバウンティハンターですよ? どうやらこの惑星では知られていないようですが、この契約内容はバウンティハンター内では当たり前ですよ?」


 胸に手をあてて、自信満々の表情で教えてあげるアリス。今後くるハンターのためにも、この雇用条件は必須な情報なのだから。


「ほ〜。だいぶ自信がある人間族の小娘みたいだね。良いだろう、それならその力を試そうじゃないか? アタシの条件をクリアしたら、その契約で雇用してあげるよ」


 腕を組んでニヤリと悪戯そうに笑いながらも、目は凄んで威圧的な女団長。


 ほらきた、入団試験クエストですねと、内心でアリスは思った。もう何度もやってきた内容である。面倒なクエストでなければ良いんですけどと、なんのパターンか考える。討伐系かな?お使い系かな?それとも物納系?


「入団試験は簡単だ。3日以内にフワうさぎを10羽持ってくること! 仲間を頼んでも良いよ。それができれば、その契約で認めてやろうじゃないか。できない場合は、普通の契約で入って貰うよ? それでいいかい?」


「わかりました。そのクエストを受領します」


 その言葉にコクリと素直に頷くアリス。物納クエストですねと受領した。


 なんだ、知らないフリをしていたけど、知っていたんですねと安心する。要はクエストクリアで、自由な行動を許す入団をする契約をするよという、いつもと同じ内容であった。


 回りくどいんだからと思いながら、簡単なクエストそうですねと予想する。


「フワうさぎなんて、知らないぞアリス! お前知っているのか?」


 慌てた様子で鏡が聞いてくるが、もちろん知らない。アリスだって初めて聞いた動物だか、アストラル体だ。


 だが、知っていそうな人を知っている。アリスは後ろで思わぬ展開になって、慌てているチャシャに声をかける。


「チャシャさん、すいません。フワうさぎってなんですか?」


 可愛らしく小首を傾げながらの問いかけ。その問いかけに驚いた表情になり、早口で聞き返すチャシャ。


「えぇっ! 知らないで入団試験受けたの! フワうさぎっていうのはね。耳がふわふわの毛の塊みたいなうさぎなの。凄い感知感覚を持っていて敵を感知したら凄い速さで逃げちゃうの。罠でもない限り倒せないと言われているうさぎだよ!」


「はぁ、罠だけで捕まえるのですか。たしかに面倒なクエストですね。実物はどこで見れますか?」


「えっと、肉屋ならあるよ。フワうさぎは白い肉でね。凄い柔らかいから高級肉として、いつも売ってるよ」


 ふんふんとチャシャの答えに満足する。だいたい予想通りだ。というか、予想外なことなど何もない。


「では、その肉屋に案内して貰えますか? 実物を見てみたいので」


「いいよっ! 私も狩りを手伝うよ、命を助けられたしね」


 両手を胸の前でギュッと握りしめて、チャシャが助けようと提案してくる。それを見て、クロームもブチーダも仕方ないなぁという表情になる。


「しょうがねぇなぁ、俺も手伝うよ」


「そうだね。僕たちも手伝います。協力してフワうさぎを倒しましょう」


 ふむとアリスは考えて言葉を返す。


「……まぁ、上手くいくか見てからですね。それでは案内をお願いします、チャシャさん」


「うんっ! 肉屋さんならフワうさぎがいる場所を教えてくれるかも! いこっか!」


 チャシャが張り切って、案内を始めるのでアリスはのんびりとついていくのであった。




 酒場はアリスが出ていった途端に爆笑の渦に包まれた。


「団長さん、あのテストは酷いぜ!」

「クリアできるわけがねぇ」

「あいつら可哀想に。無駄に森を歩き回る羽目になるな!」


 酒場にいる傭兵が囃し立てるように、言ってくる。無理に決まっているクエストだからだ。


「はん! 世間知らずな娘みたいだから、少し痛い目にあわせるだけさ。3日後に泣いて帰ってくるだろうよ」


 女団長は自分の指定したクエストの意地の悪さに自分自身も苦笑した。


 狩れるわけはないからだ。狩れても偶然で1羽か2羽といったところ。明敏な感知能力を持つフワうさぎは凄腕の狩人でも簡単に気づかれてしまう。狩る方法は先程チャシャが言ったとおりに、罠で狩るのが主流だった。


 肉屋に聞いても、猟師に聞いても、いる場所など教えてはくれまい。貴族も食べる高級な肉は猟師の大切な収入だからだ。


 変な娘だが、これであの自信満々な鼻をへし折れるだろうと、女団長はマスターに酒を頼もうとした。未だに笑い話として団員が話している中で苦笑しながら飲み始めた。


「あの小娘が神官って、本当だと思うかい? ペイド」


 自分の片腕足る黒猫人のペイドに尋ねる。ペイドは無精髭を手でジャリジャリと擦りながら答える。


「恐らくは嘘でしょう。チャシャが食いっぱぐれた人間族の少女を拾ってきたが、入団させる力がないので神官と嘘をついた………。そんなところだと思いますよ?」


「そうだよねぇ。来ている服も見たことはないが、安そうだ。神官なら幾らでも稼げる手段はあるはずなのにね……。チャシャもすぐバレるような嘘をつくとはね。あの娘は飯炊きにでも雇うかい?」


 フッと笑うペイドがこちらをからかうように見て肩をすくめる。


「お優しいことで。まぁ、団長の判断に従いますよ、俺は」


「なら決まりだね。マスター、あの娘を鍛えてやっとくれ」


 マスターがその言葉に頷いて話は終わった。あとは次の依頼をどうするか話していたときだった。


 ギィと扉が開いて、あの嬢ちゃんとチャシャたちが入ってきた。もう諦めたのかい?と早すぎる帰還に苦笑するが、チャシャたちが持っている物に気づいて、表情を凍りつかせた。


 チャシャたちは、フワうさぎを持っていた。しかもきっちりと10羽。なんだか戸惑っているが、あれは本物であるとわかる。何しろひと目で解るフワフワとしたうさぎ耳をしているからだ。


 皆がそのフワうさぎに気づいて先程のように静まる中でカウンターにフワうさぎが置かれた。


 そして黒髪の美少女は女団長へとにっこりと微笑んで言った。


「これでクリアですね。やっぱり物納クエストは簡単で良いです」


 皆が驚愕する中で平然と少し楽しげに告げてくるのであった。




 ざわめきはじめた酒場の面々を見ながら、のんびりと物納クエストは楽でいいなぁとアリスは考えていた。女団長がフワうさぎを見て表情を凍りつかせるなかで、ジャージの袖をチャシャがクイクイと引いてくる。


「あの……神官様? こんなやり方で良いのでしょうか?」


 おずおずととした表情で罪悪感を持っていそうだ。まぁ、一般人ならこんなものかなと思いながらアリスは答える。


「当たり前です。ハンターのほとんどは物納クエストはこうやってクリアします。それを狙って獲物を集めているハンターもいるぐらいです」


「し、神官様のいた土地は凄いところだったんですね……」


 クロームもブチーダもドン引きしているが、こんなやり方は昔からのものだとアリスは思っていた。


「ど、どうやってこんなに短時間で狩ってきたんだい! まだ森林に辿り着くことすら難しい時間だろ!」


 物納クエストをクリアしたのに、珍しく怒鳴ってくるクライアントたる女団長。なので、アリスも教えてあげる。


「買いました」


「は?」


 その一言で固まる女団長。なので、もう一度教えてあげる。


「買ったんです。肉屋を数件回って買いました。物納クエストはこれでクリアとなるから簡単で良いですよね」


 そう答えて、再びにっこりと微笑むアリスであった。





 なんじゃそりゃと騒ぐキャットニュートを尻目に鏡はアリスの性格を修正していた。アリスはフワうさぎを買い取って物納クエストを終わりにした。それは鏡のゲーム時の行動そっくりであった。


 ゲームをしばらくすると金は結構増える。そして物納クエストで簡単な物は市場やプレイヤーが売っていた。時間もかかるし弱い敵を倒すために探すのも面倒くさいので、買い取った物を納めてクリアとしていた。物納クエストで名声度を上げたりする際の手段でもある。


 それは今までのアリスのケチぶりと反対な行動だ。ただし現実ならだ。


 ゲームでは、そういう矛盾した行動を多々とる。ようはケチなのは味方や敵からできるだけ金やアイテムを絞りとり、レベル上げには消耗品を使うといった金のかかる部分。


 しかして、そこがケチなだけで、あとは湯水のように金を使うことも多いのだ。戦艦や家具に武器防具。好感度がある相手への最大好感度を稼げるための高価なアイテムにレアな敵を倒すための消耗品の消費費用。


 なるほどねぇと、空中に浮きながらおっさんフェアリーは、騒ぐ酒場を眺めるのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] うん、心当たりあるから金でイベントをすっ飛ばすアリスの行動には納得! [気になる点] 女団長さん、ふわウサギはこの後どーなったんですか?スタッフが美味しくいただきましたか?肉屋にまた売りに…
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