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ゲームの国の異世界アリス〜異世界と日本を行き来してゲームを楽しみます  作者: バッド
10章 混乱の時代が始まる

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107話 天才ではないゲーム少女

 開発作業室にてダンディでかっこよくて強いと噂される神聖騎士団団長の啓馬鏡はパソコンの前に座るアリスの様子を見ていた。地球で騎士団長の肩書は名乗らない方が良いと思われるが。


 もちろん、おっさんは名乗らないが、腕を組みダンディっぽさは見せていた。たぶん、恐らく、メイビー、ダンディに見えていると思いたい。


 アリスは手渡されたプログラム説明書をざっと読んだあとに、パソコンでブラインドタッチでキーをタタタと打ち続けている。


 と、カナタには見えているらしい。少しだけ気になったので、こっそりアリスはなにをしている? と尋ねてみたのだ。


 カナタは目の前にアリスちゃんはいるのにと不思議そうな表情で教えてくれた。それがアリスの行動である。


 なるほど、変なところはない。天才少女がやる行動だ。アニメや小説で、博士っぽい天才少女がプログラムをあっさりと修正する。そんな光景だ。


 周りの人々も興味深げに眺めているが、別段変なところはない。


 だが、おっさんには見えていた。恐ろしい光景が見えていた。何かと言うと……。


「スキップ」


 アリスは説明書を手にすると一言。そして表紙をペラリと捲って、そのまま机に置きました。そしてパソコンの前で


『改修』


 と一言。


 そして今はパズルゲームをしています。パソコンのモニターには次々とブロックが落ちてきて、それを上手く揃えて消していくと言う所謂落ちゲーだ。


 難易度はベリーイージー。ポンポンとリズムよく積み重ねていき消していくアリス。


 うん、ゲームではそういうミニゲームになっていた。納得の光景である。納得したくはないけど。


 最初は青褪めた。アリスの行動がゲーム仕様だから、周りは驚くだろうと。もはや誤魔化すのは無理であり、アリスに精神支配を使わせようと思っていたが、不思議なことに皆は驚かなかったので、状況を理解した。したくなかったけど。


 アリスのゲーム的行動は他の人には普通の行動と錯覚されている。なんつーか、恐ろしい。たぶん本人しか本来はこの行動は見えていないはずなのだが、魂がリンクしているおっさんだけは同じ光景が見えているのだろう。


 たしかにゲームでもゲームキャラは修理などでミニゲームをしていなかった。ちゃんと修理とかしていたが、あれはミニゲームをやっていたのかもしれなかったのかと驚愕していた。


 と言うか……スキップも聞こえていなかったのかよ……。これ、人との会話でも適用されるようにならないだろうな。


 おっさんが一抹の不安を心に持つのであった。



 アリスはホイサ、ヨイサと落ちゲーをやっていた。ベリーイージーなんて楽勝です。これはハイスコアとパーフェクトを狙いますよと。


 バウンティハンターたる者、いかなるミニゲームもクリアできるのだ。難易度ナイトメアでもクリアできちゃうアリスにとっては楽勝であるのだ。


「パーフェクトアンドハイスコア!」


 クリアをしたので、ふーっと一息つく。良い仕事をしましたと可愛らしい顔を綻ばせて椅子に凭れかかる。


「できました。これでようやく動くプログラムができたので、クエストクリアですね」


「お〜っ。結構苦戦しましたねー。天才少女ちゃんにも難しかったですかね〜?」


 サラスがからかうように聞いてきたので、見ると一時間は過ぎていた。ミニゲームをやると時間が飛ぶのはよくあることなので気にしない。


「ベリーイージーでした。パーフェクトでハイスコアです。改修は完全でその効果は50%アップ。このガラクタみたいなプログラムも多少はマシになりましたよ」


 鏡はミニゲームをしていただけだろとツッコむだろうが、アリスはこのプログラムをミニゲームをすることにより完全に理解していた。なので、普通に処理をしても改修できるのだが、そんな面倒なことはもちろんしないアリスである。ゲーム仕様恐るべし。


「ハハッ。そこまで言えるとはなかなかのものだね。まぁ、この都市はそんな奴らばかり揃っているんだけど」


 白衣のポケットに手を入れながら、ニヤリとからかうように言う守里。エリートたちが住むこの筑波研究学園都市は、アリスみたいな者たちばかりなのだから。


「あのプログラムはテスト用なんですよね? 早くクリア報酬ください」


 たぶん連鎖クエストの自分の力を見せる最初のクエストだから、たいした報酬はないだろうけどと、期待を見せずに言うと


「お嬢ちゃん、お疲れ様。報酬はこのどら焼きとお茶でいかがかな?」


 初老のおじさんがニコニコと、来客用なのだろうテーブルに置いてあったどら焼きとお茶を勧めてくる。


「鏡。この連鎖クエストは期待できますよ。もちろん頂きます。全部食べてもいいんですよね?」


 やったねと、椅子から勢いよく立ち上がり、とてとてとソファに向かい、ポスンと座ると花咲くような笑顔でどら焼きに食いつく。


「むむっ。これがあんこですか。生クリームとはまた違った甘さ。こし餡と粒餡がある? 両方とも頂きます。これは全部私のですよ、カナタさん」


 ガルルと子犬のように唸って、どら焼きを全部両手に抱えて食べるその姿は年相応の幼い少女にしか見えなかったので、周りは生暖かい目でアリスの様子にほのぼのとする。


 そして、サラスたちはというと、出来上がったプログラムを使い、六文銭の起動シミュレーションをしていた。


 ふふふと内心でほくそ笑みながらサラスはインストールが終わるのを眺めている。動かない原因となる構文はすぐに見つかるが、その構文を修正すると、他の構文が動かなくなる。そういった歪みが発生する意地悪なプログラムであるのだ。


 だいたいの人は最初の構文を修正して満足する。そして出来る人はさらに歪みを発見して修正する。だが、それで動くと思ったら大間違い。最後の最後で起動できないように、構文のスペルの間に空白を差し込んであるのだ。


 即ち、動作検証を繰り返さないと、まずわからないのがこのプログラムなのである。


 この意地悪なプログラムはサラスと守里以外クリアしたことはない。そのためにどこで停止するか、興味津々で眺めて、アリスという天才少女の鼻が折れるのを多少悪趣味だが予想していたのだが……。


 予想に反して、素直に起動してしまった。心なしか起動速度が速かった感じもする。


「お〜っ。まさか完全に修正するとは思いませんでした〜。これは私たちに次ぐ新たなる天才の出現でーす」


「それは凄いね。たんなる成績の良い頭でっかちではないんだね」


 サラスと共に守里も感心しながらパソコンのモニターを眺める。そこには六文銭のモニターが表示されている。機体及びシールド状態から、火力管制コマンド。適時行動用アイコンから、マニュアル操作時の切り替えなどなど。


「………」


 守里は感心しながらモニターを眺めていたが、サラスや他のモニターを覗いていた研究員が黙っていることに気づいた。


「どうかしたかい? なにか変なところでもあったのかな?」


 最近は六文銭のモニターを見ることはなかった守里は、レイアウトがだいぶ変わったんだなという感想と共に眺めていたが、他の面々は違った。


「ななな、なんでこんなにアイコンが変更されているんですかー?」


「サラスさんっ! 超電導エンジンの出力レベルが変わっています! 大幅に上がっている!」

「こ、このアイコンはオート? でもマニュアル中心?」

「なんだか……コマンドが簡素化されているし、使いやすそうに……」


 ザワザワと驚くサラスたち。短時間ではそのような改修はできないはずなのに出来ている。しかも各種の性能は大幅に上がり、操作性も向上していそうである。


 信じられない光景であり、信じたくない光景でもあった。このプログラムが今の短時間で作られたとなると、この幼い娘はサラスたちよりも遥かに優秀であるということなのだ。


 ざわめくサラスたちの光景を見て、おっさんも信じたくなかった。修正だけすれば良いのに、なんで改修までしているのか。救われるのは、まだ地球レベルの技術で終わっているところ。アリスは一応自重したらしい。


「褒めてくれても良いんです。追加報酬としてどら焼きを追加してくれても良いんですが」


 ブレない少女アリスはもう食べ終えちゃったと、5個あったどら焼きを全て食べ終えたので寂しそうに空になったお皿を眺めていた。大成功だから、報酬の追加はないかなと、ソワソワもしていた。


 そんな唯我独尊を貫くアリスをちらりと見てから、うぬぬとサラスは叫ぶ。


「実際に使わないとこれは駄目でーす。エンジン効率まで変えるとなれば、実機ではないと対応できませーん。ハンガーに行って、新型の六文銭に実際にインストールして使ってみまーす!」


 そう叫ぶとCDを手にして走り出す。守里たち他の研究員もあとに続いて走って出て行ってしまう。よほどの衝撃を受けているのだろう。


 ガラーンとなってしまった開発作業室にアリス、鏡、カナタだけがぽつーんと取り残されてしまった。


「アリスちゃん、銀河なんちゃらの技術を使ったの?」


「いえ、残念ながらこの惑星ではマテリアルエネルギーは使われていないので使用していません。プログラムも銀河標準の物は使用できなかったですし」


 後ろ手にして、呑気に尋ねてくるカナタに、平然としながら答える。銀河標準のプログラムは電子ではなく、マテリアルエネルギーを使われている。残念ながら使用不可なのだ。


 アリス的には残念だったが、おっさんは胸を撫で下ろして安堵した。そしてカナタは理数系って苦手なんだよねと理解を放棄した。理数系の学生でも理解不可能であるので、その判断は間違いではない。


「無駄な部分を削ぎとって、超電導エネルギーの使用配分を変更しました。それと操作性が呆れるほどに悪かったので、そこらへんを改修しただけです」


「まぁ、その程度なら問題ないだろ。既存技術の改良だもんな」


 問題ないだろ、問題なし。問題ないということで終わりにしておきたいなぁという、おっさんの願いは、もっとクエストが欲しいですというアリスの願いに押し負けて


 こんなプログラムが! とハンガーで実機にインストールしたサラスたちが、信じられない性能向上に驚き、その後しつこく質問攻めにあって夜中まで続いたのでお泊りとアリスはあいなるのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まるで頑種のすーぱーこーでぃねーたーのように颯爽とプログラムを組み直す天才アリスと茫然とする人類最高の叡智たち(´ω`)鏡と読者だけが落ちゲーをハッスルプレイするゲーム脳筋少女に腰が砕けて…
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