表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍神の乙女  作者: ロクイチ
6/42

第6話 開戦


「サイレ司令、間もなく辺境都市バスクに到着いたします」


「うむ、都市の被害状況を報告せよ」


一方その頃、公国軍侵攻の報を受けて出撃した王国軍第2打撃艦隊は、辺境都市バスクへと到着した。

彼らの目に映るのは公国軍の無差別攻撃により、あちこちから煙が上がる無残な姿だった。


「これは、、、、都市のほとんどが破壊されていますね」


「バスク防衛隊とは連絡が取れぬのか」


「はい、現在防衛隊本部に魔通信で呼びかけておりますが、返答はありません」


民間人にも容赦ないベリヤ公国の振る舞いに、サイレ以下王国軍は末端の兵に至るまで、公国への憎悪を

募らせていた。しかし、それを表に出す者はいない。怒りにかられ冷静さを欠いてしまったら、敵の思うつぼ

であるからだ。


「まあ、このツケは公国にしっかり払わせてやるさ。利子付きでな」


サイレの言葉は、王国軍全員の意志だ。その時ガーレ艦橋に防衛隊生き残りからの魔通信が入電した。


『こちらはバスク防衛隊第5魔導隊所属、グラム中尉です。応答願います』


「第2打撃艦隊司令、サイレだ。状況を詳しく報告せよ」


グラムの報告によると、公国軍の大規模侵攻を察知した防衛隊は防ぐのは不可能であると判断、遅滞戦術

をとり敵の足止めをしている間、住民の避難を助けていたそうだ。そして隊は司令以下ほとんどが戦死、

残存部隊は郊外に避難した住民の護衛をしているとのことであった。


「明日の午前には魔導騎兵団が到着する。それまで住民の護衛は頼んだぞ。困難な状況の中、最善を

尽くした防衛隊諸君にこのサイレ、王国軍人として敬意を表する」


『はっ、引き続き任務を続行いたします』


防衛隊の奮闘を知った王国軍はその士気を高めていくのであった。一方その頃、一時的に国境線まで

引いた公国軍司令部では、次の作戦に向けて軍議が開かれていた。


「王国艦隊がバスクに到着しました。戦力は主力戦艦級が3、巡洋艦10、駆逐艦30の陣容です」


「そうか、予想通りの戦力だな。明日の10時をもって攻撃をかけるぞ」


「はい、5個機甲竜騎士団による飽和攻撃を実施いたします」


「ああ、やつらの戦力を削れるだけ削れ、さすればより大きなネズミも出てくるぞ」


司令の言葉に、参謀たちは不敵な笑みで答えたのであった。そして翌日、両軍の間に戦端が開かれた。

最初にそれに気づいたのはガーレ艦橋だ。


「魔導レーダーに感あり、公国のメタルワイバーンです!」


メタルワイバーン-機甲竜はベリヤ公国軍の主力であり、この世界で初めて登場した航空戦力だ。王国軍

が200年前に大敗したのも、まだ航空戦力が無かったため制空権を握られてしまい、蹂躙されたからだ。

この時はハクレンの助力もあって何とか退けることができたが、その後制空権の大事さを思い知った王国

は総力を挙げて飛行兵器の開発に注力、軽快な機動力を誇るメタルワイバーンに対して重装甲、強大な

火力で圧倒する空中艦隊を設立したのである。


「すごい数だ。千騎はいるぞ」


「これだけの兵力は60年振りですよ。今回はあいつらも本気のようですね」


思った以上の敵兵力にざわめくガーレ艦橋、しかし、サイレは冷静に指示を出す。


「なあに、しっかり歓迎してやるさ。まずは戦艦による一斉砲撃を行うぞ。全員遮光ゴーグルを着用せよ!」


サイレの指示はただちに各艦に伝達され、迫りくる侵略者の群れに巨砲の照準が合わせられる。


「敵メタルワイバーン、主砲の射程圏内に入りました!」


「よし、撃ち方はじめ!」


次の瞬間、ガーレ艦橋内はまばゆい光に包まれた。主砲から撃ちだされたマナエネルギーが公国軍を襲う。

回避行動をとるが間に合わなかった十数騎が文字通り消し飛んだ。続いて巡洋艦も攻撃を開始、確実に

メタルワイバーンを削っていくが、彼らが突撃を止めることはなかった。


「邪教徒どもがいい気になりおって! 射程距離に入ったら全騎対艦ランスを投射しろ!」


「「「「「「ははっ!」」」」」」


当初は魔導ブレスのみだったメタルワイバーンの攻撃力は、後に開発された対艦ランスにより大幅にUP

された。速度も地球のレシプロ戦闘機レベルから、音速を突破するまでになっている。もちろん王国側も

目視照準から魔導レーダーにより射撃管制装置を開発するなど、お互い兵器の開発に余念がない。


「公国軍、対艦ランスを発射しました!」


「全艦、対艦ランス迎撃はじめ!」


小口径の魔導砲から、毎分4000発の光弾が放たれ対艦ランスを迎撃する。地球世界の火砲なら弾切れ

を心配するところだが、豊富なマナを利用できるこの世界においてはまさに無尽蔵、公国のランスは次々と

迎撃されていった。


「巡洋艦サーマル被弾! 速度低下中です!」


「駆逐艦レント被弾! 地上に落下します!」


だが、数百発に及ぶ飽和攻撃を完全に防ぐことはできない。王国側にも徐々に被害が出始める。そして、

それは旗艦ガーレにも迫ってきた。


「右舷に命中弾! 第2副砲が破壊されました!」


「うろたえるな、航行に影響はないぞ」


だが、サイレは自艦に被害が出ても冷静さを失わない。ブレスの射程圏内に迫ってきた公国軍に対し、次の

迎撃指示を出す。


「全艦、誘導魔導弾による迎撃を行う。照準合わせ!」


「全艦、照準合わせ完了!」


「よし、撃ち方はじめ!」


王国艦隊からメタルワイバーンに向けて、一斉に誘導魔導弾300発が発射された。魔導演算装置の割り振り

により、それぞれターゲットが重複しないように調整されている。地球のイージス艦のようなシステムが、この

世界でもすでに実現されているのだ。


「全騎回避! 回避せよ!」


「うわあっ! 追ってくるぞ!」


放たれた誘導魔導弾は次々とメタルワイバーンに命中する。この攻撃で公国軍は更に200騎以上が撃墜

の憂き目にあった。


「司令、機甲竜騎士団の損失が4割に達しました」


「頃合いか、、、よし、引き揚げさせろ」


ベリヤ公国軍司令部は撤退命令をくだした。しかし、彼らの表情に悲壮感は見られない。これはあくまで

”小手調べ”に過ぎないのだ。


「公国軍、撤退していきます」


「司令、追撃いたしますか」


「いや、こちらの被害も大きい。やつらのテリトリーで戦うのは不利だ。各艦損害を調べ旗艦に報告させろ」


「了解です」


そしてサイレは今回の戦闘結果を王国軍司令部に報告する。彼もまた、公国の攻撃がこれで終わりとは

思わなかった。これまでにも小競り合いはあったが小康状態を保っていた両国の間に、本格的な戦争が

始まろうとしていたのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ