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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

善行だと信じてエロ同人誌を違法アップロードし続けた男が作者の依頼で殺される話。

作者: 阿東ぼん

ツイッターで違法アップロードされて怒っている作家さんを見て殴り書きしました。

短い一発ネタです。

 もう昼の二時だというのにカーテンを閉め切った薄暗い部屋の中、ボサボサの髪にニキビだらけの顔を持つ男が、ディスプレイの光を四角い眼鏡に反射させていた。


「これでよし、と」


 彼は有料で買ったエロ同人誌を無料でアップロードするのが趣味だった。

 理由は一つ。

 自分が気に入ったすばらしい作品をもっとたくさんの人に知ってもらいたいからだ。

 たとえ直接褒められずとも、大好きな作者に貢献できることが彼の何よりの生きがいだった。


「お、今日もすげえ伸びてる。作者さん喜ぶだろうなー」


 2リットルのコーラをがぶ飲みする。

 口の端を袖で拭う。

 彼は再びネットの海へと沈み込んだ。

 次の作品を見つけるために。


 そんな彼に襲いかかったのは、一人の女だった。


「しっつれーしまーす」


 のんきな口調とは裏腹に鍵がかかっていたはずのドアを蹴破って入ってきた。

 短い黒髪に刃物のように鋭い瞳。

 セーラー服姿だが、腰には刀を吊り下げている。


「な、なんだおまえは!?」


 彼は椅子から転げ落ちた。


「どうも、黒桐鞘華です。依頼があってあんたを殺しにきました」


「こ、殺し……!?」


 彼はすぐさまスマホを取り出し、警察に電話をかけた。

 我ながらすばやい判断だったと思う。

 しかし、ワンコールが鳴り終わる前に、女の一閃がスマホを真っ二つにする。

 耳が少し切れて出血した。


「ひぃぃ!?」


「ざんねーん。だめよ、警察に電話なんかかけちゃ。無駄に死体が増えちゃうじゃない。でね、ある人の依頼を受けてあんたを殺しにきたの、わたし」


 女は言いながらドアのほうを向いた。


「おーい! 入ってきていいわよー!」


 現れたのは三十代半ばと思われる小太りの男性だった。

 男性は、怒りと悲しみを一緒くたにした表情を浮かべている。


「あ、あんたは……?」


「俺はおまえが違法アップロードしていた作品の作者だ」


「!」


 喜びと困惑が同時に溢れ出す。


「おまえが無料で違法アップロードするから俺の作品を買ってくれる人が減っちまったんだ! 金を稼げなきゃ次の作品を書けないのに! どうしてくれる!」


 彼は、作者が言っている意味がわからなかった。

 どうして自分が怒られているんだ?

 自分はこの人の作品をもっと多くの人に知らしめたのに。

 こんなのあんまりだ。


「何か言い分は?」


 女に尋ねられ、彼はすぐさま思ったことを口にした。


「俺はあんたの作品をもっと多くの人に知ってもらいたかっただけだ! あんただってそのほうが嬉しいだろう!?」


「ふざけるな! 誰もおまえに手柄を横取りされたいなんて言ってない!」


「あんたこそ何言ってるんだ! たくさんの人に読んでもらうことが作家にとっての一番の喜びだろ! 金に目がくらむなんて最低だ! 見損なったぞ!」


「この……!」


「はーい、そこまで」


 彼に殴りかかろうとするのを、女が止めた。


「その先はわたしの仕事よ。言いたいこと、もう全部言った?」


「ああ……やってくれ!」


「はいよー」


 女が刀を上段に構える。


 彼は壁際まであとずさる。


「な、なんだよ! 意味わかんねえよ! なんで作者に貢献した俺が殺されなくちゃいけないんだよ!」


「その方法が間違ってたんじゃない?」


「やめろ! やめてくれ! 頼むよ! まだ死にたくない!」


「あんただってやめろって言われてもやめなかったじゃない。そろそろ斬るわね」


「まっ──」


 視界が縦に割れた。


 脳天から真っ二つにされたのだ。


「さようなら。来世はもっと上手くやれるといいわね」


 その女の言葉が、彼の最後に聞いた音だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 素敵なヒューマンドラマでした! 正しいと思ってやっていたことが、実は――。というお話に、殺し屋がいいスパイス醸し出してます(^^)とても面白く拝読させていただきました。
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