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生まれ出づる歓び  作者: ケケロ脱走兵
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(8)

 間もなくして佐藤が作ったスマホ専用のAI搭載のアプリが配信


された。「AIによるあなたの将来予測」とサブタイトルがあって


、なんとタイトルは「一炊の夢」だった。そしてこれまでの占いシ


リーズで使われていたコミカルなキャラクターが一変して劇画調で


描かれていた。間近に卒業シーズンを控えていたこともあって、進


路の選択を迫られた若者たちからのダウンロードが瞬く間に激増し


た。それはすぐに業界でも話題になり、ネット上にはAI搭載アプ


リの可能性についての記事が殺到していた。おれはしたり顔の佐藤


を思い浮かべながら何度か祝福のメールを送ったが一度も返信して


来なかった。多分忙しくてそれどころではないのだろうと思って気


に掛けなかった。数日後、いつものように仕事帰りの電車の中で、


すでに空席が目立つ車両の座席に腰を下ろして、スマホでニュース


を見ようとして、一つの見出しに目がいった。


「生保の個人データ200万件流出、売買目的か?関係者を聴取」


おれはすぐに佐藤がつぶやいた言葉を思い出した。


「とにかくデータが欲しいんだ、それも個人の」


早速ニュースの内容を確かめると、流出したのはデータベース化さ


れた個人情報で、そのデータから特定の個人に辿り着くことは出来


なかった。ただ、それこそが佐藤が欲しがっていたデータに他なら


なかった。おれは停車した途中の駅で下車して佐藤にデンワをした


が繋がらなかった。彼の嫁さんの久美ちゃんにもデンワをしたが繋


がらなかった。そして「間違いない」、佐藤に違いないと思ってホ


ームの階段を下って、佐藤の家に行くために反対側のホームの階段


を駆け上がった。


                         (つづく)

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