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スケルトンって言っても侮ることなかれ、です

このお話、少し前のお話で桜がラブh…宿からからもらっておいたものをメディちゃんに渡します。

 みんなが一斉に走り出す。それに便乗し春斗も走りだそうとするが、手を繋いでいる幼女は歩いて、走ろうとはしないので春斗も走れなかった。後ろから走ってきているとも思ったが、春斗たちを走って追い抜かしてくる人たちは数十秒でいなくなり、もう歩きながら進んでいる人ばかりだった。

「まあ、この学園に入るだけでももう勝ち組だ。わざわざ特典目指して上位入賞なんぞしなくてもいい生活はできる。」

 いつの間にか春斗の横に来ていたメディがそう話す。

「というわけなので、私たちもゆっくりまったり歩いていきましょう。」

 春斗と手を繋いでいる少女がそう言って歩き出す。それに続き、春斗たちも歩きだした。

「…ねえあなた、名前はなんていうの?」

 春斗の後ろから桜がそう少女に聞く。

「…サラ。サラです。」

 そうサラが桜の方を向いて言う。桜たちも各々自己紹介をサラにした。

そうして歩いているうちにカーブを曲がった。曲がった先に見えたのは見渡す限り剣と盾を持った骸骨だった。その骸骨たちの足元にはその骸骨たちと殺されたと思われる人たちが転がっていた。

「うわぁ…何あれ。」

「あれはスケルトンだな。…しかも相当しぶといタイプの。」

 メディが説明をしているとき、転がっていた骸骨が一斉に起き上がってきた。粉々に粉砕されたようなものまでも、すでに立っているスケルトンたちと同じ、綺麗な形をして立った。

「あれ倒せないの?」

「あれは誰かに使役させられて動いてますから、その操っている人の意志でやめさせるかその人を殺すかしない限り、完全停止はしないですね。ですが、人が死ぬようなことをあいつらにもしてやればしばらくは動きを止めてくれるみたいですよ。」

 そうサラが言いながら目線を向けている方を向いて見ると、大柄な男が拳でスケルトンの頭をかち割っていた。だがその男は後ろからまた別のスケルトンに剣で刺されて、倒れた。頭をかち割られたスケルトンは倒れはしたが、30秒ぴったりで立ち上がり、元の身体を形成した。

「じゃあ、ここを突破するか。」

 そうメディがつぶやくと連れてきていた狼を大きくしてその上に乗った。周りの人たちは上を見上げて驚いていた。

「ほう。フリーリーウルフですか。珍しいものを飼ってるんですね。」

 大きくなった狼を見てサラはそうメディに言った。

「知っているのか?」

「久々に見ましたね。いつ見たのかなんて覚えてませんが。」

 サラが何気なく言った言葉が春斗は引っかかった。

「え、サラ、久々ってそんな年寄りみたいなこと…。君は12歳くらいでしょ?」

「…まあ、確かに私は13歳ですけど。見た目はね。」

 最後にサラが小声で何かを言ったが春斗には聞こえなかった。

「ねー、とりあえず乗らなーい?」

 早く終わらせたいのかすでに狼の上に乗った桜がそう言ってくる。春斗とサラも桜の後ろに乗った。

「よし、全員乗ったな。それじゃあ行け!」

 そう前を指さし叫ぶ。すると狼は走り出し、スケルトンどもをなぎ倒しながら進んだ。が、1kmくらい走ったところで失速しだし、やがて止まり、横に小さくなりながら倒れた。慌ててメディが狼の様子を見る。狼は足や腹から血を流していた。スケルトンに切られたものだというのはすぐに分かった。

「どうして?最初は全然余裕だったのに…。」

 か細い声でメディがそうつぶやく。

「そりゃ、最初っから最後まで同じ難易度なわけないじゃないですか。まあ、このワンちゃんがここまで早くばてるほど強化されてるなんて思いもしませんでしたが。」

 そうサラが言っている時に、サラの後ろでスケルトンが起き上がった。それに一番早く気付いたのは春斗だった。

「サラ!危ない!」

 そう言ってサラを自分の方に引き寄せて、スケルトンの振りかぶった剣をぎりぎりでよけた。

しかし、ここで止まっていたせいだろう。周りは何匹かのスケルトンに視線をこちらに向けられ完全に狙われていた。そして、カーブを曲がった先で見た最初のスケルトンたちよりも、早いスピードで切りかかってきた。さっきのように避けるのはまず無理だ。

 春斗は目を瞑り、もうおしまいだと思った。だが、切られない。目を開けるとスケルトンたちは春斗たちに傷をつけることなく倒れていた。ちょうど胴のところを切断されて。

 それをしたのが誰かはすぐに分かった。メディだった。どこから取り出したのか、自分の胸のあたりまである長さの槍を持って立っていたからだ。

「…早く進むぞ。」

 そう言い、立ちはばかるスケルトンをなぎ倒しながら進む。

「なんかあれね。さっきのワンちゃんの役割をメディちゃんが果たしてくれてるわよね。乗れないタイプのワンちゃんみたいな?」

「ああ、確かにそうですね。でも乗れないってのはなかなかきついですよ。というか面倒。」

 スケルトンの排除はすべてメディに任せて桜とサラはこんな風に話している。春斗は狼がいなくなったことで残り3km歩くのは不可能なのだが、せめて無駄な体力を使わずにと話さず歩いた。メディはすました顔でただ黙々と歩きながらスケルトンを倒していった。それも横や後ろからきているスケルトンまでも。

 しかし、とうとう春斗は体力が尽き、膝をついて止まってしまった。そして何とかメディが対処していくが、やはりスケルトンどもは集まってくる。

「くっそ、埒が明かない…。」

 そう始めてメディが弱音を吐いた時、春斗の後ろに迫っていた。スケルトンたちが上に吹き飛ばされた。何事かと全員がそっちを向く。そこには赤い鎧を着ている男が三人いた。どうやらスケルトンを吹き飛ばしたのは大きなハンマーを持った男のようだった。他の二人は大きな剣を背中に携えていた。

「お前ら、大丈夫か?」

 ハンマーを持った男がそう話しかけてきた。

「あまり大丈夫ではないな…。仲間の一人がばてて動けないんだ。」

 男はそう言われると春斗の方に視線を向ける。

「そうか。それなら任せろ。」

 そう言うと男は片方の剣を持った男に春斗を担がせた。

「これでいけるな。じゃあ一緒にゴールまで行こうぜ。」

 男がそう言うと、春斗たちは三人に感謝の言葉を言った。

 彼らが力を貸してくれてから進むスピードがより速くなった。途中、春斗は体力が戻ったので降ろすように言ったが、

「それでまたばてて担ぎ上げたり降ろしたりするのも大変だから」

と担がれている人に返され降ろしてはくれなかった。

 スタート地点からちょうど2kmのところで、今までのスケルトンはいなくなり、代わりにそのスケルトンたちの2倍の大きさのスケルトンどもがいた。

「あーあ…こりゃきつくなってくるねえ。」

「ちょうど折り返しくらいですから頑張ってください。」

「サラちゃんはなにもしてないからいいけどねぇ…。」

 ため息交じりの細々とした声だった。それを見た桜はメディに自分の方に近寄らせてあるものを渡した。

「あなた達。頑張ってくれたらメディちゃんがいいことしてくれるらしいわよ~。」

 そう言って男三人の視線をメディの方に向けさせた。三人はメディの持ってるものを見て、顔をにやけさせながら、さっきより動きを機敏にした。その機敏さと言ったら、春斗を担いでる人までも加えて、大きなスケルトンを10秒足らずで倒したほどだった。

「なあ、桜よ、これはなんだ?」

「楽しい時間を後々やめときゃよかったってならないための秘密道具ってところかしらね。…まあ彼らにはこれをメディちゃんに使わせる気はないから安心なさいな。」

 そう説明を受けてもメディは何を言ってるのかわからず、首をかしげるだけだった。春斗はもう目を背けた。


やっぱ男ってそういうのが好きだと思うんですよ。

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