つぎに目が覚めたのは森の中でした
情景描写がとてもへたっぴですねえ。
「は~る~と~く~ん~。お~き~て~。」
そう言って春斗が白い世界で会った女性は春斗の顔を扇子でペシペシと叩いて寝ている春斗を起こす。6回叩くと春斗はようやく目を覚ます。
「ん…んんっ…」
(あら可愛らしい。)
「ん…ん?あ、あれ?なんでここにあなたが?それにここは…?」
春斗はゆっくり体を起こしてまず女性を見て、次に周りを見渡す。
「ここがどこかって?異世界よ?説明したでしょ?」
「え、ええ。そうですね。でもまさかこんな森林に飛ばされるとは思いもしませんでした。」
そう、春斗が目覚めた場所は見渡す限り木しかない森だったのだ。
「私も。」
「えっ。」
「まあ、異世界に来ることさえできればいいのよ。大丈夫大丈夫。なんとかなるわ。さあ、この森から出ましょう?」
そう言って女性は歩き出す。春斗もそれに合わせて立ち上がり、小走りをして女性の隣に並んで歩く。
「そういえば春斗君。この世界にはね、学校があるの。君にはそこに行ってもらいたいと思うわ。ああ、大丈夫よ。君もわかってると思うけど、君は心臓の病なんてもう患っていないから。」
そうだ。軽々と立ち上がれて小走りまでできた。そこまでしても胸が苦しくなることはなかった。
そして春斗の隣の女性はこの世界に学校があるという。もはや学校に通って青春をしたいというのが叶えたい夢の一つにある春斗にとってはその学校に通わない理由がなかった。
「でね~。その学校。都会にあるのよ。でね。私、君をその学校がある都会の近くに送ったはずなんだけど…。どう考えてもここが都会の近くだとは考えられないわよね~。」
そう言いながら女性は辺りを見渡す。
「何とかなるんじゃないんですか。えっと…。」
春斗は女性の名前を言おうとしたがよく考えれば彼女の名前を教えてもらってなかった。
「?ああ、名前ね。そうねぇ、桜って呼んで頂戴。わかりやすいでしょう?」
そう言い春斗の方を向いて桜は微笑む。
会話は彼女の名前を聞いて途切れた。そこからは二人とも黙って歩いた。
会話が途切れてから5分くらいしたところで春斗は息を切らし座り込んだ。当然だった。春斗は生まれてからの一生を病院で過ごして運動なんてすることがなかったのだ。いくら心臓の病がなくなったからと言ってこんな足場も悪い場所を何分も歩くことは不可能だった。
「あらあら、大丈夫?少し休憩ね。」
そして女性も春斗の横に正座して座る。
その時近くの草が音を立てた。顔を下に向けていた春斗もその草に目をやる。
そしてその草から出てきたのは、槍を持った身長は春斗の半分くらいの異様に目と口が大きく二頭身くらいの緑色の人の形をした化け物だった。
「ひっ!?」
「あらあら。まあ何とかなるはずよ。心配しないの。」
春斗はひどく怯えたが桜はなぜか余裕を持っていた。
目の前の化け物が叫ぶ。すると後ろからもう二体走って来た。
「もうだめだぁ…食べられるぅぅ…。」
「まあまあ。…走る?」
桜がそう聞くと春斗は走り出した。その後を追って桜も走った。しかし春斗は20秒くらいしたところで倒れこんでしまい、3匹の怪物にすぐ追いつかれてしまった。
槍を持った怪物が春斗に迫ってくる。そしてその矛先が春斗に向かった瞬間、怪物の首が飛んだ。そしてその胴体から噴き出る緑色の血液が春斗の顔や体にかかる。
そして後ろにいた化け物2体も首が飛んだ。
「ほら、何とかなったでしょ?」
春斗の後ろに立っていた桜がそう言う。彼女がやったのかと思ったがそんな様子はなかった。
「おいお前たち!ここで何をしていた?」
女の声がした。そして現れたのは春斗の背丈の倍くらい大きな狼だった。女の声はその大きな狼の上に乗っていた春斗と同じくらいの年の真っ赤な髪をした女子から発せられていた。大方この大きな狼がやったのだろうと春斗は考えた。
「私たちね、この森で迷っちゃったの。この近くに大きい学校があるって聞いてそこに行こうとしてたんだけどね~。」
「ああ、クリントにあるメイドリック学園のことか。いいぞ、連れて行ってやる。私もそこに用があるからな。ほら、乗れ。」
そう言って彼女は桜と春斗を大きな狼に乗せてくれた。そして二人が乗ったことを確認すると歩き出した。
「いや~。助けてくれてありがとうね。あなた名前はなんていうの?」
「私はメディ。お前たちは?」
メディに聞かれ春斗と桜はそれぞれ自分の名前を言う。
「ほう。桜と春斗っていうのか。どこから来たんだ?」
「遠いところから。」
桜が笑顔でそう返す。
「そ、そうか。」
地名で返ってくると思っていたメディは戸惑ったが何か事情があるかもと考え、地名は聞かないことにした。
「ところでお前たちは何故メイドリック学園に何の用があって?」
「私たちその学校に入りたいのよ。」
「ほお、奇遇だな。私も入るつもりなんだ。だが、お前たちが入学試験に合格するとは思えんが…。」
「入学試験?」
春斗がそう聞く。
「お前たち何にも知らないで行くつもりだったのか?」
メディは呆れてため息をつく。なぜか乗っている狼までもが同じようなため息をつく。
「その入学試験って言うのはどんなことをするんですか?」
「単なる障害物競走らしいぞ。ちなみに何を使ってもいいし誰と組んでもいい。とりあえずゴールすればいいらしい。」
それを聞いて自分にできるか不安になる春斗だったが安心もした。なぜなら筆記試験じゃなかったからだ。春斗はこの世界に来てばかりなのでこの世界のことをまだ何も知らない。しかも話す限りでは大丈夫な日本語でもいざ文字に写すとなると、日本語ではなくこの世界特有のものになるかもしれない。その点の心配をしないのでその試験は春斗にとって都合がよかった。
「そうだ、誰と組んでもいいんでしょ?ならメディちゃん。私たちと組みましょうよ。」
桜がそう言うとメディは少し顔を赤らめる。
「あ、ああ、いいぞ。鼻からそのつもりだったしな。…ちゃん付けで呼ぶのはやめてくれ。」
「あら~?照れてるの~?まあ、大丈夫よ。そのうち慣れるわ。メディちゃん。」
そう言って桜はふふふと笑いメディは耳まで赤くなっていた。
「ほっ、ほらっ!ついたぞ!ここがクリントだ。」
メディがそう言い、森を抜けて見えた町は真ん中に城のような大きな建物があり、その周りは一軒家がたくさん建っているとても大きな町だった。
「おお…こんなに広いですね…。」
「入学試験は明日だ。宿をとってあるからお前らもそこに一緒に泊まればいい。」
「ええ、でもお金は…。」
「持ってないのか?…まあいい。私が払ってやる。でもちゃんと返せよ!」
メディは溜息を吐いてそう言いながら狼から降りた。春斗たちもそれに合わせて降りた。
降りるとさっきまで人が三人も乗れていたとは考えもつかないほど狼は小さくなった。春斗は唖然としていた。これが世にいう魔法というものなのだろうか。そう思った。
メディが小さくなった狼に餌をやり、撫でてやる。しばらく撫でた後、メディはついて来いと言い。町の中に入っていった。春斗たちも迷子にならぬようにしっかりついていく。
もう日が暮れそうだった。
「ここが今日泊まる宿だ。」
そう言ってメディが止まった。メディの言う宿の看板らしきものは日本語ではない文字が書かれており、その周りにはハートがたくさんあった。
「…ねえ、ここって俗に言うラブh…」
桜がその単語を言い終わる前に春斗が口をふさぐ。多分メディ気づいてないだろう。そう思ったからだ。
「ん?何だ?」
「いや、何でもないよ…。」
そう言い春斗は笑ってごまかす。メディもそうかと言い、それ以上は聞かなかった。
宿に入るとメディが止まる人数を1人から3人に変更してくれて春斗たちも宿に泊まらせてもらえることになった。その部屋に案内される際、春斗は案内してくれた人にすごくにやけられた。
部屋には大きなベッドと小さな棚があり入ってすぐ隣の扉の先にはトイレとお風呂があった。
桜は部屋に入るや否やすぐさま棚を物色し始めた。すると何かを見つけたようで春斗のところに来た。
「ねえねえ。この世界にもあるのね。」
桜がそう言い春斗に見せたのはあるイラストの描かれた箱だった。それを見せられた春斗は赤面し、顔をそらした。桜はふふふと笑っていた。メディはベッドの上で飛び跳ねている。
ご飯はさすがに用意できなかったので食べれなかった。それは桜がうるさかったが何とか二人で落ち着かせた。
そのまま特にナニかがあるわけでもなく三人同じベッドで寝て、朝になっていった。
ナニもなかったんです。いいですか?’ナニ’もなかったんですよ?