第一話
アメリエン!
一話
私は今、アメリカに留学している。そして今、爆音を聴いている。
舞台の上で白人が体を振りながら激しくドラムを叩いていた、その姿はまさし狂人。
それでも見ていると力が湧いてくる。そして気づけばリズムに合わせて頭を振ってしまう。
バンド名は「Percussion」、衝突、震動って意味であり、これはいかにドラムが狂えるかがみものである。
ライブが始まって、もうかれこれ一時間が経っているというのに男は、笑いながらドラムを叩いていた。疲れているはずなのに、ずっと笑っている。
ひと言も喋らずに笑っている姿は、恐ろしくもあるが、興奮する。
私が初めてアメリカに来た時は不安でいっぱいだった。それでも次第に取りつかれるように惚れていった、自由の国、アメリカに。アメリカに居ると日本が嫌いになる。何故って?
縛られたくないんだ。
アメリカには自由があった。週末は毎週、朝まで踊り狂い、好きな物を食べたいだけ食べる。
自己主張が美とされる、それがアメリカなんだ。
キャンパスの中で行われた「Percussion」のライブは終盤にさしかかる。皆、叫んでいた。私も一緒になって叫ぶ。意味もなく甲高い声を挙げては、ゲラゲラと笑った。下品じゃない。
終わると、ざわざわと学生たちが会場から出ていく。私の体は興奮しきっていた。
出ると外は冷たく、私の火照った頬を冷やしてくれた。そっと頬を触れるとカサカサだ。わずかばかりの星の下を私は歩いて行く。試験も終わったし、今日はもっと遊びたい。
「ヘイ、サエコ」
ジョンが私に声をかけてきた。
ジョンは身長180程あり、青く透き通った目をしている。
その目は青く透明で、時折何を考えているか分からなく。
でも、基本的にジョンは優しいし、いい人だ。
私は彼が好きだ、友達としてだけど。
「ライブはどうだったかい?」
「うん、最高だったよ。」
「君もかい? 僕も好きだよ、ドラムは最高だった。」
激しく同意する。ジョンが同じ思いを抱いていた事で嬉しくなる。私は興奮気味に、ドラムの良さを彼に語った。
まだ冷めない頬の熱が、再び熱くなる。
私は喋り出した、ジョンは聞いては、頷き、同意してくれる。
それだけで嬉しくなりどんどん話す。
気づくと寮の前まで来てしまう、お別れの時間だ。まだ話したい。
私はジョンと向き合ってお別れの挨拶をしようとした。私が声を出した瞬間、ジョンが大きな声で、
「ヘイ、サエコ! 今から僕の部屋に来て飲まないかい?」
と言う。
嬉しくなり、
「イエス!行くよ!」
と、叫んだ。
ジョンの部屋に到着すると、ポスターが貼ってあった。よく分からないポスターだらけ。
決して綺麗とは言えないが、汚くもない。普通の部屋だろう。
ジョンが台所に行き、大きなウイスキーを持ってくると、私にそれを見せ、微笑む。
私はニッコリと笑い返す。
その後、私たち二人はたくさん話した、ウイスキーを水割りで飲みながら。
楽しかった事だけは分かる。沢山しゃべって沢山笑った。
時間だけが過ぎ、体中が火照ってくる。
しばらくしてジョンは私をベッドルームに誘った。
私はなんとなくついて行く。
質素なベッドルームに入る。後ろにいたジョンが私の肩に手をそっと乗せた。
私は大きなジョンの手になんとなく触れる。
しばらくそうしていると、横からジョンが私にキスをしてきた。
「オウサム」
こんなに素晴らしいキスは始めてだ。
その後、どれだけの時間が経ったか分からない。
私の服は脱がされ、気づくとブラジャーとパンティーだけの姿になっていた。
私は現実に戻った。
私はベッドから立ち上がり、黙りこくる。
突然、私が立ち上がった事に困惑したジョンは、静かに立ち上がり、再び私の肩に手を置いて来た。
今度は私は、その手をどけた。しばらく無言が続いた。何もしないで立ちつくす二人の時間が続く。
ジョンが再び私の肩に手を置き、私はそれを再びどかす。
続く
読んでくれてありがとう。