アズサ王都に向かう①
もう、11話目となりました。
読んでいただきありがとうございます。
誰かひとりでも面白いと思って頂けるよう頑張ります。
ガタンゴトンッガタンゴトンッ
アズサがクルトの街の教会で馬車に乗ってから数時間が経ち、馬車を乗ったときは地面から顔を出し始めていた太陽も地面から離れて空の真上で光り輝いている。
(もうお昼の時間なのですね)
アズサがオードリューから借りた懐中時計の蓋を開き、今の時間を確認した時だった。
ドドドドドッ! ヒヒーン! ドドドドドドッ!
馬の嘶きとともに地面が揺れ、アズサは思わず馬車の椅子に手を付いた。
(何事でしょう、軍隊でも通っているのでしょうか?いや、こんな田舎に軍隊が来るわけがありませんね)
アズサが自身の考えを否定して首を振り、気がついた。
(この馬車止まっていませんか?)
今、馬車が走っているこの道は舗装も申し訳程度にされている田舎道だが、広さだけはあり、例え反対側から馬車等が来ようとも止まる必要などない。
(一体何が来たのでしょう?)
彼女が外の様子を確かめようと馬車のカーテンに手を掛けた瞬間、カーテンの向こうに人影が現れ、アズサはカーテンに伸びた手を戻した。
ドンドンッ
「!」
カーテンの向こう側の人物は壊れんばかりの力で馬車の扉を叩き、大声でアズサに呼びかけた。
「アンナ=サンタマール殿はこの中にいるか!」
(な、なんなんですか、いきなり)
アズサは突然怒った思わない事態に唖然として扉を見つめるが、声の主は扉を叩くことを止めず、寧ろ叩く力は強く、呼ぶ声もどんどん大きくなった。
「アンナ=サンタマール殿! アンナ=サンタマール殿! んだぁ? この馬車じゃねえのか?」
声の主は確かに馬車の中に人の気配を感じるのに、中から声が返ってこないことに首を傾げ、ある仮説を口にした。
「もしかして、寝てんのか? こんだけデカい声で呼んでんのに寝てるたぁ、アンナ=サンタマールってお嬢さんは豪快なお嬢さんだな!あっはっはっはっは!」
扉の向こうから聞こえる男の笑い声は、アズサの意識を戻すと共に怒りをも沸き上がらせた。
(お、お嬢様が豪快!? 常に自身を律し、貴族の娘たる振る舞いを心掛けているお嬢様が豪快と言われるなんて、あってはならないのです!)
アズサは大きく深呼吸をすると「私は今、お嬢様、お嬢様」と小さい声で自分に言い聞かせた。
そして、その自己暗示が終わると今だ男の笑い声が聞こえる扉を見据え、口を開く。
「お返事をせず申し訳ございません。突然の出来事に驚いて固まってしまっていましたの」
「おお! なんだ、起きたのか」
(なんで寝ていることが確定しているんです、驚いていたと言ったじゃありませんか! でも、お嬢様はこんなことでは怒りません、心の広い方ですから)
「あらあらあら、誤解させてしまい申し訳ありません。私、寝ていたわけではありませんの。ただ、自身は名乗りもせずに山賊のように扉を叩いてこちらの名をお尋ねになる礼儀知らずな方に驚いて固まってしまっていただけですわ」
(まあ、でも嫌味くらいは仰いますよね。お嬢様は言われっぱなしになさる方ではありませんから)
「ほう……」
「な!副将軍に対して無礼な!」
「いやいい、確かにこのお嬢さんの言う通りだ」
(副将軍?)
突然他の男の声がアズサに向かって放たれたが、それを扉を叩いていた男が静止し、アズサに向かって声を掛けた。
その声は先程のアンナ=サンタマールを、アズサを笑っていた男とは思えない、真剣で威厳を感じさせるものだった。
「先程はすまない。俺はあまり考え事をする質ではなくてな、思ったことをすぐに口走っちまう。許してほしい。俺の名前はアルタイル=ヒャダイン、シェドゥール国国防省陸軍副将軍を務めている」
「……」
アズサはまたも驚きに声を失ってしまった。
しかし、それは彼の身分に対して恐れ慄いたからではなかった。彼の身分で恐れ慄くのであれば、彼女は国王であるドルトルにナイフを突きつけるようなことはしない。
(こ、こんな男が、国防省陸軍副将軍なのですか!? お嬢様を豪快なお嬢さん等と巫山戯たことを言うこんな男が! あのロリコン王、臣下の教育はちゃんとしやがれですよ!)
アズサはこの時、ドルトルに会ったら一発腹に拳をぶつけることを心に誓ったのだった。
やっと、やっと男性キャラを出せました!
嬉しい限りです!とりあえず、序章で出ている男性キャラ一人出しましたので、これからドンドン出していきたいと思います。