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赤黒サウダージ  作者: 射月アキラ
二 天使・告げる
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02

 土を散らしながら、〈悪〉が槍を抜いた。相対するシルヴィも、それに合わせて戦闘態勢に入る。意識の奥底に封じていた悪徳を、表面にまで解放。神の意志によって物質化──〈悪〉という存在に昇華しようとするエネルギーを体内に押しこめ、〈悪〉に与えられるはずだった力を得る。

 変化は急速に訪れた。

 シルヴィの赤毛は黒くなり、前を見据える赤褐色の瞳は真紅色に。背中で弾けるような音がしたかと思えば、肩甲骨の間からコウモリの黒翼が生えた。

 姿こそ〈悪〉に近いが、シルヴィの目は理性の色を失っていない。槍による刺突を繰り出す〈悪〉を前に落ち着いて回避行動をとり、反撃。カウンターのようにして、拳を〈悪〉の腹部に叩きつけた。

 ゴッ! と、硬質な音が鈍く響く。

 生物的な柔らかさがない〈悪〉と、力を解放して戦いに特化したシルヴィの拳は、おおよそ同程度の硬度を持っていた。逃げ場のないエネルギーが〈悪〉の体に突き刺さり、両足が宙に浮く。

 人外を殴り飛ばしたシルヴィが追撃。致命傷になりうる頭部ではなく、槍をたずさえる右腕を狙って足を振りおろした。

 再び響いた音は、やはり鈍い。しかし、それが意味するところは先刻とは大きく違う。

 シルヴィの足が直撃した〈悪〉の腕は、関節の存在しない場所で折れ曲がっていた。力の入らなくなった手から槍が転げ落ち、地面に当たって二、三度跳ねる。

 シルヴィが槍に手を伸ばすのと、〈悪〉が左手を振るうのはほとんど同時だった。仰向けで倒れ、さらに右腕を踏みつけられているという圧倒的不利な状況でありながら、〈悪〉の一撃は鋭い。迷いなく脚部を狙ったのは、ある程度のダメージを与えれば移動能力に大きな影響を与えるからだろうか。

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