表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤黒サウダージ  作者: 射月アキラ
三 日・沈む
PR
13/22

01

 シルヴィが森を抜け、草原に辿りついたころには、日は沈みかけていた。

 西からの赤い夕焼けと、東からの黒い夜。赤く照らされた下草と、その隙間に落ちた黒い影。

 そして、赤い瞳と黒い体。

 草原に広がる色彩は、そのまま三日前の再現だった。

 シルヴィの息が詰まる。

 精神的な傷が癒えるには、三日という期間は短すぎた。ぐらぐらと揺れる視界を気力で支え、崩れそうになる足で地を踏みしめる。

 人の影がそのまま立ちあがったような黒い体も、非生物的にぬらぬらと光を返す黒い翼も、獣のような赤い瞳も、心底恐ろしい。シルヴィを見とめて、口の端を吊りあげて笑った〈悪堕ち〉が恐ろしい。炎と影を思わせる、赤と黒に彩られた景色が恐ろしい。

 シルヴィは思わず右目に手を当てる。指先で触れた位置にあるのは、眉尻から目尻にかけて走る傷跡だ。〈悪堕ち〉によってこの傷を受け、シルヴィは気を失って──ただ一人助かった。

 どうして〈悪堕ち〉がシルヴィにとどめを刺さなかったのか。知る由などないが、希望的観測が当てはまるとしたら、

「ロラン……」

 彼の自我がまだ残っているのだろうか。

 しかし、応えはない。答えもない。〈悪堕ち〉は静かにシルヴィを見つめ、獲物を見つけた獣のように闘志をみなぎらせている。

 逃げることなど最初から許していない。強者を打ち倒す。それは、シルヴィが〈悪使い〉として成り立つための目的であり、戒めだ。乗り越える相手が元は善良な人間であったとしても、自らの師であろうと、関係ない。

 右目に当てていた手を握りしめる。と同時に、シルヴィの髪は黒く、瞳は赤く染まった。弾けるような音がして、背中からコウモリの翼が生える。

 一陣の風が、草原を駆け抜ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ