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結局

「……そう。まさか、シンカだけのテロリストなんてものが存在してるなんて驚きだわ。でも、考えられなくはないわね。普通の人間を疎ましく思うのは私も同じであるのだから。――それで、見つけ出して問い詰めてやると息巻いたものの見つけられなかった貴方は何故、あたり前の顔してここにいるのかしら」


時刻、七時頃。

俺の部屋にて、正座して日法の説教中。


「……いや、だって、見つからなかったからさ……」


「見つかるまで探すのが筋ってものじゃないかしら」


「……いや、でもこの時間まで頑張ったんだけど……ね?」


「結果が得られない過程に価値は無いわ」


「……いや、まあ……………………ごめんなさい」

日法に謝る理由はさらさら無いのだが、俺の不甲斐なさを責める気持ちはわからなくもないので、取り合えず謝罪。納得しちゃいないが、まぁ……謝罪。


結局あの意気込みは何だったのか。あのあと戻って、見つけてくれと言わんばかりに仰々しく街中を練り歩いたものの、上憑を見つける事はおろか出会う事も無かった。

あの野郎、この辺りによくいるとか言ってたくせに、なんの気配も無いじゃないか。気合い十分だった自分が恥ずかしいじゃないか。


しかも最終的に詩雄が探索に飽きて、ライチだの買い物だのとごね出して、妹とデート紛いなものへと発展しちゃうし。大半の時間をそこに費やしたなど、日法には言えない。言えばさらにひどい事を言われる羽目になるだろうから。


「その買い物袋が貴方にとっての手柄なのかしら。詩津さんが関わっているかも知れない状況で悩みに悩んで事に移して手に入れたものがデパートのちゃちな紙袋なのかしら。どうなの、何か言いなさい、早く言いなさい、死になさい」


「催促の方向性が終着しちゃってるよ!だからごめんってば。あとこれは詩雄が」


「何故、私には何も買ってないのかしら」


「えっ、そっち!?話変わってない!?」


「黙りなさい。見たところ、それは人形のようね。詩雄ちゃんの趣味じゃないとは思うけど、それはともかく。どうして詩雄ちゃんにはプレゼントしてあげて私には何も無しなのか、教えてもらおうじゃないの」


ああ……もうそっちの方向で話を進める気でいらっしゃる。こいつもこいつでいい加減である。


「はぁ……。こっちは、研究所にいる詩雄の友達の分だよ」


というか、あんな所で友達が出来るとか意味がわからん。どんな相手か知らないが、キチガイ同士、気が合ったのだろうか。


「そう。こっちは、という事は、詩雄ちゃんにもちゃんと買い与えたのね」


ギクッ。しまった。


「詩雄ちゃんとそのお友達へのプレゼントを買って尚、私の事は全くもって頭に無かったのね。そう……そうなのね」


ゴゴゴゴ、と怒りの擬音が日法から聞こえてくる気がする。背景は燃えているというより、闇が蠢いていると例えた方がしっくりくる。そしてとどめに彼女が無表情であるから、何かとてつもない思いを秘めているようでもの凄く恐い。


「だああ、わかったわかった!今度お前にもなんか買ってやるから!」


「あら。そう」


けれど、俺の一言でピタリと平穏な雰囲気を取り戻す。いや、ちょっと待て。


「……お前、ねちねちしつこかったくせに、何だよその素っ気ない返事。なんかこう……もうちょっと喜べよ」


「嫌よ」


「はあああ!?わかりやすいくらいご立腹だった気持ちを汲んでやったのに、なにその態度!なんか女の子らしい事言いやがれ!」


腑に落ちない点は消えないままだが、敢えてそれを受け入れて日法のわがままに応えたのだ。男としての甲斐性を見せた返答が――あら、そう。等では納得がいかない。

こいつに期待するだけ無駄かも知れないが、無表情でもいいから背景に花くらい咲かせてもらわないと浮かばれない俺。


「貴方に感謝なんて、ヘドが出るわ」


期待していた俺が馬鹿だった。

だよな。こんな奴だよな。ははは……。


「ところで、詩雄ちゃんはどうしたの?」


「……例の吸血鬼探し。今日は遅くなるかも知れないんだと」


買い物が終わった後、ばいばいお兄ちゃんと言って詩雄はどこかへ行ってしまった。途中で何かの手がかりでも掴んだのだろうか。足早に去っていったけど。


「そう」


「ああ。……ああ?」


おもむろに、日法が隣に座ってきた。お互いの肩がぴったりとくっつく零距離。むしろ押し付けてくる。


「いや、なに?」


「何が」


「いや、だから、何してんの?」


「寄り添っているのだけど」


「それはわかってんだけど……。何だよ気持ち悪い」


離れようとする。腕を掴まれる。


「…………」


「…………」


……あ、そうか。何か買ってやる事になったから、嬉しいのか。素直なのかそうじゃないのか、面倒くさい奴だ。



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