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第13話 「欲にまみれた者たち」

 

 夜になり、辺りには月の光が落ちる。


「きょうは満月か」


 美術館で張り込みをしている最中、誰かがつぶやいた。

 そうか、どうりで明るいと思った。

 ミエリも眩しそうに夜空を見上げている。


 俺は左手にはめた白手袋を外す。

 さて、そろそろやるかな。


 俺は誰にも見えないようにバインダを開くと、こっそりとカードを抜き取った。

 オンリーカード、オープン――【ダイヤル】だ。


【ダイヤル】の能力は、今回の件にはぴったりのものだった。

 それを唱えてから三分間、離れている相手と会話をすることができるのだ。


 試してみたところ、対象は一度言葉を交わした相手に限られる。そして、相手はこのコールを拒否することができる。

 射程距離はちょっとわからなかったな。とりあえず100メートル以上はいけそうだったが。


 ま、つまり電話だ。


 さらにこの能力の効果中は、左手が【ダイヤル】化する。

 握った拳の小指と親指を開き、小指を口元に。そして親指を耳元に近づけて、俺は囁いた


「……もしもし」

『わっ』


 男の声が親指から聞こえてくる。

 正直、あんまり気持ちいいものではないな。


『す、すごいな、この力は……。君は高度な時空魔法使いなのか? テレパスとも似ているが、どうやら違うようだし……。どの神様を信奉すれば、こんな魔法が使えるんだ……?』

「ま、それはいいとして」

『あ、ああ』


 俺は左手を口と耳につけたまま、大体の状況を語る。


 ガマガエルは俺への評価を下げていたようだったが、現場の指揮の半分は俺に任されていた。

 なんといってもギガントドラゴンを討伐した冒険者だからな。

 ハッタリだが、効いてくれるのならなんだっていい。


 というわけで、俺は人員をずいぶんと入口側に配置した。

 その旨を伝えると、ジャックはホッとしたようだ。


『じゃあ今のところは、うまくいっているんだね』

「ああ。これからもうまくいくよ……。いや、うん、どうかな……」


 急に不安になったのは、あいつがちゃんと行動をするかどうかわからなかったからだ。

 いや、あいつはバカじゃない。そうだ、今までの判断材料から察すると……。


 ただ楽観的で、危機感がなくて、不用心で、そのうえ自信過剰なだけだ。


 ……不安だ。


『え、なに!? どうして不安になっているの!? あ、怖い! ねえ、中止にしない? いたた、なんか僕お腹痛くなってきちゃったなあー!』

「じゃあまたあとでな」


 これで三分ぴったり。

 計ったわけではないが、三分なら俺の体内時計にきっちりと刻まれている。某カードゲームの一ターンの持ち時間が三分だったからな。


 さて、もういい頃合いだ。


 そう思った次の瞬間。

 ――轟音が美術館を揺らした。



「な、なんだ、なんだ!?」

「どうした!? 敵襲か!?」

「まさか、ギガントドラゴン!?」


 そんなはずはない。

 俺は入口に怪盗が現れたのだと叫ぼうとした。

 だが、それよりも前に。


『あーっはっはっは! 聞くがいい罪のない子羊どもよ! あたしはジャスティス仮面三号! 恒久平和! 無欲無私! このあたしに盗めないものはなーし!』


 そんな叫び声が聞こえてきた。

 どんだけノリノリなんだよ!


「怪盗だ! 怪盗が出たぞ!」

「入口へいそげー!」


 俺が扇動する必要もなく、私兵たちは皆、入口へと走っていった。

 囮としては完璧だな、あいつ!


『ギャー! 来すぎぃー!』


 悲鳴が聞こえてきた気がするが、気のせいだろう。

 そう、あいつは使命に忠実な女だ。弱音ひとつ吐くはずがない。


 さ、次は、この間に一号がやってきて、盗みに入るわけだ。

 さあ、いつでもいいぞ、一号。


 おい、一号。

 ……一号?


 いや、嘘だろう、まさか。

 俺は【ダイヤル】を発動し、ジャックに連絡を取る。

 おい、ジャック、なにやってんだよ。

 今、ナルが私兵から逃げ回って、時間を稼いでいるんだぞ。

 お前が来ないでどうする。


 ――だが、宙に浮かんだ【ダイヤル】のカードはなにも効果を発揮せず。

 そのまま露となって消えた。

 え? あ?

 胸に手を当ててみるが、MPにはまだまだ余裕がありそうだ。

 ということは――。


 ――ジャックが【ダイヤル】を拒否したのだ。


「あの野郎、逃げやがったああああああああ!」




 ぶち殺す、ジャスティス仮面ぶち殺す……。

 これじゃあ館長に突き出して金貨五枚ももらえないじゃねえか!

 いやいや、そんなことをする気はなかったけどな!

 もちろんさ! 取り返すのは金貨だけだったさ!

 ちくしょうが! ぶち殺す!


 いや待て、殺意の波動に身を委ねている場合ではない。


 どうする、どうする、どうすればいい。

 ナルが今時間を稼いでいる。

 この機会を逃してはならない。


 必死に考えろ、俺。

 ……俺ひとりで、盗みの証拠を探すか?

 いや、だめだ、無理だ。


 俺は口元に手を当てて、窓枠に手をつく。

 頭から湯気が出そうだ。


 だったら金貨を諦めるか?

 それは、つまりそういうことだ。


 待て、よく考えろ俺、待て。

 ゴブリン退治などのクエストの報酬は、せいぜい銀貨か、よくて霊銀貨。

 命を懸けて戦いに出ても、その程度の報酬だ。


 ここで金貨を奪えば、それは何十回のゴブリン退治に匹敵するだけの価値がある。

 ここで危険を冒すということは、これから先の危険を回避するということと同義なんだ。

 ううう、だが、ぐうううう……。


 悩んだ挙句、俺は決意した。


 ……よし。

 行くか――。



 俺は振り返り、歩き出す。

 怪しいところといえば、事務所の奥の館長室か、あるいは美術館倉庫だ。

 先に館長室からいこう。


 俺は「にゃぁぁ……」と荒い息をついているミエリを拾い上げる。

 遊んでいる場合じゃないぞ、ミエリ。


 俺たちの金貨を取り戻すんだ。



 事務所の奥のドアを開こうとしたが、カギがかかっている。

 まあ、当たり前だよな。


 先に館長室のカギを拝借していてよかったぜ。

 カギを滑り込ませ、館長室のドアをゆっくりと開く。

 窓のない部屋は暗いが、見渡せないほどではない。これぐらいならピッカラを使うまでもないな。

 中は、無人だった。


 学校の校長室のような雰囲気だ。

 奥に机と椅子があり、左右には書類を収めるためのキャビネットが並んでいた。

 それに、ロッカーもあるな。


 順番にやっていくか。

 猫ミエリをソファーに放り投げて、俺は覚悟を決める。

 家探しだ。


 ロッカーを開くと、そこにはなにも入っていなかった。

 キャビネットは……いちいちチェックしている暇はないな。

 金庫は見当たらないし。

 ここではないのか……。


 そう思って振り返ったそのときだった。


「はぁ、はぁ……マサムネさぁん……」


 そこにはソファーにあられもない姿で横たわっている、ミエリがいた。

 真っ白な裸体をさらしている。

 人間モードであった。



「お、お、おお、お前!」

「えっ、あっ、にゃああああああああ!」


 ミエリは胸やらなんやらを隠すと、慌ててその指を鳴らした。

 次の瞬間、彼女の全身を初めて会ったときのような衣が覆う。

 便利な能力だ。


 彼女は顔を真っ赤にしていた。


「み、見ました!?」

「見てないよ! 見てない!」


 なにがとは言わないが!

 俺は後ろを向いて、直立の姿勢になる。

 くそう、ドキドキしちまったじゃねえか! ミエリのくせに!


 久々に見たミエリの姿は、なかなかに刺激的だった。

 色々と、思い出してしまう。

 あの洞穴での生活を、色々と……。

 くっ、こんなところでラッキースケベ的なイベントに遭遇している場合ではないというのに……!


「な、なんでお前、元に戻っているんだよ」

「なんででしょう……。もしかしたら今、一時的に光の力が強まっている時期なのかもしれません……」


 ちらりと後ろを向くと、ミエリは久々の人間の体を見て、嬉しそうだった。

 指先を伸ばしたり、足を伸ばしたり、後ろを振り向いて尻尾がないことを確認していたりする。


「はー、やっぱり喋れるっていいですにゃあ。マサムネさぁん、マサムネさん、マサムネさん、マサムネさんー」

「い、いいから、手を貸せ! 今は猫の手も借りたい状況なんだ!」

「そ、そうでしたにゃ! 金貨、金貨ですにゃ!」


 と、猫ではないミエリが俺の近くにやってこようとして。

 ぴたり、と立ち止った。


「ま、マサムネさん、誰か来ますにゃ!」

「ああ!?」

「は、早く隠れませんと!」

「くそっ!」


 俺はミエリの手を引っ張ると、ロッカーの中に引きずり込んだ。

 そして彼女の口元を抑え、内側から締める。


 すると、本当に足音が近づいてきた。

 この女神、無駄に感覚が鋭敏なんだよな。


「にゃ~……」


 細く甘い声をあげるミエリ。

 彼女は俺の腕の中で、くったりとしていた。


 いや、ちょっと待てよ。

 なんだこの状況、


 狭いロッカーの中で、俺たちはまるで体を押し付け合うようにして密着している。

 女の子の柔らかな感触が、あちこちに……。

 否が応でも、意識させられてしまう。

 み、ミエリのくせに……!


 そのとき、ミエリはハッと気づいた顔をした。


(ま、マサムネさん!)

(なんだよ!)

(どうですか!? どうですか!? キリッ)


 さらにぐりぐりと体を押し付けてくる。

 お前えええええええええ!


 この女神、自分が健康な男子高校生にどんなにやばいことをしているのか、自覚はないらしい。

 むしろ喜色満面といった表情で、さらに身をすり寄せてくる。


(嗅いでください! ほら! ほらほら! どうですか!? 臭くないでしょ!? でしょ!? いい匂いするでしょー!?)

(今そんなことを言っている場合かああああああ!)


 声なき声で思いっきり怒鳴りつける。

 両手が自由ならその後頭部をはっ倒したいところだったが、残念ながら俺の腕はまるでミエリを抱きしめるようになってしまって、まったく動かせないのだ。


 ミエリのドヤ顔をこんな眼前で見ているのに腹パンひとつできないとは、屈辱だ……。

 そんなことを思っていると、ガチャリとドアが開く。

 思わず俺たちは身を固くした。


「雑魚め、雑魚め! 怪盗め! なぜわしを狙う! なぜだ! いったいいつからバレていたというのだ! 雑魚め!」


 おっと。

 こいつはなかなか発狂してらっしゃるな、ウシガエル。


 ロッカーの穴から覗くが、ウシガエルは机の辺りにいるようだ。角度が悪いな。

 だが、美術館を危機に追い詰めて、ウシガエル本人に宝の場所を案内させる、という作戦はうまくいきそうじゃないか。

 さすが俺。


 ミエリは小さく拳を握り締めていた。


(それではあの人を、わたしの雷魔法で消し炭にしてやりましょうか!)


 すごいことを言い出すな、女神様!

 俺の作戦全部吹っ飛んじゃうよ!


(お前、女神として人を愛する心とか、ないの?)

(大丈夫です。肉体を殺しても転生させればいいだけです。そうやって人の魂は巡っています。今度こそあの人を本当のウシガエルに転生させてやりましょう!)

(転生の女神こええええええ!)


 現世で積んだ徳とかまったく関係ないのな!

 俺、こいつだけは敵に回さないようにするわ。


 そんな風に言い合っていると――。


「――む、誰かいるのか!?」


 やべえ。

 バレたか。


 どうすれば、と思った次の瞬間。

 ミエリが信じられない行動をしやがった。


「……にゃ、にゃ~~ん……」


 ……。

 お前……。


 ミエリは蒼白な顔のまま、親指を立てていた。

 どんなに本物そっくりの猫真似をしたところで、いけるわけねーだろ!


「……なんだ、あの冒険者の連れていた猫か。どこから入ったんだ、まったく……」


 いけたよ!

 信じられんねえ。


「さて、これをこうして、このメダルをこうして、あの美術品からとってきたメダルをこの位置にはめると……、こうだったな!」


 直後、ゴゴゴゴゴゴと重いなにかが引きずられるような音がした。

 ロッカーから覗くと、キャビネットが横滑りしてゆくのが見えた。


 なんつー仕掛けだ……。

 あんなのクロ丸出しだろ。

 隠し部屋まで作っていて、なにもしていないただの美術館の館長です、はちょっと苦しい言い訳だぜ。


 ウシガエルが隠し部屋の奥に消えてゆくとともにキャビネットは元の位置に戻った。

 よし、もういいか。


 ロッカーから出る。

 ふう、汗かいた……。


「それで、あの、どうですか!?」

「……ああ?」


 俺が胡乱な目を向けると、ミエリは腰に手を当ててキラキラとした目で問いつめてきた。


「ふふふ、いい匂いだったでしょ? キリッ」


 今度こそ俺はミエリの頭にチョップを落とすことができた。

 んなこと言っている場合じゃねえ。



 机の上には14枚のメダルと、引き出しの中にメダルをはめる三つの穴が空いていた。

 め、めんどくせえ仕掛け……。


「あのウシガエル、隠し部屋に入るたびに毎回こんなことをしてやがるのか……」


 こんなところで時間をかけていられないな。

 実際に使うのは3枚で、残りはすべてダミーか。

 ふむ。


 引き出しの中に、謎解きのヒントみたいな文面が書かれているな。


『大鷲の眠る十六夜、火鼠の駆ける雪原、夢羊に突き殺された死体のある場所。正しき順序は、再生、新生、そして転生。見よ、おおうなばらの向こうを』


 ほう。

 そしてメダルには、様々な紋章が彫られている。

 なるほどな。


「えっ、なにこれ、全然わからないですよぉ……」


 頭を抱えるミエリ。

 だが俺は迷いなくメダルをはめてゆく。


「これと、これと、これだな」

「えっ、あっ、ちょっとマサムネさん!?」


 ミエリの悲鳴の直後。

 ――ゴゴゴゴゴと音を立てて、キャビネットがスライドしてゆく。


 ミエリは顔を輝かせた。


「えっ、ど、どうしてわかったんですか!? すごい、マサムネさんすごい! たまにはすごいですよぉ!」

「単純な話だ」


 俺はメダルを一枚拾い、ミエリに見せつける。

 ミエリはきょとんとしていた。


「へ?」

「このメダルは新しい。で、こっちのはめられているメダルは、外周に傷がある。だから、こっちのメダルが謎解きに使われていたものだ」

「えええええ!? なにそれずるくないですかあああ!?」


 トレーディングカードでは故意にカードに傷をつけて、目的のカードを引くというイカサマ『マークド』を使うやつもいるからな。

 もちろん俺はやらないが、だが負けないためにはイカサマを見破る目を持つことが大事だ。


「さあ行くぞ、ミエリ」

「はぁい」


 すると、隣に立っていたミエリが急にしゃがみ込んだ。

 数歩進んだところで、振り返る。


「……なにやってんだ、お前」

「はっ! わたし今、ニンゲンでした!」


 ミエリは四つ足でぺたぺたと歩いていた。

 頭の中まで獣が染み込んでやがる……。



 すぐに階段があった。

 地下までずっと伸びているのか。さすがに見えないな。


 ここは安全を取らせてもらおう。

 俺はバインダを開いてカードを使用する。


「【ピッカラ】」


 すると、階段に仕掛けてあった罠が浮かび上がる。

 踏み出す数歩目のところ、ぽっかりと穴が開いていた。

 暗いままじゃ見えなかったな。


 目を細めながら見下ろすと、落とし穴になっているようだ。

 さすがに槍が敷き詰められているということはなかったが、しかしこの高さを落下したら足の骨を折るのは間違いない。


「えげつないことしやがるな……」


 ひょいとまたいで、階段を下る。

 ずいぶん深いな、どこまで行くんだ。



 地下三階。いや、四階ぐらいまでは下った頃か。

 ようやく小部屋が見えてきた。


「鬼が出るか、蛇が出るか」


 つぶやきながら、降りてゆく。

 目の前に、ぬっと巨大な物体が現れた。


 え?

 認識するよりも早く体が動く。


 慌てて飛びのいたところに質量が叩きつけられた。

 見上げる。


 出たのは、鎧だった。

 重量感のある剣を抱えている。


「は、リビングアーマーってやつか!」

「ひい、マサムネさん、こっちにもぉ!」


 部屋を見回す。相手は二匹か。


「そっちは任せてもいいか?」

「ええっ、こわいっ、でもやりますにゃっ!」


 よしよし。

 さて、じゃあ観察から入るか。


 スピードはそれなりに速いな。

 上体と足の動きがバラバラだ。

 予備動作がわからん。

 足はしっかりと地面を踏みしめているな。

 音で俺を認識しているというわけでもないようだ。生体反応か?


 一瞬の間に、俺は結論を導き出す。

 ということはつまり、こういうことだろう。


「【オイル】!」


 リビングアーマーの足元に油をまくと、下半身は態勢を崩す。だが上半身だけで、やつは腕を振ってきた。

 そんな無茶な態勢の剣なんて食らわないな。


「来い、【マサムネ】!」


 飛びのくと、俺は鎧の胴体の中心を、召喚した刀の鞘で思いっきり叩く。

 リビングアーマーは踏みとどまることができず、その場に尻餅をついた。

 これでジエンドだ。


 ギガントドラゴンから手に入れたこのカード。

 対象の体に重力負荷をかけることができる能力だ。

 俺に近ければ近いほど、威力が増すぜ。

 この【ヘヴィ】を、さらにこうして――。


「――潰れやがれ! 【レイズアップ・へヴィ】!」


 だが。

 その瞬間、目の前が真っ暗になった。

 やばい。


 慌ててオンリーカードの発動を中止する。


 へヴィにレイズアップの組み合わせは、MP的にまだ無理か。

 発動したのはへヴィだけだった。リビングアーマーは腹の中心を押さえつけられたようにジタバタとその場で暴れている。

 ヘヴィは長くは続かない。すぐに起き上ってくるだろう。


 ……ん、待てよ。


「【レイズアップ・タンポポ】!」


 改めて俺がオンリーカードを使用すると、その消費した魔力によって全身からぐったりと力が抜けてゆく。

 だがその代わり、面白いものが見れた。

 二メートルほどの花を咲かせたリビングアーマーだ。

 その空洞となっている鎧の内部には、茎や花が絡みついている。


 リビングアーマーはもがくが、しかしタンポポに絡め取られて脱出ができないようだ。

 寄生植物みたいだな。


「ふう……レイズアップは組み合わせるカードによって、消費MPが全然変わってくるな」


 俺は肩を回す。

 って、ほっとしている場合じゃない!


「うわあああああああん!」


 ミエリはリビングアーマーに追い回されていた。

 全然任せられねえじゃねえか!


「【オイル】!」


 こちらのリビングアーマーもすっ転ばすと、ミエリが魔法を叩きつけた。


「サンダー!」


 金属製の鎧だけあって、よく電気を通すな。

 どうやら弱点属性だったようだ。リビングアーマーはそれきり動かなくなった。


 ミエリは額の汗を拭って、こちらにピースサインをする。


「や、やりましたぁ。マサムネさん、わたし、一匹魔物を退治しましたよぉ!」

「そうだな」


 本当に魔力が戻ってきているんだな、ミエリ。

 ほめてほめてと身を寄せてくる女神様を無視して、俺は奥を窺う。

 いよいよだな。



「雑魚め、雑魚め……! わしの金、わしの金だぞ……!」


 ひとりでそうブツブツとつぶやきながら、ウシガエルはダイヤル式の金庫に向かい合っていた。

 あそこにみんなから盗んだ金が詰め込まれているのか。

 ようやく見つけたぞ。


 あの金庫を開けたあとに、突入するか。

 金属製の鎧と戦っていたんだ。後ろからなにかが迫っていることぐらいは気づいているだろう。


 と、様子を窺っていると――。

 後ろからなにやら、ガヤガヤとした音が近づいてきていた。


「な、なんだあ!?」


 それはこっちのセリフだ。

 いや、しかし、この騒がしい足音は……。


「いやああああー! しつこいよおー!」

「ナル!」


 俺は思わず叫び、立ち上がる。


「あ、マサムネくん! よかった! どう!? あたし完全無欠に囮を全うしたよ!?」

「囮っていうのは本陣には来ねえもんだよ!」


 陽動の意味がないだろうが!

 くそっ、ウシガエルにバレちまった。


 仕方ない。俺たちは前に進み出る。


「お、お前たちは……。ドラゴンスレイヤー!? なぜここにいる!?」

「館長、もうネタはあがっているんだぜ」

「あ、なにこのすごいきれいな女性! いつのまに!? え、え、なんで!?」

「綺麗だって! ちょっと、聞きました!? マサムネさん!? 聞きました!?」


 うるせえ。


 俺にビシッと指差されたウシガエルは苦しそうに顔を歪めたあと、しかしその表情を一変させた。

 笑っていたのだ。


「は、はっはっは! まさかお前がジャスティス仮面と繋がっているとはなあ! 黒髪の冒険者くん! これはこれは、まんまとやられたよ!」

「どっちがだよ。こっちこそ、あんたがジャスティス仮面の名を騙って、盗みを働いている首謀者だなんて、まんまとやられたぜ」


 じわりとウシガエルの顔に汗が浮かぶ。


「がっはっは……、だ、誰から聞いたかはわかりませんが、穏やかではないことを言いますなあ。冒険者さん」

「もうネタはあがっているんだ。覚悟をしろよ。その金庫の中に入っているんだろ。町中の人から盗んだ金貨がさ」

「この金庫の中に? ほほう」


 ウシガエルはにたりと笑った。


「ここにあるのは――」


 開く。すると中からは小さな像が出てきた。

 特殊な宝石かなにかで作られたと一目でわかるような、そんな女神像だ。


「本物の――ソレナン氏作の女神像だけ、なんですがな」


 今度は俺が汗をかく番だった。

 だからもう少し様子を見てから、突入すべきだったんだ……。



 後ろから私兵どもがやってきた。

 俺たちはウシガエルと私兵に挟まれる形になる。


「追い詰めたぞ――って、あれえ!? マサムネさん!?」

「なんで!? 一緒にいるんすか!?」

「一緒に飯を食べながら将来の夢を語り合ったあのマサムネさんはどこいっちまったんすか!」


 そんなことをした覚えはないぞ……。

 ウシガエルは腕組みをしていた。


「ともあれ、こいつがジャスティス仮面の侵入を手引していたのだ! さあお前たち、捕まえるがいい!」


 ミエリが怯え、ナルが身構える。

 いざ、衝突か、といったその瞬間――。


「待て」


 俺はバインダをこの手の中に喚び出しながら、一同を制止する。

 皆は、突如として光輝く本が手元に出現したのを見て、突撃を躊躇したようだ。

 その場にいる全員を見回しながら、俺はゆっくりと語る。


「まずは俺の話を聞いてもらおうじゃないか」


 やれやれ。

 ――まさかこの手を使わされることになるとはな。




「ダガール=シャザール」


 俺はまるで審問官のような口調で彼を糾弾する。

 ウシガエルはびくっと震えていた。


「お前はジャスティス仮面の名を騙り、あちこちで金貨や宝を盗んでいた。ジャスティス仮面は三か月前からこの町で予告状を放ってはいたが、姿を見たものはいない。利用しようと思ったのだろう。――だが、今までやってきたツケが回りまわってきたんだな。今度は本物のジャスティス仮面に狙われることになった」


 俺の言葉を聞いて、ウシガエルは真っ赤な顔で叫ぶ。


「すべてお前の憶測だ! いや、憶測ですらない! 妄言だ!」


 そうだそうだ! と声をあげる私兵が半分。

 残りの私兵はただただ戸惑っていた。


 おそらく今声をあげた私兵が、ウシガエルの盗みに加担したシーフたちなのだろう。


「こんなところで裁判でも始める気か? 話にならん! てっとり早くいこうじゃないか、おい! ――物証だ! あるんだろ!? そこまで言うなら、あるんだろう!? 証拠がよ!」

「――あるとも」


 俺が口を歪めると、ウシガエルは目を見開いた。


「なんだと……!?」


 ざわめきが大きくなる。

 ミエリやナルが手を合わせたまま、ぴょんぴょんと飛び跳ねていた。

 それを叩きつけた瞬間に、俺の完全勝利は決まるからな。


 だが正直に言おう


 ――そんなものは、ない。


「ダガール。どちらかを選ぶんだな! 衛兵に捕まってすべての財産を失うか、あるいは今ここで罪を認めて、ここにいる私兵全員に口止め料の金貨二枚と、そして俺たちに金貨十枚を差し出すか!」

「な、なんだとおおおおお!?」


 悲鳴と歓声が巻き起こった。

 私兵たちは手を叩いて喜んでいる。金貨二枚といったら、二百万円だ。これなら寝返るやつも出てくるだろう。


 証拠なんていらない。

 今ここでこいつに罪を認めさせ、袋叩きにしてやる。

 金貨四枚の恨みだ!


「さあ、ダカール! 死にたいか! それとも死にたくはないか! 金貨でケリがつくのなら、とっとと払うがいい!」

「死ぬのはお前だ! そんなむちゃくちゃが通るか! 証拠もなくて適当なことばっかり言いやがって! お前たち、こいつらをぶっ殺せ!」


 なんだと。

 だが、私兵は躊躇している。


 結局どちらが正しいのかわからない、という風だ。

 シーフたちはもちろん金貨がもらえた方が嬉しいのだろうから、その半分がどちらにつくのかを見守っているという算段か。


 つまり、膠着状態。

 ここまで持っていったのは、俺の口車だが、覆す一手が、あと一手がほしい。


 そのとき、ひとりの若者が前に歩み出てきた。

 私兵に紛れていた、気弱そうな銀髪の青年。


 若者はその手に持っていたものを、掲げた。


「ここに、シャザール氏の財布がある! すべての物証はこの中に入っている!」

「えっ!? あっ、それはわしの財布! いつの間に!?」


 ――ジャックであった。



 その手はぷるぷると震えている。

 今にも失神しそうな顔だ。

 半分白目を剥いているんじゃないか。


 だが、来てくれたか。

 シーフのジャック。

 待たせやがって、この野郎。


「ぼ、ぼく、マジでおなかいたくなって帰ろうとしたけど……。でも、ここで逃げたら今までと一緒だから! 一生明日が見えなくなっちゃうから! だから、だからああああ! ほらあああ財布取ったよおおおお!」

「わ、わかったわかった」


 途中で逃げ出したこいつには、腹パンの一発でもお見舞いしてやろうと思ったけどな。

 涙のあとがにじんだ目を見ていたら、そんなことをする気はなくなっちまったよ、ちくしょうが。


 俺はジャックから財布を受け取ると、これ見よがしに床にばらまいた。

 金貨だらけの中身がじゃらじゃらと床を転がってゆく。


「あっ、ああ! わしの、わしの金貨! わしの金貨!」

「なあ、ウシガエルの親父よ……」


 俺はかがんで床をすくうと、その手のひらを掲げる。


 そして、拳を開いた。


「ここにあるのは、俺の盗まれた金貨じゃねえかよ!」


 四枚の金貨があった。

 そこには、しっかりと――名前が書かれている。


『マサムネ』と――。


「俺は用心深いんだよおおおおお! 盗られたときのために持ち物には名前を書いておく主義なのさああああああ!」

「なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 それはもはや絶叫であった。

 ウシガエルはぶんぶんと首を振る。


「そんなバカな! 盗んだものが、ここにあるはずがない! わしの財布の中に入っているのは、わしの金だ! それはお前が仕組んだ――」

「――仕組んだ、なんだって?」


 ウシガエルはハッとした。

 その顔が蒼白を通り越して、死んだカエルのように変色してゆく。


 イカサマを見破るためには、イカサマを知り尽くしていなければならない。

 だが、だからといって――イカサマができないというわけでは、ない。

 この金貨四枚は俺のものではない。

 ナルに借りたものだ。

 だが、今さらそんなことは、――どうだっていい!


 俺はウシガエルに詰め寄った。

 ――そして、ウシガエルの顔の近くに左手を差し出す。


 カードはすでに、発動させた。


「もう一回言ってくれよ。ちゃんと聞こえるように、はっきりと、大きな声で。なあ、オッサンよお」


 ウシガエルが金切り声で叫ぶ。

 よーく聞こえるように――。


「おっ……お前が仕組んだ罠だ! わしが盗んだ金貨はしっかりと別の場所に保管している! そうだ! わしはジャスティス仮面を名乗って盗みを働いたとも! すべてはこの本物のミエリ像を入手するためだ! それを知ってどうするというのだ! ええい、お前たち! こいつらを殺せ! バレたらお前たちもただではすまんぞ! 全員皆殺しだ!」


 その大声で、ジャックがその場に失神して倒れた。

 ミエリはすでに転移魔法の詠唱準備に入っている。

 ナルは構えて、抵抗する気満々だ。


 俺はバインダを天井に掲げた。

 そして唱える。


「【タンポポ】!」


 俺たちと私兵の間に、ひとつのタンポポが咲いた。


「え?」

「あ?」

「は?」


 それ事態にはなんの意味もないよ。

 ただの時間稼ぎだ。


 そして俺は左手を、自分の耳と口に当てる。


「――と、自白したわけだが」

『あいよ、衛兵も聞いていたぜ』


 元禿げ頭のオッサン――ゴルムの声がする。

 ウシガエルは目を白黒させていた。


「あ、あああああ?」

「というわけだ、シーフのみなさん」


 俺は【ダイヤル】化させていた左手を振って解除すると、今度こそようやくバインダをしまった。


「あと数分で衛兵が突入してくる。ダガール=シャザールの命運は尽きた。だから『余計な取り調べ』を受けたくなければ、ここは黙っていてくれないかね? な、みんな」


 にこやかに両手を広げながら、俺は語る。

 その言葉で、私兵の格好をしていたシーフたちは一斉にそっぽを向き、口笛を吹きだした。


「お、おまえたちいいいいいいいいいい! わしを助けないかあああああああああああああ!」


 はいはい。正直なことで。

 押しかけてきた衛兵によって、ダガール=シャザールは見事に逮捕されたとさ。めでたしめでたし。




 というのが、今回の顛末――ではない。

 まだ事件は終わっていなかった。


 結局、ウシガエルがどこに金貨を隠したのかがわかっていないのだ。

 取り調べでダガールが隠し場所を吐かなければ、俺の金貨四枚を取り返すまで至らない。


 衛兵が取り押さえたダガールが詰め所へと連行されてゆくのを見届けながら、俺はひとり美術館の館内にとどまっていた。


 頭がガンガンする。

 魔力の使い過ぎだ。


 これじゃあ考え事なんてまとまらないな。

 くそう……。


 しかし、あのウシガエルはどこに金貨を隠したんだ。

 ……いや、そういえば言っていたな。


 俺は一番最初の獲物、あの石のミエリ像の前に立つ。


 本物は金庫に入っていたんだろ?

 だったらこれは、なんだ?


 ミエリ像を隅々まで観察していたときに、俺はうなじの辺りに一筋の穴が空いているのを見つけた。

 ……なんだこれ。


 ミエリ像を軽く叩いてみた瞬間に、俺はすべてを理解した。




「よし、ここで下せばいいんだねっ!」

「お、おう」


 俺はミエリ像を肩に担いだナルを眺めて、わずかに引く。

 お前それ、俺の予想が正しければ、とてつもない重さになってんだぞ……。

 どうなっているんだ、こいつのパワーは。


 そこは美術館近くの空き地だった。

 なるべく人の目がないところを選んだのだ。


「ね、ねえ、悪いよ、泥棒は……。ミエリ像も、元あった場所に返そうよ……。こんなの火事場泥棒だよ、バレたらみんなに怒られちゃうよ……。明日が見えなくなってきたよ……」


 極度のビビりのジャックは、青い顔でそんなことを口にする。

 俺を犯罪に誘ったときのお前はどこにいったんだ。


 頭痛にさいなまれる頭を押さえながら、俺は自信満々にうなずいた。


「大丈夫だ、像のあった場所には代わりのモノを置いといた。衛兵の目もごまかせるだろう。心配することはない」

「代わり……?」

「まあそれよりも、だ」


 俺はジャックを無視して命じた。


「よし、ナル、やれ」

「了解だよ! 乾坤一擲! 完全粉砕! 鉄拳ぱーんち!」

「ひいいいいいいいいい!」


 夜の空き地に三者三様の声が響き渡る。

 そうして上半身を砕かれたミエリ像の中からは――。


 見事にたっぷりと詰まった金貨が、まるで黄金の海のようにジャラジャラとあふれてきたのだ。

 よし。


「す、すごい……! すごい!」

「う、うわあ……」


 ナルもジャックも目を白黒とさせていた。

 この輝きに、目がつぶれてしまいそうだ。

 レイズアップのピッカラでも使ってみようか。

 いや、見つかるから駄目だ。


 そう――。


 つまり、衛兵が見つけ出す前に、俺たちがこの金貨をすべて独り占め……じゃなくて、三等分することができるのだ。

 ウシガエルを捕まえた俺たちには、その権利があるだろう。


 いや、仮に独り占め……じゃなくて、三等分しなくたっていい。

 たとえば金貨をちょっぴり多めに……。

 四枚じゃなくて、十枚二十枚、あるいは百枚ぐらい取ったところで……。

 許されるのではないだろうか……。


 と、俺は『衝動的に』手を伸ばす。

 欲に目がくらんでいたのだ。


 その手が、がっしと掴まれる。

 顔をあげる。そこには白髪に仮面をかぶった老紳士がいた。


 ジャックが驚いた声をあげる。


「は、ハンニバル」


 ジャスティス仮面二号だ。


「いやはや、ご立派な手腕でしたな。さすがさすが。マサムネ殿、私は感服いたしました」

「……お、おう」


 爺さんが掴んできたその腕は、まるで万力のようだった。

 渾身の力で振りほどこうとしているが、ビクともしねえ。


「それではあなた様の盗まれた分をお返しいたしましょう。しっかりと、『金貨四枚』でしたな? そうですな?」


 命運尽きたか。

 口惜しい。

 が、仕方ないな。


「……ああ、そうだよ」


 そうきっぱり答えると、爺は少しだけ驚いたような雰囲気を発した。


 この際、言い訳はしまい。

 取り繕ったところで、通用しないだろう。


 今のは完全に俺のミスだ。

 思わず衝動的に手が出てしまうだなんてな……。


 金貨四枚を俺の左手に押し付けてきた爺は、にっこりと笑う。


「結構結構。そうやって素直に認めるとは、実に男の器の大きな方ですな。お見それいたしました。それではこちらの金貨は、『義賊』であるジャスティス仮面の私と一号が責任を持って、盗まれた方々にお返しをいたしましょうぞ」

「衛兵に任せないのか?」

「中には被害届を出していない方もおりますのでな。全員にキチンといきわたるようにしませんと」

「……そうか」


 こいつら、暇そうに夜の町を飛び回ってたんだしな。噂集めはお手のものだろう。

 ったく、この爺……。


 二号はようやく俺の腕から手を離すと、その場で恭しく一礼した。


「それでは皆様、今回は誠にありがとうございました。あなた方の偉業は誰も見ているものがいませんでも、この私と――そして」


 彼は夜空にまっすぐに腕を掲げた。ピンと指を伸ばし、告げてくる。

「――月輪がちりんだけが、確かに見守っていましたでしょう」


 そのとき、夜の空から俺の手の中に、一枚のカードが降り注いできた。

 俺の新たなる力だ。


 ……今回の成長した魂の分か。


 まあ、いい。

 今はこれだけで、勘弁してやるよ……。


 オンリーカードを空中でひったくるように掴むと、俺は振り返らずに歩き出す。

 頭が痛い。早く宿に帰ろう。


 その背に、慌ててナルが追いついてきた。


「で、でもすごいね、マサムネくん。よくわかったね、あの像に金貨が隠されていたって」

「……まあな。ピンと来たんだよ」


 俺の元いた世界にもあるからな、ああいうの。

 さすがにあそこまでデカいのは初めて見たが。


 あれ、貯金箱っていうんだよな。




 翌朝。

 なにかが足りないことに気づいて、俺は首を傾げた。

 なんだっけかな。

 昨夜は魔力を使いすぎて、頭がくらくらしていたからな。


 あ、そうか、レイズアップ・マシェーラを使ってみようと思っていたんだ。


 いや、違うな。

 髪を生やそうとしていたわけじゃない。


 そう、ベッドのこの辺りに、いつもなら撫でる感触が。

 あったような気がしたが、まあいいか。


 きょうから俺の新たなる冒険者ライフは幕を開ける。

 ――金貨四枚、確かに回収したぜ。



 真っ白いペンキをぶっかけられて、半日女神像の真似をしていたミエリが、満月が沈んだのちに再び猫の姿で泣きながら帰ってきて、ようやく俺は彼女のことを思いだしたのであった。


「悪い、忘れていた」

「に゛ゃああああああああああ!」




 こうしてひとつの事件が幕を閉じたホープタウンには、

 ――間もなく本当の危機が訪れようとしていた。


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