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崎裏町の怪異  作者: 齊藤
夜見坂トンネルの呪い
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夜見坂トンネルの呪いの考察

翌日、目が覚めたのは午前十時を過ぎた頃だった。 いやに暑い。 無意識に布団は()()けていたようだが、アユミは私に絡み付くようにくっついていて、その温い体温がひどく不快だった。

「アユミ! 起きろー。 クソ暑いから離せ」

四苦八苦しながらアユミを押し退けてベッドから脱出すると、窓の外では強い日差しが降り注いでた。 昼過ぎには確実に気温は三十度を越えるだろう。

あらためて見るとアユミもすごい汗をかいている。 こんな状態でも私にくっつかずにはいられないのだから怖がりにもほどがある。

「ちゃんと水分補給しないと脱水症状になるぞ」

寝起きのせいか既に脱水状態なのかふらつくアユミを台所まで引っ張っていってコップに注いだ麦茶を押し付けると、そうとう喉が乾いていたようで一気に飲み干した。 私自身も麦茶を飲みようやく人心地つく。

この暑さの中を出歩くつもりにはなれない。 夕方になって気温が(さが)るまで時間はたっぷりあるので、事故について考えるには充分だ。

まず、位置関係を整理してみよう。 時速八十キロメートルで走る自動車の制動距離は約三十メートル。 トンネルの長さも三十メートルほどなので、真ん中で止まったという話の通りだとすると、トンネル入口から十五メートルのところで人影を見たことになる。

トンネルの入口に人が立っていたのなら、たった十五メートルの距離まで自動車が近付いているのだ。 もしもブレーキを踏まなければ一秒以下で接触してしまう距離であり、ブレーキを踏んだって一秒強というところ。 避けるのがまるっきり不可能とまでは言えないが、自動車がブレーキを踏むのかハンドルを切るのかは予想できないのだから、避けた方に自動車が来たらお終いだ。 世の中にはスリルを楽しむ人もいるとは言うものの、何の意味もない悪戯(いたずら)にしてはあまりにリスクが大きすぎる。 人為的なものではないと判断するのが妥当だろう。

では、いったい何なのか…。

携帯電話で撮影したトンネル内の写真をあらためてよく見てみるが、不自然なところは全くなく、ゴミさえ落ちていない。 有ったのは…。

「あ、わかっちゃったかも」

「何が?」

「トンネル前の人影の正体が。 よーし。 今日の夕方はもう一度トンネルまで行って予想が正しいか確かめるよ」

「えっ! 誰?」

「ひ☆み☆つ」

「危なくない? せめて護身用にバットか何か持っていってよ」

「予想どおりなら危険はぜんぜん無いって」

「サヤちゃんが言うならそうなのかもしれないけど…。 気は付けてよね」

「何で他人事みたいになってんの。 あんたも行くの。 あまりの馬鹿馬鹿しさにビックリ死すんなよ」

「えーっ! 後で結果だけ聞かせてくれたらいいよ」

人影の正体がわかったときのアユミのリアクションが凄く楽しみなんだけどなぁ。

そんなやりとりをしているとアユミの祖父が話しかけてきた。

「本当に危ないことは無いんか? サヤちゃんに何かあったら梨沙(りさ)ちゃんに申し訳が立たん。 (わし)も一緒に行くぞ」

梨沙というのは私の母のことだ。 私の母も子供の頃からアユミの祖父には可愛いがられていたようだ。

少し考えると、この申し出は都合がいいことに気付いたので、ありがたく受入れることにした。


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